レバノン系オランダ人に「アムステルダムで寿司職人にならないか」と誘われる

2017年03月24日 | 海外旅行
 「アムステルダムに着いたら、オレのすし屋で働かないか」。

 レバノン系オランダ人に、そんな誘いを受けたのは、ヨーロッパで乗った夜行バスの中のことであった。

 人はときに、思いもかけないスカウトを受けたりすることがある。

 街で芸能事務所に誘われるとか、逆ナンされたと思ったら宗教の勧誘とか、イルカの絵を買わされそうになったりと様々だが、たとえば友人テンジン君は、大阪の難波や神戸の三宮といった繁華街を歩いていると、しょっちゅう黒服を着たお兄さんに、

 「ウチの店で働かないか」

 そう声をかけられるという。

 ありていにいえば、キャバクラや風俗店からなのだが、彼の場合「いい娘いるよ」という遊びの勧誘ではなく、「ウチで働け」という、職業的ヘッドハンティングなのであった。

 あまりにも頻繁に声をかけられるので、不思議に思った彼は、ある日スカウトマンに思い切って

 「なんでボクに声かけたんですか。こういうの、ホンマにようあるんですよ」

 とたずねると、

 「あー、やっぱりそうか。うん、キミにはね、風俗店店員のオーラが出ているんや」

 こんな返事が返ってきたそうだ。

 スカウトマンに言わせると、

 「キミは水商売の女の子の相手がうまそうだから、きっといい仕事ができるよ。プロなら、適性は一目でわかるからね。絶対に才能があるよ」

 たしかに彼自身、そういった夜のお店は好きだし、女性の、なべても水商売系の女性のあつかいは上手でモテもするのだが、そういった店の店員の才能があると、さわやかにいわれても困る話であろう。

 まあプロが、それもランダムに接する、けっこうな数のそれが言うのだから、それなりに説得力はあり、一応はまっとうなサラリーマンであるテンジン君も、

 「リストラにあったら、ちょっと考えてみようかな」

 といって笑っていたものだ。

 かくのごとく、スカウトの種はどこに転がっているかわからないものだが、私の場合これが「オランダのすし屋」だから、テンジン君に負けずおとらずアクロバティックである。

 あらかじめ言っておくが、私は寿司の修行などしたことはなどころか、寿司屋でバイト経験すらない。食べる方も回る専門だ。

 見た目は眼鏡の文化系で、江戸っ子的要素はない。そもそも料理も下手で、自分のにぎったものがまともな商品になるとも思えない。『将太の寿司』はおもしろいけど、あんな人情もないドライなタイプだ。そんな奴の寿司、だれが食うねんと。

 しかも、オーナーがオランダ人。おまけにレバノン系。なにかこう、全体的にツッコミどころが多いというか、はっきいりいって怪しさが渋滞しているではないか。



 (続く→こちら






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