両親が住む那須の家に、一族といっては大げさだが、親族が全員集まるときがある。
お正月やGWなどに、私と夫と娘、妹・義弟・姪・甥、そして姉と義兄がやって来て、11人もの人数となるのだ。
困るのは食事の仕度である。夕食は妹や姉、義弟などが母を手伝ってくれるが、宴会が深夜にまで及ぶと、朝になっても誰も起きてこない。
私は朝型なので、つい目が覚めてしまい、段取りの悪い母の朝食作りを手伝う羽目になる。
まずはメニューの確認からだ。
「何を作るの?」
母の答えは簡潔だった。
「ピザトーストよ」
しかし、材料がおかしい。
「でも6枚切りと8枚切りの食パンしかないじゃない」
「4枚切りがなかったから、しょうがないでしょ。それでいいんだよ」
……まあ、あるもので間に合わせるしかないけれど……。
ベーコンの上にピーマンを重ね、チーズを散らしていると、一人、二人と起きてくる。しかし、オーブントースターは一度に二枚のパンしか焼けない。焼き上がりを待つうちに、腹ペコ集団が続々と集まってきた。
「一枚じゃ足りない。もっと」
しかも、夫をはじめとする男性陣は、おかわりまでする始末……。せめて厚切りならばよかったのだが。十回ほど繰り返し焼き続けると、さすがに疲れ果ててしまった。
大人数の朝食に、ピザトーストは向かない。
もう、母には任せるのはよそうと決心した。
どうせ朝食を作ることになるのなら、自分のやりやすい方法で仕切るのが一番だ。
次に全員が集まったとき、私は朝食用の食材を持参した。那須のスーパーは車で20分かかる上、品数が揃っているとは限らない。
「明日の朝食はドッグバイキングだからね」
どっさり用意したドッグパンやロールパンに、各自で玉子、ハム、ソーセージ、キャベツ、コロッケ、ジャム、生クリームなどを挟み、好きなだけ食べてもらえばよい。
カボチャのポタージュと、デザートのピンクグレープフルーツも用意しておけば、栄養バランスもバッチリだ。
その夜、私はワインと完璧な朝食計画に酔って寝た。
翌朝、七時頃起きると、母が気を利かせたつもりで余計なことをしていた。
「おはよう。カボチャは茹でておいたよ」
そっそれは、コンソメスープで柔らかくするのに、何てことを!
心なしか、水っぽいスープができ上がった。
8時を過ぎると、ほとんどの者が起きてきた。でも、今日は待たせないから大丈夫、と私は胸を張って声をかけた。
「じゃあ、自分で好きなものをはさんで、セルフサービスで食べてちょうだい」
が、夫は不満げな反応をした。
「まな板ない? パン切るのに必要だよ」
まな板ぁ? んなもんなくたって、パンくらい切れるでしょうに……。
しぶしぶ渡すと、夫はまな板にパンを横向きに置き、左手でしっかりと押さえながら、慎重に包丁を動かしはじめた。あまりのぎこちなさに、みんなの目が釘付けになった。
義弟は姪と甥の具を選んでいるところだった。
「パパ、ぼくジャムがいいな」
「さっきから、そればっかりだろ」
ジャムのパンばかりを食べたがる甥に、与えられたものを素直に平らげる姪。
「お父さん、ミキ、次はコロッケにする!」
そして、全種類制覇しようとして、食べすぎの娘……。
「コーヒー飲みたい」
私が準備に追われ、まだ何も食べていないのに、夫はすでに食後のコーヒータイムに突入している。
「食欲ない……」
昨夜飲みすぎた姉と義兄は、パンにほとんど手をつけず、スープのみですませるらしい。
くそっ、せっかく作ったのに。
どうにか食事が軌道に乗り、やれやれとため息をついたときだ。義弟が、ニヤニヤと笑いながら話しかけてきた。
「さっき、お義父さんが、キャベツと生クリームを挟んで食べていたけど……」
「なに、その組み合わせ~!!」
父以外のみんなが笑い転げた。
バイキングにすると、好きなものばかりを食べたり、人気のない具材が余ったりして、これまたよろしくないことがわかった。
さて、今年のGWは、どんな朝食にしようかな……。

