幻の妙手を探せ! 深浦康市vs羽生善治 2007年 第48期王位戦 第7局

2020年04月17日 | 将棋・名局
 「幻の妙手」について語りたい。
 
 将棋の世界には、盤上にあったのに対局者が発見できないか、もしくは発見しても指し切れずに終わってしまった好手というのが存在する。
 
 前回は郷田真隆九段の指した妙手と、藤井猛九段が残念ながら発見できなかった、その返し技を紹介したが(→こちら)、今回は深浦康市九段と羽生善治九段の一戦から。
 
 
 先日、NHK杯優勝した深浦康市九段といえば、四段時代に全日本プロトーナメント(今の朝日杯)や早指し選手権優勝(決勝の相手はそれぞれ米長邦雄羽生善治)。
 
 その実力が一級品であることを見せつけたが、タイトル獲得やA級昇級が遅かった棋士である。
 
 順位戦の下のほうで苦労したことと(9-1での頭ハネ2回。この風通しの悪さには本当にウンザリする)、「羽生世代」の厚い壁が存在してたせいだが、そんな深浦に大きなチャンスが訪れたのが、2007年の第48期王位戦
 
 挑戦者決定戦で、渡辺明竜王を破って久しぶりに大舞台に登場した深浦は、羽生善治王位相手にもいい将棋を展開。
 
 3勝1敗とリードし、初のタイトル獲得に王手をかける。
 
 まあ、そこは天下の羽生のこと。簡単に勝たせてはくれず、カド番をふたつしのいでタイに押し戻し、勝負は最終局にもつれこむことに。
 
 この一番がまた、タイトル保持者を決めるにふさわしい大激闘になるのだ。
 
 たとえば、こんな手。
 
 
 
 
 
 ▲41角に、△62金打。
 
 △63を取って、▲53桂成とされる手を防いだわけだが、穴熊相手に固さ負けしないぞ、という気合を感じる。
 
 
 
 
 
 
 △71角の受けに、▲42銀がすごい手。
 
 まるで初心者のような筋の悪い攻めだが、これで存外食いついている。
 
 深浦流の、根性を感じる手だ。
 
 
 
 
 
 この△21を守る金打ちも、見たときはひっくり返ったもの。
 
 正直、いい手なのかどうか、私レベルではさっぱりわからないけど、熱戦の雰囲気は出ている。アツい。
 
 深浦はそれでも▲21馬と取って、△同金に▲55桂とせまる。
 
 羽生はもらった△66に設置し、ついに先手の穴熊を照準にとらえる。ド迫力の終盤戦だ。
 
 クライマックスはこの場面。
 
 先手が▲21飛成と金を取り、後手が△68銀と打ったところ。
 
 
 
 
 
 この局面、先手玉は△88角成からの簡単な詰めろで、後手玉はまだわずかに詰まない
 
 なにかひねり出さなければならない場面だが、ここで深浦が指したのが、この将棋を熱戦から王位戦の歴史に残る名局に格上げさせた、目をみはる一撃だった。
 
 
 (続く→こちら
 
 

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