今年度は、同僚4人と職場の親睦会を担当することになった。
先週、初仕事として、新任者の歓迎会を企画した。若手のゆき子ちゃんが、チラシ片手に職場近くの居酒屋を吟味し、予約してくれた。
次に、職員50名の出欠をとる。こちらでは、職員名簿を回し、○か×をつけて幹事に戻す仕組みとなっている。
「笹木さん、○でいいですか?」
「うん、大丈夫。行かれるよ」
ゆき子ちゃんが、先に幹事の出欠だけを入れておいた。出席者の少ない飲み会は「つまらない」と敬遠されそうだから、幹事だけでも○にしておかないと人が集まらないだろう。
彼女はさらに、近くにいた先生にも声をかけた。
「山田さんは大丈夫ですか?」
「あ、オレ、その日は予定があって行けないんだよね~」
それを聞いた瞬間、私は悪いことを思いついた。
「ねえ、山田さん、来なくていいから○にしておいてよ。×が多いと何だから」
「ああ、サクラか。……まあ、別にいいけど」
山田氏は、スッキリしない表情で部屋を出て行った。
ゆき子ちゃんが、今度は別の先生に尋ねた。
「木村さんはどうされますか?」
「う~ん、僕もちょっとね……」
すかさず、私が割り込んだ。
「じゃあ、それも○ってことで!」
サクラばかりになっても仕方がないので、それくらいにして、他の先生に回すことにした。
数日後、全職員の出欠が記入された名簿が戻ってきた。
「ちょっと、何これ~!!」
私もゆき子ちゃんも、年配の幹事長も仰天した。名簿の記号は×のオンパレードだったのだ。たまに○の人がいる程度で、まるでコピーしたように、きれいに×が並んでいた。
なぜか、△もある。私は思わず首をひねった。
「この△っていうのは何なのよ」
「わからないという意味だそうです」
うーん、これだから教員は……。新しい記号を増やされても困るんだけどなあ。
結局、参加人数はたったの13人しかいなかった。
とりわけ許せない欠席は、昨年の幹事である。たしか、去年も人数が少なかったから、幹事が必死になって私に、こう頼み込んできたのだ。
「新しい先生の歓迎会なのに、人数が少ないと体裁が悪いから、何とか都合つかない?」
彼女を気の毒に思い、無理して参加したのに、幹事ではなくなったとたんに知らん顔とは……。
ひとこと言ってやりたい気持ちもあったが、新任者自体が9人中3人しか出席になっていない。
ダメだ、こりゃ……。
もうお手上げである。かくなるうえは、いる人間で楽しくやるしかない。
その日の歓迎会は6時からだった。しかし、定刻には、幹事を含めてわずか7人しか集まっていなかった。手分けして残りの6人に連絡を取ったが、不在だったり留守電だったりで、なかなかつかまらない。
「いいですよ、もう始めましょう!」
気の短い幹事長がゴーサインを出し、宴会がスタートした。私は赤ワインのデキャンタをキープし、枝豆とシーザーサラダに手を伸ばした。枝豆の量が多めだ。
えびせん&ポテトフライが運ばれてきた。ちょっと油が気になるけれども、えびせんはパリパリしていて美味しかった。続いて刺身盛り合わせが並べられたのはよいが、しょうゆがなくてすぐには食べられなかった。
「来ませんね~」
ゆき子ちゃんが心配そうに空席に目をやった。宴会開始からすでに1時間がたっている。
幹事長も、渋い表情でゆき子ちゃんに確認した。
「場所と時間の連絡はしたんだよね?」
「はい、直接手渡しした人もいますし、席を外していた人には机上に置いておきました」
が、空席に並べられた料理が増えていくばかりである。
炭火焼盛り合わせ、鶏とネギのピリ辛揚げは、ワインによく合っていた。これでチーズがあれば最高なのだが……。
「もう待てない。テンジャンチゲに火をつけよう」
残り時間40分というところで、私たちはカセットコンロを点火した。ちょっと辛いけど、これが一番の楽しみなのだ。ハフハフ食べていたら、ようやく2人がやって来た。
「遅くなってスミマセ~ン」
これで9人。あと4人はどうなっているのだろう?
「もう、職員室には残っていませんでしたよ。帰ったんじゃないですか」
衝撃的な知らせに、幹事3人は顔を見合わせた。
信じられない!!!
