前回(→こちら)の続き。
「モテないわけではないのに、彼氏彼女がいない人」
というのは、その人の能力うんぬんではなく、
「好きになるタイプと、なられるタイプの不一致」
そこに原因があるのでは、という仮説を立ててみた。
前回のミドウ君はハンサムで性格もいいのに、そういう男にねらいを定める
「クラスのイケイケで、かわいい子」
にまったく興味がないため、結果「モテない」ということになる。
この手の話は聞いてみるとけっこうあって、友人レリコちゃんは美人でスタイルがよく、留学経験があり英語が話せるという才女。
ところが、これがなかなか、男に恵まれない。
訊いてみるとやはり、「好きになる、なられる」のバランスが悪いよう。
「できる」タイプの彼女はステータスだけなら、かなり高いが、その美点を見る男性にまったく興味がない。
そこで「どんな人が好みなの?」と問うてみると、
「グイグイ引っぱって行ってくれる人がいい」
これを聞いたとき、思わず「あかーん!」と、ひっくり返りそうになりましたね。
そらそうや。だいたい男なんて、エラそうなことを言っても、しょせんは傷つきやすい子羊ちゃんばっかしなのだ。
それをつかまえて「ひっぱっていって」って、無茶ぶりにもほどがある。
日本の男の子は、「英語しゃべれる美女」になんてグイグイ行けません。
なので、彼女はいつも、山田耕作なみに待ちぼうけなのだ。
海外経験の豊富な彼女は外国人の知り合いが多く、アドレス帳にも「Steve」「George」などあるから、
「外国人とつきあったら?」
水を向けてみると、
「あかんねん。そういう人は友達はいいけど、恋人には無理。ウチ、日本男児が理想やから」
嗚呼、やっぱり。ものの見事な「なる・なられる」不一致さんだ。
もし彼女が逆に
「イケてる女に甘えたい」
という男性が好みなら、もうウハウハのハーレム状態だろう。
それが、「日本男児」にこだわったばっかりに、なかなか相手に恵まれない。
で、本人は「なんで彼氏ができひんのやろ」とボヤいている。
ここまでくれば、カンのいい読者諸兄には、もうおわかりであろう。
ミドウ君やレリコちゃんは「不一致」で苦労しているが、これが逆もまた真なりで、「一致」している人は、むしろその表面上のもの以上にモテることになる。
友人サカイ君はぱっと見、そんなイケてる男ではない。
まあ、悪いわけではないが、基本的には並みくらいである。
ところがこの男がモテる。めっちゃモテる。
とにかく「彼女が途切れたことがない」タイプの男なのだ。
もちろん、それは彼自身の人なつっこさと、話術の妙もあるのだが、それ以上にこの男は
「自分を気に入ってくれるタイプ」
これを知っている強みがある。
友はとにかく、
「心にちょっとした屈託をかかえている女性」
に好かれる。メンヘラとまではいかないが、
「家族とうまくいってない」
「閉鎖的な地方出身である」
「体のどこかにコンプレックス(胸が大きいとか、背が高すぎるとか)がある」
などといった「ちょっとした悩み」を持つ女性と、仲良くなりやすい。
うまいことに、彼自身もそういった子の話を聞くのが、すごく達者なのだ。
でもって、その悩みをうまく解消してあげる。
端的にいえば、「そのままのキミが好き」と受け入れてあげる。
それで
「ステキ!」
「あたしを理解してくれる王子様!」
となって、恋が芽生えるパターンなのだ。
彼の名言に、
「オレは、パートに出てて、ちょっと生活に疲れてる主婦は100パー落とせる」
というのがあり、なんだかゲスい雰囲気もあるが、これが本当なのである。
いったんターゲットをしぼれば「シモ・ヘイヘか!」と、つっこみたくなるくらい、一発必中でヒットさせるのだ。
われわれ悪友は彼のことを、
「色魔」
「詐欺師」
「イタリア人」
やっかみ半分で呼んでいたが、そんな彼も1度大きな挫折を味わっており、あるとき友の一人が、
「なんか、キミのつき合う女って、同じタイプばっかりやなあ。ワンパターンちゃんのん」
なんてヤカラを入れたところ、
「おう、ほんならオレ様の実力を見せたろやんけ!」
とばかりに、いつもと違う、
「お嬢様大学に通う女子大生」
「歯医者の卵」
「ベンチャー企業の女社長」
などに果敢に突撃したが、ことごとくフラれたどころか、その中の一人から、
「アンタはモテてるつもりか知らんが、自分がイケるとわかってる女だけしかねらわへん、ストライクゾーンのせまい男や」
キッチリ見破られたうえ、
「だから、チョーシこくな」
「カン違いすなよ、マジで」
そう言って詰められるという、オマケまでついた。
友はそのショックから、南森町のカフェで号泣して大変だったらしいが、別にストライクゾーンがせまいうんぬん自体は、悪いことではない。
単純に恋人がほしいだけなら、サカイ君の「見破る」能力はたいしたもので、大いに活用すべきである。
たぶん、「恋人が途切れない」人は、意識無意識問わず、この「一致」を自覚しているのだろう。
逆に言えば、サカイ君のような色事師でも、
「自分を好きになってくれないタイプ」
これが相手のアウェーとなると、こんな苦戦を強いられる。
これで、本来なら魅力的な男子であったはずのミドウ君が「モテなかった」理由もわかろうというもの。
そしてここへ来てようやく、最初の方で言った、
「恋人が欲しければ妥協しろ」
という、よくあるアドバイスが、間違ってるとは言わないが、少し的を外していることが。
妥協するなら「下」を見るのではなく、どの方向に目をやるべきか、見えてくるのではあるまいか。
(続く→こちら)