前回(→こちら)の続き。
「モテないわけではないのに、彼氏彼女がいない人」
というのは、その人の能力うんぬんではなく、
「好きになるタイプと、なられるタイプの不一致」
そこに原因があるのでは、という仮説を立ててみた。
顔も性格もいいのに、なぜか彼女がいない友人ミドウ君だが、クラスもかわいい女子の誘いを断っているのが原因らしい。
なんともったいない! と、その理由を問うならば、
「オレ、ああいうクラスの人気者的女子が苦手やねん」
そうして友は、心底不思議そうに、
「みんな、あの子らかわいいとか、つき合いたいとか言うやん。それが、オレには全然理解できひんねんなあ」
そう首をかしげるのだ。
これにはこっちが「はあ?」である。
ミドウ君の拒否する「キモイの姫君」たちは、たしかにクラスの中でもかわいい方で、その自覚があるのだろう、基本的に積極的で自信も満々だ。
しかしだ、それにしても、かわいい女子からデート誘われて、ふつう断るか?
たしかに、あの子らみたいな、イケイケの女子が苦手というのはわからなくもない。
でもそれは、私のような地味なスットコ系男子の言うことであろう。
「バカにされるんちゃうか」
「笑われるんちゃうか」
「だまされてるんちゃうか」。
腰が引けまくっている我々ボンクラとちがい、彼のような「いい男」はちっとも、そんなことを感じる必要もない。
いやむしろ、どう見たってハンサムと、かわいこちゃんで「お似合い」だ。
周囲に自慢だってできるし、10代の自意識には、そういう感覚もあるもんでないんかいな。
しかし、ミドウ君は、
「いやいや、合わへんよ。オレはもっと、おとなしくてマジメなタイプが好きなんや。あんなキラキラしたん、しんどいで」
うーむと、これには、思わずうなったものだ。
そっかー、彼はせっかくモテる要素はあるのに、そこに引っかかってくる女の子にはまったく興味が持てない。
だから、結果つきあえないどころか、好感度すら下げることになっている。
そういや、けらえいこさんの『あたしンち』で、中学生のユズヒコ君が、クラスのアイドル的存在の里奈ちゃんについて、
「みんな、あの子のこと、かわいいっていうけど、オレ全然わかんないんだよなー」
なんて首をかしげるシーンがあるけど、あれか。
そういやユズピも「モテる」(無自覚だけど)設定だっだなあ。
じゃあ、「地味でまじめな」子とつきあえばと問うならば、
「それが、そういう子は全然、こっちに振り向いてくれへんねん」
トホホといった調子で、おっしゃるのである。
そう、彼が好む、控え目で真面目な子はミドウ君のことを、
「目立たない、わたしたちのような地味系女子とは関係ない世界のイケメン」
であると、カテゴライズしており、
「ああいう人は、イケイケのかわいい女子とつき合うもの」
ハナから、決めつけているらしいのだ。
ゆえに
「恐れ多い」
「近づく気にもなれない」
われわれのようなボンクラ男子が、かわいい子に腰が引けるのと、まあ似たような理由で避けるのだという。
どうせスクールカースト上位同士で、よろしくやってるんでしょ、と。
少なくとも、ミドウ君の経験では、そうだったと。
まあ、言われてみれば我々だって美人が
「あたし、イケてる男子って逆に苦手」
とか言っても、
「ふざけんな! このウソつきのクソ女! じゃあ、お前明日から、金も地位も才能も無くしたほんこんさんと、つきあえるんか!」
ってなるし(←それ、ほんこんさんに失礼だろ!)、そもそもが、
「クラスで一番の美女に声をかけよう」
という発想すらないのだ。
だからみんな、「阿呆のふりして行け」と言うのだな。
「理性」があったら、とてもそんなことはできんわけで、それは男女問わず似たようなことがあるようなのだ。
さらにいえばミドウ君自体が、
「そもそも、そういう地味な子と、オレもなにしゃべってええかも、わからんねんけどな」
彼は苦笑しながら、
「キミが文化系の女の子と、マンガとか小説の話で盛り上がってるん、うらやましいな思うて見てるもん」
嗚呼、なんという哀しい、スレ違いであろうか。
こっちはイケメンで、さわやかスポーツマンの彼を羨望の目で見ている裏で、
「大島弓子ってだれ? シュトルム・ウント・ドランクってなに? いいなあ、オレもまぜてほしいなあ」
とか、指をくわえとるのだというのだ。
もし彼の好みが「かわいい人気者女子」と、わかりやすければ、もうモテモテで毎日がパラダイス。
逆に、彼自身がもう少し目立たなければ、ハードルが下がって、もっとナチュラルに「控え目女子」と接することができるかもしれない。
でも、たしかにいるよなあ。
「剣道がうまいのに、本人は野球好きだから下手なのに野球部に入って、ずっと補欠」
みたいな子。
はたからは、剣道やればいいのにと思うけど、本人が野球を「好き」なんだから、こればっかりはしょうがない。
単に「能力値が高い」からモテるとかぎらないと、このときに気づかされもの。
当時の経験から、私は
「スペックは悪くないけどモテない人」
を見ると、なにげにその人の好みをたずねることにしたのだ。
そうすると、同じような話が出るわ出るわで、この
「モテないわけではないけど不一致」問題
なかなか根深いと、思わされるのである。
(続く→こちら)