三間飛車の芸術的さばき 中田功vs真田圭一 1993年 C級2組順位戦 その2

2019年09月11日 | 将棋・名局

 前回(→こちら)に続いて、中田功真田圭一の決戦。

 三間飛車のスペシャリスト中田功が、その腕を存分に振るって序中盤はペースを握る。

 

 



      

 だが、自力昇級の権利を持つ真田も、負けるわけにいかない大勝負。

 根性を見せ▲64金と取って、△同歩に▲54角と打つのが実戦的な手。

 金銀にねらいをつけ、いつでも囲いを薄くできる形で、相手にプレッシャーをかけるのが逆転のコツだ。

 以下、真田は美濃囲いの急所である△61の金をはがし、▲48香と、飛車にアタックをかける。

 




 たしか、子供のころに読んだ『将棋マガジン』に紹介されていたのが、この場面。

 次の手が好手で、中田功の勝ちが決定的になった、と書かれていた記憶がある。

 飛車を逃げるのは、もちろん論外。ヒントは、ある「コーヤン語録」から。

 なんとかは捨てるイメージで……。





 飛車を見捨てて、△56歩とたたくのが、

 

 「飛車は切るもの」

 

 という、コーヤンだけでなく、久保利明藤井猛鈴木大介なども共通して語る、振り飛車必勝パターン。

 ▲68銀△47歩だから、先手は▲45香と取るが、△57歩成、▲同金、△56歩▲47金

 そこで、△57桂と打つのが、筋が悪いように見えて確実にせまる好打

 


 


 将棋は、相手のを攻めるゲームだ。

 ▲68金△59銀と掛けて、攻めは切れない。

 ▲79金は、強引に△69銀とねじこんで、▲88玉△78銀打と重ねて寄り。

 真田は▲12飛と反撃するが、一回△42歩中合するのが、おぼえておきたい軽妙な一着。

 

 

 

 ▲同飛成△72銀打で、この急造の銀美濃が、意外にしぶとく先手が困っている。

 △42歩の効果で、次に△15角の両飛車取りがある。

 ▲21飛成として、それをさけつつ次の▲61竜をねらいたいが、これには△69桂成詰めろで1手間に合わない。

 真田も必死でしがみつくが、どこまでいっても、完全無欠に中田功の計算通り。

 強すぎる。そら、先チャンと深浦も連破するわけや。

 しょうがなく先手は▲68金とするが、△15角で飛車を取りかえされては、ハッキリ差がついてしまった。

 以下、真田は若者らしい、根性のねばりを見せるも、中田功の的確な攻撃の前に討ち取られた。

 こうして大一番を自身の、いや三間飛車の歴史的名局ともいえる内容で勝利した中田功は、最終局も勝ってC1昇級を決める。

 子供のころも感じたが、この将棋は最初から最後まで、三間飛車のお手本のような手順ではないか。

 大駒を大きく使って敵陣を攪乱し、接近戦になったらバサッと切って、あとは美濃囲いの耐久力にものを言わせて、小駒でにじり寄る。

 これが振り飛車の極意なのだろう。

 ぜひ、初手から盤に並べて味わっていただきたい、コーヤンの大傑作だ。

 

 

 (大山康晴の受け編に続く→こちら

 

 


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