総合病院の勤務医不足、看護士不足、運営資金不足等から、診療科の一部閉鎖や救急指定の辞退、病院そのものの閉鎖が各地で発生しており、国家レベルの問題として平成17年(2005年)より厚生労働省に「医療構造改革推進本部」が設置され、改善策の検討が行われているようです。
総合病院の運営については、勤務医や看護士の必要数を確保した上での病院運営が成り立つ抜本的改革が必要と思われます。
医療構造改革推進本部は三つのプロジェクトチーム(PT)に分かれており、その一つ「在宅介護・療養・早期リハ推進PT」の案では“総合病院と開業医との役割分担・連携のありかた”も検討されているようです。
この役割分担・連携は果たして現実的なのでしょうか?わが町では数年来、総合病院と開業医とのリレーショナルシップ制度が実施されてきています。この制度の失敗原因を真摯に受け止め、実現可能な施策の実行が必要ではないかと思われます。(行政当局は失敗しているとの認識は希薄なようです。)
わが町で地域医療における総合病院と開業医のリレーショナルシップが掲げられ、市民には広報誌でルールを守るよう通知され数年が経過しましたが、現状を鑑みるにキチンと機能していないように思われます。
総合病院と開業医とのリレーショナルシップとは、
①総合病院は、急患の場合を除き、開業医の紹介状を持つ患者のみ受け入れる。
②開業医は、自己が持つ技量と設備で的確な治療が施せそうにない患者を遅滞なく総合病院に紹介する。
③総合病院は治療の結果、開業医に引き渡せる状態に回復した患者を、紹介状を発行した開業医に引き渡し、患者は開業医による治療を継続的に受ける。
④したがって、市民は病気になったときには直ちに総合病院に行くのではなく、近所の開業医の診察を先ずうけるようにすること。
といった総合病院と開業医の役割分担・連携構想です。
しかし、開業医は患者の囲い込みに躍起になっているのか、自己で患者の病状を判断できない場合でも
「暫く様子を観ましょう」
と言って、総合病院を紹介しようとしない方が多く見受けられます。
開業医の方々の意識改革が伴わなければ、行政が意図する方向での医療現場の改善は望めないのではないでしょうか?
==============事例===============
1月9日(金)、手術のため娘が医療センターに緊急入院しました。
仕事の帰りに病院に立ち寄り、娘を見舞うと右頬にガーゼを張り付けた顔で食事をしていました。
「オッ!ご飯が食べれてるとこを見ると、痛くないのかな?手術は早く終わったの?
「病院に来て、検査やレントゲンをとって直ぐに手術してもらった。今は痛くない。ご飯も美味しい。 (^o^) 」
「はい。これ診断書。右顎の下を1センチくらい切って炎症箇所を治療したそうよ。」
女房が手渡したのは、朝出がけにもらっておくように頼んでおいたものです。診断書には『右下顎歯根炎』『向こう4~5日の治療を要す』と記されていました。
「先生、何か言ってたか?『なんでこんなになるまで放ってた』みたいなこと」
と娘に問うと、
「どうして直ぐに来なかった。開業医も直ぐに連絡すればいいのに...みたいなことを言われた。」
「でも、『患者に言われてもネ ( ’ε’ ) 』っていう部分があるんで、今日までの経緯を全部先生に喋った。」
これまでの経緯とは、こうです。
12月上旬に右の“こめかみ”辺りが痛いと言っていたのが、正月3が日には口が開けられない程に痛むようになったようです。右頬も腫れてきて、熱もあると言っていました。医院は5日からなので、頬を冷やすなどしていたのですが、口を開ければ痛みが走るため、既に3日間なにも食べておらず、お腹が空いているのに痛くてご飯が食べられないと、23歳の娘が涙を流して号泣する有様でした。
5日に耳鼻咽喉科の開業医に診てもらいましたが、原因が判らず「歯科で診てもらっては?」
とのアドバイスがあったようです。そのままかかりつけの歯科開業医に診てもらいましたが、やはり判らないとのことで、この日は帰宅したとのことです。
「歯医者さんで無理やり大口開けられたせいか、痛みがひどくなった」
とその晩に言ってきたので、
「耳鼻咽喉科も歯医者もダメならもう内科にいくしかないね」
と答えました。
翌日、近所の内科医で診てもらいましたが、やはり判らないようだったとのことでした。内科医では血液採取をし、その検査結果を聴くために翌日再訪しましたが、
「よく判らないので、腫れがひくまで様子を観ましょう」
といったような医者の判断だったようです。この日は女房が行っていましたので、
「判らないなら医療センターを紹介して下さい。」
と強く依頼し、医療センター歯科への紹介状をもらい、二日後の9日の診察予約をしてもらったそうです。
医療センターの歯科では緊急手術を要するとの判断がなされたようです。炎症がひどくなっているため、切開しなければならない状況だったようです。一番近い場所は右下頬ですが、傷痕が残るため、少し遠回りとなるも顎の下を切開し治療することになったとのことでした。
原因は冠を被せてあった治療済みの右奥歯の虫歯の進行だったようです。
医療センターの医師から、
「どうしてもっと早く来なかった?歯根炎は場合によっては死につながることだってあるんだよ」
「緊急で連絡くれれば二日も待たずに即日診てあげることができたのに」
と言われたようです。
娘は、開業医の紹介が無ければ医療センターには来れないルールだし、診てもらった開業医3科の先生はどなたも紹介しようとする意思はなかったようだと説明したと言っていました。
その返事として、
「これから何かあったら直ぐに医療センターに来なさい」
と言われたとのこと。
このことは、行政が意図する地域医療における病院と開業医のリレーショナルシップが既に崩れ去っていることの証ではないでしょうか。