前回(→こちら)に続いて、中田功と真田圭一の決戦。
三間飛車のスペシャリスト中田功が、その腕を存分に振るって序中盤はペースを握る。
だが、自力昇級の権利を持つ真田も、負けるわけにいかない大勝負。
根性を見せ▲64金と取って、△同歩に▲54角と打つのが実戦的な手。
金銀にねらいをつけ、いつでも囲いを薄くできる形で、相手にプレッシャーをかけるのが逆転のコツだ。
以下、真田は美濃囲いの急所である△61の金をはがし、▲48香と、飛車にアタックをかける。
たしか、子供のころに読んだ『将棋マガジン』に紹介されていたのが、この場面。
次の手が好手で、中田功の勝ちが決定的になった、と書かれていた記憶がある。
飛車を逃げるのは、もちろん論外。ヒントは、ある「コーヤン語録」から。
なんとかは捨てるイメージで……。
飛車を見捨てて、△56歩とたたくのが、
「飛車は切るもの」
という、コーヤンだけでなく、久保利明、藤井猛、鈴木大介なども共通して語る、振り飛車必勝パターン。
▲68銀は△47歩だから、先手は▲45香と取るが、△57歩成、▲同金、△56歩、▲47金。
そこで、△57桂と打つのが、筋が悪いように見えて確実にせまる好打。
将棋は、相手の金を攻めるゲームだ。
▲68金は△59銀と掛けて、攻めは切れない。
▲79金は、強引に△69銀とねじこんで、▲88玉に△78銀打と重ねて寄り。
真田は▲12飛と反撃するが、一回△42歩と中合するのが、おぼえておきたい軽妙な一着。
▲同飛成に△72銀打で、この急造の銀美濃が、意外にしぶとく先手が困っている。
△42歩の効果で、次に△15角の両飛車取りがある。
▲21飛成として、それをさけつつ次の▲61竜をねらいたいが、これには△69桂成が詰めろで1手間に合わない。
真田も必死でしがみつくが、どこまでいっても、完全無欠に中田功の計算通り。
強すぎる。そら、先チャンと深浦も連破するわけや。
しょうがなく先手は▲68金とするが、△15角で飛車を取りかえされては、ハッキリ差がついてしまった。
以下、真田は若者らしい、根性のねばりを見せるも、中田功の的確な攻撃の前に討ち取られた。
こうして大一番を自身の、いや三間飛車の歴史的名局ともいえる内容で勝利した中田功は、最終局も勝ってC1昇級を決める。
子供のころも感じたが、この将棋は最初から最後まで、三間飛車のお手本のような手順ではないか。
大駒を大きく使って敵陣を攪乱し、接近戦になったらバサッと切って、あとは美濃囲いの耐久力にものを言わせて、小駒でにじり寄る。
これが振り飛車の極意なのだろう。
ぜひ、初手から盤に並べて味わっていただきたい、コーヤンの大傑作だ。
(大山康晴の受け編に続く→こちら)