なんたって竹内義和 その2 『なんたってウルトラマン』について

2014年12月02日 | オタク・サブカル

 前回(→こちら)に続いて、竹内義和さんからコメントをいただいた話。

 竹内義和というと、「誰それ?」という声が聞こえてきそうだが、関西在住で怪獣好きで深夜ラジオ好きという少年であった私にとっては、非常なる思い入れのある人なのである。

 そんな人がここを読んでくれたことがあるというのは、「元サイキッカー」としては、「オレもここまで上り詰めたか」という気分になったもの。

 なんて自慢しても、やはり世間の方はどこまでいっても「知らんがな」であろうから、一応ここに説明すると、竹内義和とは和歌山県出身のオタク・サブカル系の作家でありプロデューサー。通称は「アニキ」。

 今敏監督『パーフェクトブルー』の原作者であり、最近ではアイドルグループのファンとしても知られているが、一番分かりやすいのが、



 「北野誠が舌禍事件を起こして、ラジオ番組が打ちきりになった」



 という事件。

 あの番組『誠のサイキック青年団』のメインパーソナリティーの一人こそが竹内義和さんなのである。

 くだんの騒動には、「大手事務所から圧力があったのでは」などと、ネット上で様々な物議を醸したものだが、元々このラジオはから騒動に巻き込まれることが多かった。

 古くはジャニーズの裏ネタを話してメチャクチャ怒られたり、濃い目のアイドルファンを批判して抗争になりかけたり、「山本リンダ事件」(詳細は検索してみてください)とか、オウム真理教にヤカラを入れて抗議されたり、なにかとややこしい事件には事欠かない。

 で、しまいにはそれが高じて打ちきりになってしまったわけだけど、あの事件に関しては「北野誠謹慎」という結末になったが、我々「サイキッカー」(番組ファンのこと)の面々は皆きっと、



 「いやいや、アニキの方がもっとひどいこと言うてるはずや」



 ニヤニヤしていたに違いない。

 そんな関西アングラ界のカリスマともいえる竹内義和さんからコメントをいただいたのだから、その著作のファンでありサイキックのヘビーリスナーであったの私としては「誰それ?」という声などどこ吹く風で、有頂天になったのは言うまでもない。

 私とアニキの出会いと言えば、小学生のころに購入した、『なんたってウルトラマン』という本であった。

 子供のころから大の怪獣好きであった私は、当然のごとくウルトラマンなど特撮番組が好きであった。

 ゆえに、愛読書といえば江戸川乱歩シャーロックホームズと並んで大伴昌司怪獣大図鑑』や雑誌『宇宙船』などが本棚に並んでいた。

 そんなある日、近所の古本屋さんで見つけたのが『なんたってウルトラマン』。

 怪獣の本となれば黙っていられないと、乏しいおこづかいをやりくりして早速購入したのだが、帰って一読、これには驚かされることとなった。

 基本的に特撮や怪獣の本で多いのは、資料本である。

 怪獣のデータや正義の組織のメカや秘密兵器。はたまた、円谷プロなど当時の製作会社やスタッフの回顧録などなど。

 ところが、この『なんたって』は、そういったオーソドックスなものとはひと味違っていた。

 竹内流のウルトラマン語りというのは、一言でいえば、



 「つっこみ百人組手」



 そう、この本は『ウルトラマン』全39話を振り返りながら、データや裏話などは一切無視して、ひたすらにストーリーやセリフの矛盾点に「つっこみ」を入れていくというものだったのだ。

 有名なミスとしては、『ウルトラマン』第19話「悪魔はふたたび」の中で、怪獣を封じ込めたカプセルが、「三億五千年前だ」というセリフがある。

 よく聞くと、これはおかしな設定だ。

 漢数字で書くとわかりにくいが、算用数字にするとこれは、



 「300005000年前」



 ふつう、こんな変な表記の仕方はあるまい。それやったら、もう「3億年前」がわかりやすくてええがな。 

 もちろんこれは、「三億五千《》年前」のはずが、おそらくはミスプリントで台本に間違って載ってしまい、出演者も皆それに気づかずに使ってしまったのだろう。

 こういった「つっこみ39連発」が怒濤のごとく紹介されている。

 これなどはまだ、わりとしっかりしたツッコミだが、竹内アニキのそれはどちらかといえば、「揚げ足取り」みたいなところの方にその本領があった。



 「バルタン星人の冷凍光線で固められた警備員は、よく見ると、じっとしているのが大変でフラフラ動いている」



 といった、「ジェットビートルを釣るピアノ線が見えてる」レベルのお約束から、



 「ジャミラを見たアラン隊員は、すぐに正体が分かったみたいやけど、ということはジャミラは人間の姿の時から、あんな怪獣みたいな顔やったということですね」



 といった、アニキ得意の「ほっといたれよ!」な邪推。今でこそ、



 「B級作品につっこみを入れながら鑑賞する」



 というのは玄人の映画ファンなどなら当たり前のスタンスだが、一昔前はあまりそういう楽しみ方は市民権を得ていなかった。

 名作といわれる映画やドラマというのは、「マジメに見るもの」であって、それを笑うなどというのは「ひねくれた」「不謹慎」なことだったのである。

 そこに「いや、世の中にはこういう楽しみ方もある」と、最初に教えてくれたのが竹内アニキである。



 「バカなものをバカとして楽しむ」


 「そこに愛があれば、つっこみを入れながら笑ってもいい」



 そういった視点がOKであるということは、その後の私の人格形成に大きな影響を与えたのであった。


 (続く【→こちら】)


コメント (2)
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