ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

しゅうちゃんとピカチュウ。

2015-02-10 01:39:30 | Weblog
昔の話。

しゅうちゃんと職場で知り合って、しゅうちゃんは一回仕事を辞めた。まだちょこっとしか仲良くなかった頃のこと。

しゅうちゃんが仕事を辞めてから少しして、僕はしゅうちゃんの家を訪ねた。例のオンボロ過ぎる昭和の貧乏長屋である。
なぜ長屋を訪ねたかというと、しゅうちゃんが辞め際に、僕にこう言ったからである。
「お菓子のおまけのポケモンシールが貯まったら、家に持ってきてくれな」

貧乏長屋にはピンポンなどない。なかったような気がする。イメージかもしれない。
ノックをしたら拳が向かう側に突き抜けそうなドアみたいなやつをノックしてみた。ドンドンドン。返事はない。ドンドンドン。返事はない。あれぇ...いないのかなぁ。

諦めかけた時、ガチャリとドアが開いた。しゅうちゃん!ポケモンシール持ってきたよ!とドアの中を覗く。

そこには、それはそれは、おぞましい光景が広がっていた。
昼間なのにカーテンが引かれ、部屋の中は薄暗い。なんだか、ゴミみたいな家具みたいなゴミみたいなものやなんやかんなが部屋中に散乱している。扉を隔てた別世界。

そして、扉を開けたしゅうちゃんの顔はしゅうちゃんではないような気がした。なんか、しゅうちゃん、顔が変わっちゃった。。。。。

顔が変わっちゃった怖い顔のしゅうちゃんは、おぉ、何?あぁ、ちょっと待って・・・と言って中へ戻った。
そして、ちょっとして、中は入れよぉ!と中へ呼ばれる。

ポケモンシールだけ置いて、走って逃げるべきなんじゃないか・・・と、本気で思った。だって、しゅうちゃんは顔が変わっちゃったんだもん。
でも、あの怖い顔で追いかけられたら、怖すぎてつまずいて転んで・・・逃げ切れる自信がない。

仕方なく薄暗い部屋へと足を踏み入れると、薄暗がりの中に、顔が変わっちゃった怖い顔のしゅうちゃんと、寝起きで髪の毛があっちこっちに跳ねまくった、普通の顔のしゅうちゃんがいた。あれ?あれ?しゅうちゃんが二人いる。

ぽ、ぽ、ポケモンシール、も、も、持ってきたよ。

暴走族にカツアゲをされる中坊のようなビビリ具合で、怖くない顔の方のしゅうちゃんにポケモンシールを渡す。
怖くない方の顔のしゅうちゃんは、おぉ、と一言言ってポケモンシールを受け取ると、ぞんざいにそこらへんに放る。
怖い顔の方のしゅうちゃんは、全てに興味がなさそうに、タバコの煙を薄暗闇に向けて吐き出している。

ちょー怖いけど、おれ、頑張った。頑張ったけど、ちょー怖いからすぐに帰った。

あとから聞いたんだけど、怖い顔の方のしゅうちゃんは、実はしゅうちゃんではなく、しゅうちゃんの友達だった。
その友達ってのは、今や世界で10本の指に入ろうかという、日本が誇る大画家てんみょーやひさし。

関係ないけど、僕の知り合いのエムって人は、画家志望の女の子を見つけると、「おれ、てんみょーやさんの知り合いだよ」と、古典的なナンパをしたりしているんだよ。大体の画家志望の女の子は、ちょっとだけ靡くらしいよ。

しゅうちゃん、おれがあげたポケモンシール、まだ持ってるかなぁ。




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