「警視庁いきもの係」シリーズ(文庫本)です。
書名: (1)小鳥を愛した容疑者〔A6判;文庫本 〕
(2)蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係〔A6判;文庫本〕
(3)ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係〔A6判 ;文庫本〕
著者:大倉崇裕
発行所:株式会社 集英社
初版発行日:(1)2012年11月15日
(2)2017年1月13日
(3)2017年6月15日
ジャンル;ミステリー
このシリーズ、4作目として「クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係」が単行本で2017年6月14日に発行されていますが、2018年7月の現在、文庫本は未だ発行されていません。
書名:クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係
〔B6判;単行本 ソフトカバー 18.8×13×2.4 cm〕
著者:大倉崇裕
発行所:株式会社 集英社
初版発行日:2017 年6月14日
ジャンル;ミステリー
警視庁が、勾留している容疑者が飼っている或いは世話している動植物の留守中の世話を、拘留期間中面倒をみるという、いわば「いきもの係」ともいうべき、総務部動植物管理係の、強面の窓際警部補・須藤友三(すどう・ともぞう)と動物オタクの女性巡査・薄圭子(うすき・けいこ)の名(迷?)コンビによるアニマル推理小説です。
「BOOK」データベース等では次のように紹介しています。
<小鳥を愛した容疑者>
警視庁捜査一課で活躍していた鬼警部補・須藤友三。ある現場で銃撃を受けて負傷し、やむなく最前線を離れることに。数ヵ月後、リハビリも兼ねて容疑者のペットを保護する警視庁総務部総務課動植物管理係に配属され…た途端、今まで静かだったこの部署に、突如、仕事の依頼が次々と舞い込む。刑事時代にはあり得なかった現場、に“驚愕”の須藤。動植物保護だけのはずが、なぜか事件の捜査にまで踏み込むハメになり、腕がなる!?元捜査一課・鬼警部補の前に立ちはだかったもの。それは可愛くも凶暴な小鳥だった--
収録作品:小鳥を愛した容疑者 / ヘビを愛した容疑者 / カメを愛した容疑者 / フクロウを愛した容疑者
<蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係>
新興宗教団体にかかわる事件で警視庁が緊張に包まれる中、都内近郊ではスズメバチが人を襲う事故が連続して発生。中には、高速道路を走る車内に蜂が放たれるという悪質な事例も。平穏な日常を脅かす小さな「兵器」に、窓際警部補・須藤友三と動物大好き新米巡査・薄圭子の「警視庁いきもの係」コンビが立ち向かう。
<ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係>
「人間の視点で物を考えないでください」 動物オタクの天然系巡査・薄圭子のアニマル推理が大爆発! ペンギン、ヤギ、サル、ヨウム……現場に残されたペットの生態から、常識はずれの発想で真犯人をあぶり出す。コンビを組む元捜査一課の鬼刑事・須藤友三も、薄を認め始めるが。
収録作品:ペンギンを愛した容疑者 / ヤギを愛した容疑者 / サルを愛した容疑者 / 最も賢い鳥
<クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係>
2017年7月から連続テレビドラマ化! 大人気「警視庁いきもの係」シリーズ待望の第4弾!
ピラニア、クジャク、ハリネズミが登場する傑作中編3作を収録!
学同院大学で起きた殺人事件の容疑者は、クジャク愛好会の奇人大学生! だが無実を信じる警視庁いきもの係の名(迷)コンビ、窓際警部補・須藤友三と動物オタクの女性巡査・薄圭子はアニマル推理を繰り広げ、事件の裏側に潜むもうひとつの犯罪を探り当てる!? 犯人確定のカギはクジャクの「アレ」!?
