ミツバチの天敵。三大天敵。スズメバチ、スムシ、アカリンダニ。
スズメバチは前述の通り。
スムシは、ミツバチの巣を食べる蛾の幼虫。スムシは、ニホンミツバチの巣には必ず寄生しているもので、大量に発生しない限り、ミツバチの清掃係が対処出来るらしい。見つけ次第巣箱の外へ連れ出して、ボイと投げ捨てる・・・とか。
アカリンダニ・・・。
ヨロヨロのハチを見て、内見をして、ヨロヨロになった僕は、ヨロヨロと巣箱のそばへ戻り、キムキムにーやんに電話をかけた。
巣箱とニホンミツバチの群れを僕に提供してくれて、色々と教えてくれて、見た目はヤクザそのものなのに、とても優しいキムキムにーやんに申し訳ない限りなのである。キムキムにーやんがくれたミツバチのむれを、僕は、全滅させてしまったのである。
キムキムにーやんに、状況を伝えた。
キムキムにーやんは言う。
「まず、間違いなく、アカリンダニだな」
アカリンダニ?
「今年はみんなアカリンダニにやられてる。こればかりは仕方のないことだよ」
キムキムにーやんは、とても優しかった。
アカリンダニ・・・。
アカリンダニはニホンミツバチの器官に寄生するとても小さなダニ。寄生されたミツバチは、羽が変形して飛べなくなる、飛べなくなったハチは、ヨロヨロと地面へと落ち、死に至る。アカリンダニに寄生されたハチの群れは、100パーセント全滅する。
ハチ自体に、アカリンダニに対する対処法はない。人にはある。予防や対処の方法はある。あるにはある。メントールで予防をして、蟻酸という劇薬で治療をするという方法。でも、それすら確立されたものではなく、世のニホンミツバチ養蜂家たちがアカリンダニ対策に頭を悩ませている状況が、ずっと続いているということだ。
キムキムにーやんは言う。
「ハチが残した蜜があるはずだから、蜜を取りなさい」
でも、まだハチが少し残っていて・・・。
「盗蜜される前に、蜜を取らなきゃダメだ!」
他のハチなり虫なりに、ミツバチが遺したハチミツが盗まれてしまうらしい。
数日待った。数日待って、巣箱の蓋を開けた。
ミツバチが冬を越すために貯めた黄金色のハチミツ。完熟のハチミツ。
僕は、複雑な気持ちで、一年間見守ってきた巣箱を解体し始めるのである。