選挙は泡沫候補が熱い! 大川豊『日本インディーズ候補列伝』

2014年11月21日 | 
 大川豊『日本インディーズ候補列伝』を読む。

 選挙の世界でいわゆる「泡沫候補」と呼ばれる、一風変わった候補者たちを取材してまとめた本だが、これがめっぽうおもしろい。

 大川総裁といえば、お笑いパフォーマンス集団大川興業の創始者。知らない人でも「エガちゃん」こと江頭2:50の名前なら知っているであろう。

 なにをかくそう彼を発掘したのが、大川総裁である。

 というとなんだかただのイロモノ集団のようだが、総裁はまだ北朝鮮が「地上の楽園」と呼ばれていたときから


 「おいおい、地上の楽園って、映像見たら太ってる奴が2人しかいないじゃないか!」


 という今なら自明の理のツッコミを昔からいれていた、観察力のスルドイお人。

 ライブなどでも、そういったカルトな政治ネタを披露しており、その鋭い視点はファンのみならず業界にも評価が高い。

 総裁の魅力は、シャープな言論を笑いに昇華するセンスとともに、その爆裂的な行動力であろう。

 本書のような泡沫候補の演説にはかけつけ、東海村の原発事故ではガイガーカウンターが悲鳴を上げている中取材し、サリン事件の前からオウムに注目し部下(江頭さん含む。総裁曰く「カプセル怪獣」)を入門させ実地取材させる。

 実際エガちゃんが取材を終え脱退したら、次の日からアパートを象のマスクつけた信者に取り囲まれ、

 「江頭さーん、なんでやめちゃったんですかー」

 一日中シュプレヒコールされたという。

 いや、それ怖いって! っていうか、サリン事件のこと考えると、全然シャレになってないんである。

 よくやるなあ。「事件は現場で起こってるんだ」という織田裕二も裸足で逃げ出す「現場主義」なのである。

 そんな総裁が、満を持して出した選挙本。もう、前書きからいいのである。

 総裁自身大川興業を「奇人変人大集合ですよ」という。まさに「人生の駆けこみ寺」と呼ばれる存在。

 そんな総裁には、様々に人生を悩み、苦しみ、迷走している人が、メールや手紙などで相談してくるという。曰く「自殺したい」「爆弾を作りたい」「人を殺したい」。


 前書きによると総裁は、そういった人たちに常にこういうという。

 「人を殺したいのなら、『人を殺したい』と訴えて選挙に出なさい。政見放送は検閲がないから好きなことを堂々とテレビで言えるぞ」


 すごいアドバイスだ。天下のNHKで人殺し宣言。たしかにインターネットなら「無差別殺人します」と書きこめば逮捕だが、政見放送ならOKだ。たぶん。


 さらに総裁は言う、


 「とにかくやる前にオレを殺しに来い。


 オレを殺しに来い。おいちょっと待て。相手は「人を殺したい」といってるのだ。マジで殺しにきたらどうするんだ、冗談もいきすぎると……思っていると総裁はさらに、

 「冗談で言ってるんじゃない。○○のファミレスで待っている。そこに殺人計画書でも持って来い」。
 

 総裁のすごいところは、本当に待っていたこと。

 結局その少年は現れなかったらしいが、明朝「ありがとうございました」というメールがきたそうである。どこからか、ファミレスに来ている総裁の姿を確認したのだそうだ。ナイフを持って。


 すごいなあ。「人を殺したい」なんて思うなんて、よっぽどの精神状態だろう。そんなの普通は「頭、おかしいんじゃないの」でお終いであろう。

 そこを「オレを殺しに来い」。カーッコイイ!

 そんな総裁は本の中で「日本を、世界から笑われる国でなく、笑わせる国にする」が政策であると説いている。

 その成果は出ている。オウム事件以前から「カルト宗教」に注目していた総裁は江頭さんに「空中浮遊」をさせたりしていたが、それに対してある女性が、

 「エガちゃんを見て爆笑しました。心に悩みがあったけど、超能力ってギャグですね。宗教にハマらなくてすみました」

 たしかに「笑い」で救われている人はいるのだ。私もそのひとり。総裁は言う。

 「だからオレ達みたいなバカがいてもいいだろ」

 うーん、キメたなあ。シブイぜ総裁!

 
 (続く→こちら



 
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