インドとは、俺のことかと、バーラト言い

2023年10月10日 | 海外旅行

 「俺たちを【バーラト】と呼べ!」


 
 先日、突然にそんな声明を出したのは、インドモディ首相であった。
 
 世に「オレはこれからこう名乗る」という宣言をする人というのはいるもので、たとえば、作家の中島らもさんは周囲の女性スタッフから「おっちゃん」と呼ばれるのを不本意に感じ、
 
 
 「これからはジョニーと呼んでくれ」
 
 
 自己申告をし「なに言うてんねん、おっちゃん」と即座に却下

 私の周囲でも、高校時代の友人ヤマダ君が夏休み明けに、
 
 
 「オレはこの夏に生まれ変わった。これからは【ヤマダ2】と呼んでくれ」
 
 
 そう通告するも、われわれは変わらずいつものあだ名である「カレーパン」(カレーパンが好きだったから)で呼ぶのであった。
 
 かくのごとく、唐突な「キャラ変」はなかなか受け入れられないものだが、このモディ首相の場合はちと違い、言ってることは妥当なのが、おもしろい。
 
 なにを隠そう、インドのヒンディー語による正式名称こそが「バーラト」だからであり、われわれになじみな「インド」は日本語で、「インディア」は英語の名前。
 
 要は「ジャパン」でなく「にっぽん」「にほん」と読んでチョというのと同じで、わりと筋の通った発想なわけなのだ。
 
 といわれても、日本人には(たぶん世界の人も)やはりピンとこないが、こういう
 
 
 「なじんだ国名や都市名と、現地の発音とかがまったく違う」
 
 
 というのはよくある話で、私は世界史の本をよく読むし、海外旅行も好きなので、「バーラト」をはじめ結構そういう差異に、なじみがあったりするのだ。
 
 学生時代ドイツ文学を勉強していたので、ドイツが「Deutchland」(ドイチュラント)で、オーストリアが「Österreich」(エスタライヒ)なのは知ってるとか。
 
 稲垣美晴さんの大名著『フィンランド語は猫の言葉』をボロボロになるまで読み返したおかげで、かの国が「スオミ」であることに違和感もない。
 
 他にも、ギリシャが「エラダ」とか、ノルウェーが「ノルゲ」に、スウェーデンが「スヴェリエ」に、トルコは「トゥルキエ」で、エジプトは「ミスル」。
 
 現在でも、ニュースなどで前置きもなく「キーウ」なんて言われて困惑したけど、この種のことは色んなところであるわけで、なんとも興味深い。
 
 そういうことを知ってから、わりとその辺に敏感になり、たとえば外国人旅行者を見ると、ついその人のパスポートを見てしまうクセがついた。
 
 そこには、その人の国の「正式名称」が表記してあるので、その元ネタを推理するのが楽しいのだ。
 
 特にパスポートコントロールで並んでいるときは、ヒマだし、みんなパスポートを出しているから、問題(?)に事欠かない。
 
 カンボジア(カンプチア)の入国審査では「Česká」と書かれたパスポートを持った白人女性がいた。
 
 「チェスカ」? 頭に発音記号みたいなの付いてるし、フランス語っぽく「シェスカ」かな?
 
 雰囲気的には「チェコ」っぽいけど、どうなんだろ? でも西ヨーロッパではないよな。東かな。ユーゴのどっかとか。
 
 なんて灰色の脳細胞を駆使しながら、あとで調べてみると「チェコ」で合っていた。
 
 別のところではお隣で元「夫婦」のスロバキアも見たことがあって、こちらは「Slovenska」(スロヴェンスカ)。

 おお、なんかいかにもスラブっぽい響き。
 
 てことは、チェコスロバキアという「発音して気持ちいい国トップ5」に入る実力者(?)の正式名称は
 
 
 「チェスカスロヴェンスカ」
 
 
 だったのか。こっちも悪くないな。
 
 その流れで東欧をもっと見ると、「ポーランド」は「ポルスカ」。
 
 「ハンガリー」は「マジャールオルサーグ
 
 「ルーマニア」は「ローマニア」(ローマ人の国)
 
 なんかこう言うのを見ていると、英語表記の国名とかって、なんか味気ない気もする。
 
 いや、別に英語がどうというわけではないけど、世界には色んな言語があって、それぞれの特徴的な発音や名前もあって、それがおもしろいのに。
 
 「文化」って、そういうもんやん、とか考えてしまうわけなのだ。
 
 かといって「キーウ」みたいに、
 
 
 ロッシャとウクライナの戦争に遺憾の意を示したEU諸国、エスティケールトリエトヴォースラットヴィーエスの3国に、グレートブリテンおよび北アイルランド連合などは支援を約束し……」
 
 
 とか言われても「え? なになに?」って足がもつれそうだし、急にはムリがあるのだろうなあ。
 

 


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