前回(→こちら)に続いて、大川豊の『日本インディーズ列伝』を読む。
国のお祭りである選挙の華といえば、やはり「泡沫候補」と呼ばれる人達であろう。
みなさまも選挙の時、「こいつ誰やねん」「こんなん絶対通るわけあらへんがな」と思うような候補がいて、驚くことがあるのではないか。
具体的には、たま出版の編集長が、UFOへの愛情
のため立ち上げた「UFO党」。
「バカケチナマケは酢を飲まない」をスローガンに、酢で日本を立て直そうとした「日本愛酢党」。
さらには、いわずもがなの「自由連合」といった、普段は表舞台に出てこない「インディーズ」な候補者にスポットを当てたものだ。
まず巻頭のカラーページは、泡沫候補のスター羽柴誠三秀吉さんだ。
鎧カブト、という奇抜な出で立ちでのぞんだ選挙ポスターはインパクト充分で、ご存じの方も多いだろう。
よく選挙のポスターは、近所の悪ガキによってイタズラ書きをされたりするが、私はこの羽柴誠三秀吉氏のポスターに、そのような狼藉が行われているのを見たことがない。
その迫力とインパクトに気勢をそがれるのか、その「ポスター自体がすでにイタズラ書き」ととらえられているせいなのかはわからないが、なんしか、「味のある」人である。
その羽柴氏の地元青森には、氏の持つビルがありそれが紹介されているのだが、これがすごいのである。
まず入ると、そこにはいきなりミサイルが装備されている。
あまりにあっさり書いてあるので「へー、さすが天下の大富豪、すげえなあ」と思わず読み飛ばしそうになったが、おい待て、なんでミサイルがあるんだ。セコムも裸足で逃げ出す「過剰防衛」である。
まあ普通に考えたら、個人のビルにミサイルが装備されているなどありえないわけで、さすがにただのレプリカらしいのだが、なんと偵察衛星でこのレプリカを見たアメリカ軍が、
「日本に我々の知らないミサイル基地がある!」
とひっくり返り、その依頼で自衛隊が査察に来たそうである。えらい話やなあ。
だが、羽柴氏はそんな騒動などなんのその。トラクターを改造して戦車を作るわ(3000万円かかったらしい)、空母とイージス艦建造計画を構想中だわ、豪快に暴走。
もちろん、ビルにはお約束の「金の茶室」などもあり、また「スナック・チャングム」などという飲み屋など経営するあたり、当時はやっていた「韓流」を採用するなど、流行にも敏感でありさすがは大富豪である。
機を見るにつけ敏。でも、豊臣秀吉って「朝鮮出兵」のことがあって、韓国では極悪人あつかいなんですが……。
そのあたりも、おおらかな羽柴先生。やはり天下国家を語るには、これくらい図太くないといけないのだろう。
(続く【→こちら】)