スキーといえばコブ。昆布ではなくてコブ。コブ斜面ね。
僕は無類のコブ好きで通っていましてね。
プリンセスを姉君に預けて、弟君とゴンドラに乗って標高2000メートルの白根山の山頂へ。
そこから一気にぐぉーっと滑り降りて来ると、視界に入るコブ斜面。
いきなりコブへ行くか?と自問自答するも、そこは何しろ無類のコブ好き。行くんですね。コブへ。
まぁ、大方の予想通り、そのコブ斜面でね、転倒ですよ。何しろ春のコブはアイスバーン。ガリッガリなもんでね。転んだが最後、50メートルくらいは止まりませんね。グニャグニャですよ、僕は。まぁ、50メートルは大袈裟だけどね。
どこかへ飛んでいったニット帽を弟君が拾って来てくれて、雪を払って、さぁ、いざ、コブの続きを!と思ったらね、膝がね・・・おれのひざがぁ!どうにかなっちまったぁ!状態ですよ。
もう、スノーモービルを呼んじゃおうかと想うくらいの激痛。
まぁ、頑張って滑り降りたけどね。
最序盤で負傷してしまったので、ちゃんと滑ったのはその一本だけ。
午後は、プリンセスちゃんと、子供用ミニミニゲレンデで楽しくボーゲン競争。
子供用ゲレンデで二、三回滑って、キッズパークでソリ遊びでもしようと思っていたんだけど、プリンセスは子供用ゲレンデのスピード感溢れるコースがお気に召したようで、連続25回くらい滑るもんだからね、安静を必要とする僕の膝なんて、悲鳴を通り越して、雄叫びに変わっていたね。
さぁ、そろそろお開きかなという時間。弟君が現れる。
「にーちゃん、最後に一本滑ろうよ!」
いや、無理だって・・・マイ膝がね、もう雄叫びをあげているんだよ。君も知っているだろう?と。
弟君はね、普段は優しいいい子なんだよ。なのにね、僕のストックを奪って、なぜか山の中腹までズリズリと登って、そこに僕のストックを突き刺して、「向こうで待ってるから!」と言い残して去っていったんだよ。
ねぇ、意味がわかるかい?おれはわからないよ。なんで、ストックをそこに刺して去っていくんだい?
何が辛かったって・・・その小山に刺されたストックを取りに、スキーを履いたまま山を登る時が一番堪えたよ。僕の膝は、もう、ティーレックスの吠え声だよ。ティーレックスってわかるかい?ティラノザウルスだよ。恐竜だよ。恐竜が吠えているんだよ。
仕方が無いので、ストックを取って、ゴンドラ乗り場へ。
そこで待つ、姉君と鬼の弟君。兄妹三人仲良くゴンドラに揺られ、再び山頂へ。
あぁ、膝が膝じゃなくなって、膝みたいな何かに変わってしまった気がしたよ。
スキーの後でね、弟君はこんなことを言っていたよ。
「兄妹三人で一緒に滑るなんて、もう二度とないかもしれないと思ったら嬉しくなっちゃってさ。良かったよ」
そうかそうか、そういうことだったのか、おれも一緒に滑れて良かったよ。おれは良かったけど、おれの膝はどうかな?
ファミリーはそのまま宿へ。僕は一人、吹雪、気温マイナス5度の白根山を降りて帰ると。
右足はアクセルとブレーキを踏むんだね。帰り道の三時間。ちょっとでも動かすと悲鳴をあげる膝。耐えに耐えて、なんとか帰還。痛めたのが左膝じゃなくて良かった。クラッチは踏めない。絶対に踏めない。
そんなわけでね、もう卒業ですよ、僕は。体力と気力の限界です。
スキーを引退、とも思ったんだけど、誘われたらまた行っちゃいそうだから、「コブを引退」あたりにしとくかな。
ワールドカップ、出たかったなぁ。
追伸。
プリンセスちゃんは、スキーが大好きになったそうです。
めでたし、めでたし。