成田空港発、奇跡の森林公園行きのバスというものがある。奇跡としか言いようがない。なぜある?なぜだ?乗る人いるのか?
僕が乗った飛行機の成田空港着時間は、19時20分。
奇跡の森林公園行きバスの発車時刻は、19時45分。
間に合うか?間に合うのか?・・・間に合って欲しい。
台北空港を飛び立った直後、機長のアナウンスがあった。
「台北空港の滑走路の混雑のため、離陸が遅れたことをお詫び申し上げます。成田着も遅れるよ。よろしこ」
がびちょす!
あぁ、間に合わない。奇跡の森林公園行き。
まぁいい。奇跡の森林公園行きはあきらめて、ほかの帰り方を模索する。
さて、成田空港に着いた。
出国審査を済ませて、バゲッジクレームで荷物を待つ。
全然出てこないじゃーん!
僕のバックパックが全然出てこない。なかなか出てこない。
あっ、出てきた。
荷物を背負って、税関を目指す。
時計を見る。
「おや?もしかしたら、間に合っちゃう?」
税関審査の列に並ぶ。
ちゃっちゃっちゃっと抜けて、奇跡の森林公園行きへ!
さて、昔の僕はよく税関で引っかかったものだ。どこの国のどこの空港でもどこの港でも、「おまえはこっちへ来い」と呼ばれてあれこれと調べられた。
最近は違う。もはや格が違う。こんなナリでもちゃっちゃっと通れてしまうのである。良かったなぁ、ちゃっちゃっと通れるようになって。
さて、税関のおじさんが言う。
「台湾ですかぁ」
はい。
「色々周っちゃったりしたんですか?」
はい。
「申告するものはありますか?」
ないです。奇跡の森林公園行きに乗るんです。
「金とか、ゴールドの近年か、持ってたりしませんか?」
いやぁ、残念ながら持ってませんねぇ、えへへ。早く早く。早くしてよ。
「バッグの中とかね、見せてもらっていいかな?」
えっ?まさかのぉ、これはぁ、引っかかってる?
えっ?引っかかっちゃってる?おれ?
税関のおじさんが僕に聞く。
「ここには何が入ってるのかな?」
ここにはねぇ、えっと、何だったかな?
あぁ、カメラのレンズを拭き拭きするやつ。
「ここには何が入ってるのかな?」
ここはねぇ、えっとぉ、ライオンの人形。
「ここには何が入ってるのかな?」
もう!絶対間に合わないじゃん!バカ!
税関のおじさんが、僕のバッグの中から何かを取り出した。
「これは?これは何?」
えっ?それ、なんだっけ!!!?
そんなの入れてたっけ!!!?
そんなビニールのパケに入れた怪しいもの!!!?
あっ、それはウーロン茶!
台北のお茶屋でお茶を飲んだ時、余った茶葉をビニールの小袋に入れてくれた。それをバッグのポケットに入れておいたのを忘れていたよ。
税関のおじさんが言う。
「一瞬、ドキっとしちゃいましたよ」
おれもっす。おれもドキっとしちゃいました。
あぁ、おれの後ろに並んでた人、可哀想だったなぁ。だって、全然行かせてくれないんだもん。おれのせいじゃないよ。
そんなわけで、奇跡の森林公園行きのバスを逃した僕は、1時間も待って、準備奇跡の坂戸行きのバスに乗り込むのである。
奇跡の坂戸行きのバスの乗車人数・・・4人。ある意味、奇跡の4人。
赤字だよ、赤字。
赤字なのにバスを走らせてくれて、本当にありがたいっす。
そんなわけで、なんとか無事に帰国しました。