フェリーで出会ったおじさんが僕に聞いた。
「キミは、どうして旅をするんだ?なんでなんだ?」
僕は、まずは簡潔に答える。
「日常から、脱却し続けなければならいからですよ」
おじさんは、ん?となっている。
僕は補足を加える。
「人間って、どんな生活にも慣れるんですよ。そらか辛い辛い仕事の毎日だとしても、慣れるんです。楽しくて楽しくて仕方がない毎日だとしても、慣れてしまうんです。それが人間だと思うんです」
おじさんは、こくんと頷く。僕は続ける。
「それがルーティンになってしまえば、人はどんな環境にもどんな状況にも慣れてしまえる。つまり、ルーティンになってしまえば、それは退屈でしかないんですよ」
おじさんは、こくりと頷く。僕は続ける。
「だから旅に出るんです。旅って・・・楽しいことよりも辛いことの方が・・・」
そこでおじさんが割り込んでくる。
「旅って辛いよな!」
ガハハハハと笑いながら、さらに言う。
「そうなんだよ。旅って、辛いんだよ」
おじさんは、ガハハハハと笑っている。
その話はそこで終わってしまった。
おじさんは分かってくれたのだろうか。どうなんだろうか。別にどっちでもいいんだけど。
おじさんは、そのあとも色々と僕に聞いて来た。
「いつまでそのスタイルの旅を続けるんだ?」とか、「有機農業はどんな風にやってるんだ?」とか。
おじさんは雄武でひと月、鮭釣りに没頭するらしい。会いに来いと言っていた。
そのおじさんの素敵なところは・・・55歳に見える68歳だというところ。そんなのありえる?おじいちゃんじゃん。
グッドイブニング新ひだか。
今日、僕は、旅人に戻りました。どうぞ僕を、優しく厳しく、受け入れてください。