ショックで呆然としたが、明太マヨポテトピザと雑炊うどんは、しっかりお腹に収めた。
どのお料理も美味しかったのが、せめてもの救いだ。
案の定、4人は来ず仕舞いのまま、宴会はお開きとなった。たった9人の歓迎会とは、新記録、いや珍記録間違いなしだろう。
デキャンタは空になったが、全然酔えない歓迎会だった。
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先週、初仕事として、新任者の歓迎会を企画した。若手のゆき子ちゃんが、チラシ片手に職場近くの居酒屋を吟味し、予約してくれた。
次に、職員50名の出欠をとる。こちらでは、職員名簿を回し、○か×をつけて幹事に戻す仕組みとなっている。
「笹木さん、○でいいですか?」
「うん、大丈夫。行かれるよ」
ゆき子ちゃんが、先に幹事の出欠だけを入れておいた。出席者の少ない飲み会は「つまらない」と敬遠されそうだから、幹事だけでも○にしておかないと人が集まらないだろう。
彼女はさらに、近くにいた先生にも声をかけた。
「山田さんは大丈夫ですか?」
「あ、オレ、その日は予定があって行けないんだよね~」
それを聞いた瞬間、私は悪いことを思いついた。
「ねえ、山田さん、来なくていいから○にしておいてよ。×が多いと何だから」
「ああ、サクラか。……まあ、別にいいけど」
山田氏は、スッキリしない表情で部屋を出て行った。
ゆき子ちゃんが、今度は別の先生に尋ねた。
「木村さんはどうされますか?」
「う~ん、僕もちょっとね……」
すかさず、私が割り込んだ。
「じゃあ、それも○ってことで!」
サクラばかりになっても仕方がないので、それくらいにして、他の先生に回すことにした。
数日後、全職員の出欠が記入された名簿が戻ってきた。
「ちょっと、何これ~!!」
私もゆき子ちゃんも、年配の幹事長も仰天した。名簿の記号は×のオンパレードだったのだ。たまに○の人がいる程度で、まるでコピーしたように、きれいに×が並んでいた。
なぜか、△もある。私は思わず首をひねった。
「この△っていうのは何なのよ」
「わからないという意味だそうです」
うーん、これだから教員は……。新しい記号を増やされても困るんだけどなあ。
結局、参加人数はたったの13人しかいなかった。
とりわけ許せない欠席は、昨年の幹事である。たしか、去年も人数が少なかったから、幹事が必死になって私に、こう頼み込んできたのだ。
「新しい先生の歓迎会なのに、人数が少ないと体裁が悪いから、何とか都合つかない?」
彼女を気の毒に思い、無理して参加したのに、幹事ではなくなったとたんに知らん顔とは……。
ひとこと言ってやりたい気持ちもあったが、新任者自体が9人中3人しか出席になっていない。
ダメだ、こりゃ……。
もうお手上げである。かくなるうえは、いる人間で楽しくやるしかない。
その日の歓迎会は6時からだった。しかし、定刻には、幹事を含めてわずか7人しか集まっていなかった。手分けして残りの6人に連絡を取ったが、不在だったり留守電だったりで、なかなかつかまらない。
「いいですよ、もう始めましょう!」
気の短い幹事長がゴーサインを出し、宴会がスタートした。私は赤ワインのデキャンタをキープし、枝豆とシーザーサラダに手を伸ばした。枝豆の量が多めだ。
えびせん&ポテトフライが運ばれてきた。ちょっと油が気になるけれども、えびせんはパリパリしていて美味しかった。続いて刺身盛り合わせが並べられたのはよいが、しょうゆがなくてすぐには食べられなかった。
「来ませんね~」
ゆき子ちゃんが心配そうに空席に目をやった。宴会開始からすでに1時間がたっている。
幹事長も、渋い表情でゆき子ちゃんに確認した。
「場所と時間の連絡はしたんだよね?」
「はい、直接手渡しした人もいますし、席を外していた人には机上に置いておきました」
が、空席に並べられた料理が増えていくばかりである。
炭火焼盛り合わせ、鶏とネギのピリ辛揚げは、ワインによく合っていた。これでチーズがあれば最高なのだが……。
「もう待てない。テンジャンチゲに火をつけよう」
残り時間40分というところで、私たちはカセットコンロを点火した。ちょっと辛いけど、これが一番の楽しみなのだ。ハフハフ食べていたら、ようやく2人がやって来た。
「遅くなってスミマセ~ン」
これで9人。あと4人はどうなっているのだろう?
「もう、職員室には残っていませんでしたよ。帰ったんじゃないですか」
衝撃的な知らせに、幹事3人は顔を見合わせた。
信じられない!!!
ショックで呆然としたが、明太マヨポテトピザと雑炊うどんは、しっかりお腹に収めた。
どのお料理も美味しかったのが、せめてもの救いだ。
案の定、4人は来ず仕舞いのまま、宴会はお開きとなった。たった9人の歓迎会とは、新記録、いや珍記録間違いなしだろう。
デキャンタは空になったが、全然酔えない歓迎会だった。
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