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お正月やGWなどに、私と夫と娘、妹・義弟・姪・甥、そして姉と義兄がやって来て、11人もの人数となるのだ。
困るのは食事の仕度である。夕食は妹や姉、義弟などが母を手伝ってくれるが、宴会が深夜にまで及ぶと、朝になっても誰も起きてこない。
私は朝型なので、つい目が覚めてしまい、段取りの悪い母の朝食作りを手伝う羽目になる。
まずはメニューの確認からだ。
「何を作るの?」
母の答えは簡潔だった。
「ピザトーストよ」
しかし、材料がおかしい。
「でも6枚切りと8枚切りの食パンしかないじゃない」
「4枚切りがなかったから、しょうがないでしょ。それでいいんだよ」
……まあ、あるもので間に合わせるしかないけれど……。
ベーコンの上にピーマンを重ね、チーズを散らしていると、一人、二人と起きてくる。しかし、オーブントースターは一度に二枚のパンしか焼けない。焼き上がりを待つうちに、腹ペコ集団が続々と集まってきた。
「一枚じゃ足りない。もっと」
しかも、夫をはじめとする男性陣は、おかわりまでする始末……。せめて厚切りならばよかったのだが。十回ほど繰り返し焼き続けると、さすがに疲れ果ててしまった。
大人数の朝食に、ピザトーストは向かない。
もう、母には任せるのはよそうと決心した。
どうせ朝食を作ることになるのなら、自分のやりやすい方法で仕切るのが一番だ。
次に全員が集まったとき、私は朝食用の食材を持参した。那須のスーパーは車で20分かかる上、品数が揃っているとは限らない。
「明日の朝食はドッグバイキングだからね」
どっさり用意したドッグパンやロールパンに、各自で玉子、ハム、ソーセージ、キャベツ、コロッケ、ジャム、生クリームなどを挟み、好きなだけ食べてもらえばよい。
カボチャのポタージュと、デザートのピンクグレープフルーツも用意しておけば、栄養バランスもバッチリだ。
その夜、私はワインと完璧な朝食計画に酔って寝た。
翌朝、七時頃起きると、母が気を利かせたつもりで余計なことをしていた。
「おはよう。カボチャは茹でておいたよ」
そっそれは、コンソメスープで柔らかくするのに、何てことを!
心なしか、水っぽいスープができ上がった。
8時を過ぎると、ほとんどの者が起きてきた。でも、今日は待たせないから大丈夫、と私は胸を張って声をかけた。
「じゃあ、自分で好きなものをはさんで、セルフサービスで食べてちょうだい」
が、夫は不満げな反応をした。
「まな板ない? パン切るのに必要だよ」
まな板ぁ? んなもんなくたって、パンくらい切れるでしょうに……。
しぶしぶ渡すと、夫はまな板にパンを横向きに置き、左手でしっかりと押さえながら、慎重に包丁を動かしはじめた。あまりのぎこちなさに、みんなの目が釘付けになった。
義弟は姪と甥の具を選んでいるところだった。
「パパ、ぼくジャムがいいな」
「さっきから、そればっかりだろ」
ジャムのパンばかりを食べたがる甥に、与えられたものを素直に平らげる姪。
「お父さん、ミキ、次はコロッケにする!」
そして、全種類制覇しようとして、食べすぎの娘……。
「コーヒー飲みたい」
私が準備に追われ、まだ何も食べていないのに、夫はすでに食後のコーヒータイムに突入している。
「食欲ない……」
昨夜飲みすぎた姉と義兄は、パンにほとんど手をつけず、スープのみですませるらしい。
くそっ、せっかく作ったのに。
どうにか食事が軌道に乗り、やれやれとため息をついたときだ。義弟が、ニヤニヤと笑いながら話しかけてきた。
「さっき、お義父さんが、キャベツと生クリームを挟んで食べていたけど……」
「なに、その組み合わせ~!!」
父以外のみんなが笑い転げた。
バイキングにすると、好きなものばかりを食べたり、人気のない具材が余ったりして、これまたよろしくないことがわかった。
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