先日、瓦屋の親方が来てこう言った。
「飯を食いに行こう。おごるよ」
僕はこう答えた。
「ライブ前だから、嫌だ。おれは、ダイエッターだって言ったじゃないか」
僕らは近くのホームセンターのフードコートへ出かけた。
親方はラーメンとたこ焼きセットを頼んで、もう一つたこ焼きとコーヒーセットを頼んで、コーヒーを僕にくれた。つまり、親方はラーメンと二人分のたこ焼きを食べていた。
ライブが終わって、また親方が来てこう言った。
「飯を食いに行こう。おごるよ」
僕はこう答えた。
「おらはダイエッターだって言ったじゃないか。次のライブは12月だ!」
さすがに、もうホームセンターへのフードコートへは行かなかった。
ライブが終わって、去年の暮れよりはだいぶ体重が減った。10キロくらい。
五ヶ月もかけて、無理もせずに健康的に減らしたので、十二分に健康ダイエッターだといえると思う。
まぁ、体重のことなんていうのはどうでもいい。太るものを食えば太るし、太らないものを食えば太らない。
ライブが終わっても、毎日歩き続けてる。
なぜか?それは・・・わからない。歩くのをやめたら、きっともう歩かないからかもしれない、すごーく無理をして歩いてる。昨日も今日も、きっと明日も。
近所を歩くのに、僕はリュックを背負って歩いている。
初めは、無人販売所や農産物直売所で野菜を買った時に、荷物を入れるためにリュックを背負って歩いていた。
だがしかし、夜に歩く時もリュックを背負って歩いている。夜に買うものなどない。つまり、意味もなくリュックを背負って歩いている。リュックの中は空っぽである。突然の雨に備えて、傘が入っている。ほぼ空荷のリュックなのである。
ライブが終わって、僕はおもむろにリュックサックのチャックを開き、2リットルの水が入ったペットボトルを詰める。1リットルのコーヒーが入ったペットボトルも詰める。
リュックサックを計りで計ってみる。リュックサックを背負ってみる。リュックサックを降ろして、1リットルのコーヒーを抜いてみる。ちょっと重過ぎる。1リットルを抜いて5.5キロのリュック。
「よし、一ヶ月毎に1キロずつ増やしていこう」
まるで、アルピニストのトレーニングみたいなことを始めたのである。
2キロの荷物がリュックサックに入っただけで、格段に歩きづらくなるという現実。姿勢が崩れて背中が痛くなるという現実。うーん・・・面白い。うーん・・・興味深い。うーん・・・背中が痛い。なるほど、こういうことなのか。
もしも僕が四国八十八箇所巡りをしたならば、10キロ以上の荷物を背負って1200キロを歩かなければならないのである。このくるいで弱音を吐いていては、全然ダメダメなのである。
瓦屋の親方が僕に聞いた。
「四国、行くの?」
僕は答える。
「行かないと思うよ。辛過ぎるだろ?」
まぁ、そういうことなのである。