中島らも絶賛! 東海林さだお流「天ぷらそばの正しい食べ方」

2017年08月20日 | B級グルメ
 立ち食い屋における、「天ぷらそば」の正しい食べ方をご存じだろうか。
 
 などとはじめてみると、
 
 
 高級フレンチとかならわかるけど、立ち食いそばで正しい食べ方も何もないだろ!
 
 あんなものは、作り置きのふにゃっとなったかきあげをかじりながら、適当にずるずる、すすればいいんだよ。
 
 
 なんて、お怒りになる人はあるかもしれないが、そういう人とはオトモダチになりたくない。
 
 立ち食いの天ぷらそばには、れっきとした正しい食べ方があるのだ。
 
 それは、東海林さだお著『ワニの丸かじり』収録の「天ぷらそばのツライとこ」というエッセイに書かれている。
 
 そのプロセスを説明しよう。
 
 まず、立ち食いそば屋に入って、天ぷらそばを注文する。
 
 それに入れ放題のネギを入れ、七味をかける。
 
 そして、すぐに食べるのではなく、そばの上のカキアゲを、ハシで押しつけて底に沈めるのである。
 
 ここがポイント。
 
 こうすることによって、カキアゲが温まり、やわらかくなり、ツユを吸いこみ、カキアゲからは揚げ油が、ツユに流れ出していくという効果があらわれる。
 
 そうして、しばらくはカキアゲに別れを告げ、上のそばを「かけそば」として楽しむ。
 
 その際「あとでね」と声をかけるのが、ショージ君流。
 
 ツユも、まだカキアゲから油が出てきていないので、「かけそば」のしっとりとしたダシが味わえる。
 
 ある程度ずずっと、すすったとろこで、おもむろにハシをドンブリのにつっこんで、今度はカキアゲを引き上げる
 
 するとカキアゲは、ドンブリの底でツユをたっぷりと吸って、やわらかくモロモロになっている。
 
 このモロモロがうまい。
 
 おまけに、さきほどまで、あっさりしていたそばのツユが、カキアゲの油浮上によって、今度は少しコッテリした、ラーメンでいえばトンコツ風のような濃い味になる。
 
 これが、うまい。
 
 ツユをふくんだ、モロモロのカキアゲを、そばとともにすする。ツユとともに飲む。
 
 こういうとき、というものの偉大さがよくわかる。ツユに一段も二段も、深い味わいをあたえてくれる。
 
 ただツユに沈んだ、モロモロのカキアゲのうまさだけでなく、「かけそば」と、「天ぷらそば」を2種類、味わえることになる。
 
 いや、それどころか、モロモロのフワフワの溶けたカキアゲからは
 
 「ハイカラそば」(関西では、たぬきそばのことをこう呼びます)
 
 「なべ焼きうどん
 
 のおいしささえ感じられ、一石二鳥どころか、三鳥にも四鳥にもおいしいのである。
 
 銭湯好きで知られる、ドイツ文学者の池内紀先生は、
 
 
 「銭湯に行くたびに、たった400円程度でこんなに楽しい気分にさせられていいのだろうかと思う」
 
 
 とおっしゃっていたが、私も立ち食いそば屋で、かきあげそばを食べるたびに、
 
 「たった280円で、こんなに充実した時を過ごしていいのだろうか」
 
 陶然とした気持ちになる。
 
 これが、立ち食いそば屋による、中島らもさんも感銘して何度もエッセイのネタにした、かきあげそば(天ぷらそば)の正しい食べ方である。
 
 癖になるので、ぜひ一度試していただきたい。
 
 
 (続く→こちら
 
 
 

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