さてさて、ハチがいなくなってしまった我が家。僕が何をしていたかというと、ハチの巣箱作りである。
トントンカンカン、トントンカンカン、木を切ったりして箱を作っているのである。トントンカンカンと書いているが、カナヅチと釘は使っていないので、トンカンという音はしない。インパクトドライバーを使っているので、本当はウィーンウィーンなのである。でも、なんとなく、トンカンと言った方が感じが出たりするような気がしたりして、トントンカンカンと書いている。
何のためにトントンカンカン?
ハチを待つために。
ハチを待つために。と言っても、我が家にいたハチを待つわけではない。我が家のハチは、アカリンダニにやられて全滅、つまり死亡してしまったわけだから、待てども暮らせど戻っては来ない。
新しいハチの群れを待つのである。
ハチの巣箱を作って、ハチが来そうな場所に設置する。この箱を待ち箱と呼ぶ。
そう、待ち箱を作っているのである。待ち箱は多い方がいい。だから、たくさん作っているのである。
たくさん作るのはいいが、設置する場所がたくさんあるわけではない。だがしかし、なんとしても、ハチさんを捕まえなければならない。
ニホンミツバチは冬を越して春になると分蜂する。分蜂というのは、新しい女王が生まれると、古い女王が群れの半分を連れて古い巣を出るというもの。古い巣を出た群れは、新しい巣を見つけて住まなければならない。その新しい巣を作って、不動産屋よろしく、「ここにいい物件がありますぜ!」と誘い込む算段なのである。
しかし、これがなかなか難しいようで。宝くじに当たるような確率のようで・・・ははは。
だがしかし、やらないよりはいい、というより、やらねばならない。可能性が限りなく低くても、やらねばならないのである。
普通は、誘引剤というものを使う。ニホンミツバチはキンリョウヘンという蘭の一種の花の匂いを好む。キンリョウヘンを待ち箱に仕掛けると、捕獲率が飛躍的に上がる。だがしかし、僕には、そんなものはない。高価なのである。とても高価なのである。そして、花を咲かすのが難しい。さらに言うと、蜂の分蜂の時期に合わせて咲かせるのは至難の技らしい。高価なのに・・・である。
だから、僕は、前のミツバチちゃんたちが遺してくれた巣から作った蜜蝋、それだけが頼りなのである。蜜蝋をバーナーで溶かして、待ち箱の壁や天井に塗り付けるのである。蜜蝋を塗ると、ほんの少しだけ捕獲率が上がる。ないよりは上がる。ははは。
そして、待つ。ひたすら待つ。待つといっても、まぁ、ただ放っておくといった方が正しいのだがね。
待ち箱、5セット作った。
扉には、ライオンとハチミツの刻印。すごく可愛いと想う。
僕は想うのである。不動産屋よろしく想うのである。
「どうですか?いい物件、ありますよ」