エッセイの本を頼りに旅をしているという話を書いた。
たとえば、マーガリンコッペパンを食べたいか?と聞かれたら僕はこう答える。
「別に・・・特には・・・食べたくは・・・ない・・・かな?」
そうでしょ?
だって、マーガリンコッペパンは、今僕の目の前にあるわけじゃないんだから。
苦労して遠くまで食べに行かなきゃいけないとしたら、いらないでしょ?マーガリンコッペパン。いる?
エッセイの本を頼りに旅をしているという話を書いた。
そう、僕はエッセイの本を頼りに旅をしているのだよ。
気温35度オーバーの殺人的陽射しの中を、僕はマーガリンコッペパン探しの旅に出る。
商店街。薄暗い。結構暗い。時間のせいか・・・なんのせいか・・・細い路地の商店街、空いている店が少ない。細い路地は、本当に細い。人が三人はすれ違えないくらい細い。
昼間なのに、細く暗い路地をゆく。
マーガリンコッペパンは、パン屋さんで売っている。
細い路地、パン屋さんを見つける。店の入り口に何種類かのパンが置いてある。パン屋さん・・・ではないのか?パンを店先のワゴンに少しだけに置いている店なのか?といった様相である。つまり、店の中には入れない。ワゴンに置いてあるパンの中から選ぶ。
どれだ?マーガリンコッペパンは?
すごーく小さいパンがある。これは・・・マーガリンコッペパンか?これが、マーガリンコッペパンではなかろうか?と思う。
がしかし、すごく小さいマーガリンコッペパンらしきものは、20個入りの袋みたいになっている。
・・・いくら小さくても・・・20個は食えない。
ワゴンの横にお姉さんが立っている。
綺麗なお姉さんではあるのだが・・・その無愛想さは歴史に残ろうかというほどである。
ワゴンの前でマーガリンコッペパンを探している僕を睨みつけているかのようである。
その状況で僕は言うのである。
「これ、2個、ちょうだい」
お姉さんは「えっ、2個?」「えっ?20個入りなのに?」というような・・・顔をしたかはわからない。少し驚いたような顔はしていたように思う。
店の中へ入って、10個入りのコッペパンの袋を開けて、僕のために2個取り出してくれた。
値段を聴くと、12元。一個6元。1個20円と少し。
僕は、お礼を言う。
サンキュー、どうもありがとう、シェイシェイ。
歴史に残ろうかというほど無愛想なお姉さんが・・・ニコッと笑う。
なんなんだ?シビれるじゃないか。いったいなんなんだ?
究極のツンデレ大国なのか?ここは。
僕は、袋に入ったちっちゃなマーガリンコッペパンを二つ、大事に手のひらに載せながら、薄暗い路地を歩くのである。
いいなぁ・・・ツンデレ。
なるほどなぁ・・・ツンデレ。
こういうことか・・・ツンデレ。
ツンデレって・・・いいもんですね。
東へ向かう列車の中で、マーガリンコッペパンを食べた。
少しずつちぎりながら、口の中へ入れた。
・・・あぁぁ、20個買えば良かったなぁ・・・。
それが、僕が手に入れたマーガリンコッペパンの味。