収録作品:ピラニアを愛した容疑者 / クジャクを愛した容疑者 / ハリネズミを愛した容疑者
本の発売日は上記の通りですが、2巻目の「蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係」の72頁に、こんな記述があります。
「こうやっておまえと歩くのは久しぶりだな」
薄が横に並んで言う。
「はい。ヨウムの事件以来です。」
この“ヨウムの事件”は、3巻目「ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係」の361ページ以降の「最も賢い鳥」に収録されています。また、2013年1月に光文社から発行されたアンソロジー「近藤史恵リクエスト! ペットのアンソロジー」に同題の作品が収録されています。これらのことから考えるなら、著作者の何らかの意図が働き、「蜂に魅かれた容疑者」と「最も賢い鳥」の発行が逆になった、或いは読者にそう思わせたい何かがあったものと思われます。
表面的な時系列が狂っているのはこの「最も賢い鳥」のみで、他の収録作品「ペンギンを愛した容疑者」、「ヤギを愛した容疑者」、「サルを愛した容疑者」は、「蜂に魅かれた容疑者」の後に続くものとして普通に流れています。
時系列で言えば、「最も賢い鳥」は、シリーズ(1)「小鳥を愛した容疑者」とシリーズ(2)「蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係」の間に位置するものと思われます。
「小鳥を愛した容疑者」の338ページ目の石松のセリフ、
「・・・、あの女警部補殿だ」
更に、「ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係」の13ページ目の須藤のセリフ、
「・・・あの女警部補殿に伝えておいてくれ」
ここにある“女警部補”とは、創元クライム・クラブから2006年2月に発売された(創元推理文庫では2008年12月発売)「福家警部補の挨拶」で初出した、ショートヘアーでフチなしメガネをかけた小柄な、捜査一課の女性刑事のことだと思います。
「ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係」の11ページ目に田丸弘子のセリフとして、
「・・・先週、例のペットショップの事件にかかりきりでしたもんね」
そして同話、13ページ目の石松のセリフでは、
「・・・ペットショップの事件では、うちの者が世話になった」
これらにある“ペットショップの事件”とは、どうやら氏の著作「福家警部補の追及」(2015年4月 創元クライム・クラブ版)に出てくる佐々千尋のペットショップのことではないかと思います。
先の“時系列”を考慮するならば、「ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係」の368ページ目に須藤のセリフとして、
「・・・、十姉妹やサルの事件で見たヤツ・・・」
この“十姉妹”は、一巻目の「小鳥を愛した容疑者」に出現するので問題ありませんが、“サル”は当巻の三作目「ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係」の「サルを愛した容疑者」にでてきます。
つまり、時系列としては、先の論拠を覆すものでありますが、当巻発行時に加筆したものであると考えれば納得できます。
警察が係る物語では、警察官の階級に言及されることが多いのだろうと思います。
我が国の公務員である警察官の階級はどうなっているのでしょうか。警察法第62条に定められているらしいので、確認してみました。
上位から、警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、(巡査長)、巡査の9階級(10階級)が定められています。
巡査長は警察法に定められた正式な階級ではありません。階級徽章から区別され、“階級的地位”として運用されます。
警視総監は、東京都を管轄する警視庁の最高の階級として置かれます。全国の道府県警察本部長が警視監もしくは警視長なのに対して、首都の警邏等を指揮する最高責任者の警視総監は、階級においても特別な地位となっています。
薄(うすき)巡査のホッコリした言動に、この小説がミステリーであることを忘れさせられます。
また、須藤警部補が警察博物館の薄巡査の部屋を訪ねた時には、その前に薄巡査に託された動物に、既に名前がついていることに驚かせられます。
TVドラマを見た後では、小説の登場人物に、ドラマのキャストの姿や声のイメージが被さってくることに、驚いています。
須藤と石松は、ドラマでは元相棒、小説では同期のライバルであり腐れ縁の友人です。同様に、日塔も同期のライバルです。ドラマのための脚本が、小説での設定と変えていると思います。
このドラマは、原作者である大倉崇裕氏が脚本しているとのことです。2017年7月9日~9月10日の二か月間、フジTVで放送されていました。
2017年6月に講談社より発行された「クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係」までを底本・定本としているとのことでしたが、現時点(2018年7月8日)では、文庫本としては「小鳥を愛した容疑者」「蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係」「ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係」の3作が発行されています。
大倉崇裕(おおくら たかひろ)氏は、京都出身の推理作家です。氏の作品は少ししか読んでいませんが、好きな作家のひとりです。
下記リストは単著のみの発行順リストですが、これ以外にアンソロジーも多く著作されています。
【関係先URL】
○ e-Gove 警察法
○ 講談社BOOK倶楽部「ペンギンを愛した容疑者」大倉崇裕さんスペシャル・インタビュー
○ フジTV-警視庁いきもの係