前回に続いて、「矢倉規広世代」が中心のオタク談義。
特撮にくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂ったエピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、
「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
すっかり疑心暗鬼に。
そりゃまあ、
「主人公が妹の治療費を稼ぐためにインドに修行に行き、正義のヒーローになるも、そこで第三次印パ戦争に巻き込まれるなど苦労し、そのつらい人生をエンディングで《お金もほしいさ、名もほしい》《恋もしたいさ、遊びたい》とグチりまくる」
なんて言われても、「え? それネタやろ?」としか思いませんわな。
今回は「自衛隊が出れば怪獣は普通にやっつけられる」という話から、
「でも、『ウルトラマン』の科学特捜隊はまだしも、その他の防衛組織はかなり弱い」
という流れになってからの続きで……。
では、まずは登場人物。
1.ベットウ君
後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。
『帰ってきたウルトラマン』で好きな怪獣はダンガー
2.ワカバヤシ君
元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
『帰ってきたウルトラマン』で好きな怪獣は特になし
3.カネダ先輩
SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。
『帰ってきたウルトラマン』で好きな怪獣はサドラ
4.私。通称
特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。
『帰ってきたウルトラマン』で好きな怪獣はキングマイマイ
それでは、張り切ってどうぞ。
私「解散MAT 脱出TAC お遊びZAT 全滅MAC」
ベットウ「あるいは、解散MAT 謹慎TAC 脱出ZAT 全滅MAC」
ワカバヤシ「そのマットとかタックって、自衛隊とか地球防衛軍みたいなの?」
ベットウ「それぞれ、『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』『ウルトラマンタロウ』『ウルトラマンレオ』の正義の組織です」
ワカバヤシ「それが、解散とか謹慎とか全滅とか、大丈夫なの?」
ベットウ「それが、大丈夫やないんです」
ワカバヤシ「だよねえ。これが解散陸自、脱出空自、お遊び海自、全滅在日米軍だったら、日本も終わりだもん」
カネダ「まずはMATか」
ベットウ「MAT。【Monster Attack Team】の略ですね」
ワカバヤシ「【怪獣攻撃隊】。なかなかカッコイイね。で、それがなんで【解散】なの?」
私「それは、このチームがしょっちゅう《解散、解散》言われてるからやねん」
ワカバヤシ「解散って、なんで?」
カネダ「そら、怪獣やっつけ……じゃなかった攻撃隊が、怪獣退治に失敗したら、その罰ゲームは受けなあかんわ」
ベットウ「だいたい、藤田進に《次ダメだったら、MATは解散だからな》って、シメられてますよね」
「MATは解散だからな」が持ちギャグ(?)の地球防衛庁長官。昭和特撮ではおなじみの、藤田進さん。
ワカバヤシ「でも、前線で戦う人達が解散したら、怪獣はどうなるのさ?」
私「さあ……」
ベットウ「ねえ……」
ワカバヤシ「ダメじゃん!」
ベットウ「まあ、物語に緊迫感を出すために、解散言うてるんでしょうケド」
カネダ「そんな戦後処理は、怪獣倒してからやってくれって話やわな」
ベットウ「MATって、地球防衛庁のかなり下っ端なんでしょうね」
私「初めて言われたんって、グドンとツインテールのとこやっけ?」
ベットウ「最初かどうかは憶えてないですけど、第5話の『二大怪獣東京を襲撃』と、第6話の『決戦!怪獣対MAT』」
ワカバヤシ「なんか、おもしろそうなサブタイトル」
ベットウ「ここでは、ツインテールと、それを捕食する地底怪獣グドンが大暴れ」
カネダ「MATはMN爆弾で攻撃するけど、これでは倒せない」
ベットウ「頼みの綱のウルトラマンも敗れて、さあ大変」
ワカバヤシ「あ、ウルトラマン、負けちゃうんだ」
カネダ「死にはせーへんけどな。わりとボロ負け」
私「まあ、2対1ですし」
ワカバヤシ「(スマホで検索しながら)ツインテールって、おもしろいフォルムだねえ」
ツインテール。特撮史上に残る、すばらしいデザイン。髪型のツインテールの元ネタも、たぶんコレ。かわいい。
私「この2匹は強いし、デザインもいいし、いい戦いやなあ。大好き」
ベットウ「エビの味しますしね」
カネダ「で、この状況で《MATは解散》と」
ワカバヤシ「そんな無茶なって」
カネダ「ホンマ、今する話とちやうよな」
古代怪獣グドン。ツインテールとのタッグとは言え、ウルトラマンをボコボコにした実力者。シブい。
私「民間人が地下道に閉じこめられて、それもなんとかせなアカンなのに、そんな内輪もめしてる場合とちゃう!」
ベットウ「郷隊員の恋人、アキちゃんも死にかけてるのに……」
カネダ「まあ、お偉いさんのリアルではあるよな」
ワカバヤシ「んで、本当に解散しちゃうの?」
カネダ「いや、そこは防衛軍もなんとかせなあかんから、ついにあれを出してくる」
ベットウ「出ましたね、スパイナー」
ワカバヤシ「お、新兵器?」
私「これはすごいねん。なんちゅうても、小型水爆に匹敵する威力があるという」
ワカバヤシ「え? え? そんなの使うの? 東京、壊滅してしまわない?」
カネダ「ま、するやろね」
ワカバヤシ「おさまってる場合じゃないよ。避難できない民間人は?」
私「まあ、もろともということで」
ワカバヤシ「首都機能の施設とかも?」
カネダ「大阪か名古屋に遷都しますか」
ワカバヤシ「前も聞いたけど、本当に核兵器を街中で使っちゃうんだねえ」
ベットウ「正確には核やないということになってますけど、まあ核ですよね」
私「エヴァに出てくるN2地雷と同じやな。核やけど、核やないと」
カネダ「キノコ雲が上がっても、劇中で核って言うてないから核にならへん」
ベットウ「シュレディンガーの核兵器!」
私「ここで岸田森が、東京大空襲の話をするのがグッとくるねんな」
カネダ「昭和と平成以降の特撮の違いに、《戦争がリアル》な世代かどうかはあるやろね」
ワカバヤシ「いくら怪獣をやっつけられないとはいえ、じゃあ人間とか施設ふくめて、東京もろとも焼き払えばいいじゃんって、すごいねえ」
私「パンがなければ、ケーキを食べれべええのよ」
ベットウ「『シン・ゴジラ』の東京壊滅シーンの元イメージって、たぶんこのスパイナーのエピソードですよね」
(続く)