ミツバチの巣箱の中には、一万匹から二万匹のハチがいるはずである。そのハチが天気良いというのに・・・全く姿を現さないというのはおかしい。おかしいのだけれど、おかしいという現実を受け入れたくない。なぜ受け入れたくないのかというと、そのおかしさというのは、悲劇に直結しているからなのであり・・・。
巣箱の内見という行為がある。巣門を少し開いてカメラを差し込み写真を撮る。そうやって、時々ハチや巣の様子を窺う。
そう、様子がおかしいなら内見をすればいい。しかし、しかし、しかし、内見したくない。悲劇は、嫌なのである。見たくないのである。受け入れたくないのである。人間とは、そういう生き物なのである。嫌なことからは目を背けてしまうのである。
数日が過ぎる。
ハチ、出てこないなぁ・・・。おかしいなぁ。
あっ、ハチ、出てきた!
巣門から出てきたハチはヨロヨロとしている。普段なら羽を震わせてすぐに飛び立つのに、全然飛び立たないのである。
ヨロヨロと歩いて、巣箱から地面へとポトリと落下するのである。
落下したミツバチは、地面をヨロヨロと歩いてどこかへ消えてしまった。
飛べなくなったミツバチ・・・。
もう、内見するより仕方がない。内見するしかない。
写真を撮った。スマホを取り出して、見た。
・・・ハチが・・・いない。数万匹のハチが・・・いない。
全滅・・・。
僕は・・・そこらへんをウロウロと歩いた。
ハチがいなくなってしまった。ウロウロと歩いて考えていた。ハチが、全部、いなくなってしまった。動揺していた。
はちみつカフェなのに・・・
はちみつカフェなのに・・・。
看板に、偽りありじゃないか・・・。