蜂箱の隣に腰を下ろす。
栗林だけに、栗のイガに気をつけながら腰を下ろす。
横にある蜂箱の巣門、入り口を眺める。
ミツバチが次々と巣門から出てきて羽ばたいていく。
どこかで花の蜜を吸ってきたミツバチが戻ってきて、ヨチヨチと歩いて巣門をくぐって中へ入っていく。
これ、どれだけ見ていても飽きない。しびれる。可愛い。
一説によると、ミツバチが花粉を運びはじめたら安泰らしい。安泰というのは、その群れがその場所に居付くことを決めたということ。あくまでも一説によるとね。
ミツバチが両脇に黄色い花粉を抱えて帰ってくる。
ふふふ・・・安泰。
花粉を抱えて帰ってくるミツバチは花粉の重さで、いつもよりさらにヨチヨチと歩く。さらに可愛い。
ふふふ・・・安泰。
当初はこういう計画だった。
万が一、宝くじの確率で巣箱に蜂の群れが入ったら。
蜂の群れが寝静まった夜の内に、巣門をパタンと閉めて、蜂箱を車の荷台に積み込んで、我が家の庭に再びセット!
朝になって目が覚めて外へ出てきたミツバチは「あれ?なんかいつもと違うな?」と思いつつ、花の蜜集めに向かう。
一説によると、ニホンミツバチの行動範囲は半径約2キロ。巣箱の移動が2キロ以内の場合、元の巣箱があった場所へと戻ってしまう可能性がある。2キロを越えていれば大丈夫。一説によるとね。
オザワジィの栗林と我が家の距離は4キロ以上あるし、ひと山越えるし、大丈夫なはずである。
実際に蜂の群れが入居して、考えた。
移動するべきか、しないべきか。
移動すれば、庭の蜂箱を毎日観察できる。だがしかし、リスクもある。ジムニー号でガタンゴトンと運ぶ時に、巣箱の中に出来た蜂の巣が落ちてしまう可能性がある。ミツバチたちにもストレスを与えることになる。
ハチの出入りを観察しながら、僕は考える。
「ここに置いておこうかな」
せっかく宝くじが当たったわけだ。このチャンスを人為的ミスで失いたくはない。
僕はオザワジィに言う。
「蜂箱、あのまま置いておいてもいい?」
オザワジィは言う。
「いいよぉ」
今日はハチさんに会いに行こう!
そんな感じで、三日に一回くらい、僕はオザワジィの栗林へ通うのである。