久しぶりのSFです。書店で手にしたときはもっとファンタジーな内容かと思いましたが、・・・
書名:神様のパズル〔A6判;文庫本 〕
著者:機本 伸司
発行所:株式会社角川春樹事務所
初版発行日:2006年5月18日
ジャンル;SF・ファンタジー
いくら初心者レベルとはいえ、ガチガチの物理学用語や内容で溢れていました。理解するのに知識が・・・!!!久々の苦悩です。
「BOOK」データベースでは、次のように紹介しています。
留年寸前の僕が担当教授から命じられたのは、不登校の女子学生・穂瑞沙羅華をゼミに参加させるようにとの無理難題だった。天才さゆえに大学側も持て余し気味という穂瑞。だが、究極の疑問「宇宙を作ることはできるのか?」をぶつけてみたところ、なんと彼女は、ゼミに現れたのだ。僕は穂瑞と同じチームで、宇宙が作れることを立証しなければならないことになるのだが…。第三回小松左京賞受賞作。
著者、機本伸司氏が宝塚市生まれで、甲南大学理学部応用物理学科卒業であることから、この小説を書こうとした動機が分からなくもありません。
全体的にアインシュタイン博士の「相対性理論」からの引用があり、特にこの小説全体を覆っている「宇宙は無からうまれた」ということに始まる、「宇宙はつくれるか」、「宇宙の作り方」等に関する記述は圧巻です。
現代宇宙論は百家争鳴状態にあるといわれています。そのような時代に、ハードSF小説とはいえ、アインシュタインの相対性理論をベースに立ち位置を固め、情景は実在する山を切り開いた光都に求めるという技は見事なものと思います。
「近未来小説」として、書かれていることが理解できれば、SF好きにはたまらない本だと思います。
この本を読んでいて、二つのことが思い浮かびました。
一つは、アインシュタインの相対性理論です。
「相対性理論」をもっと知りたくて、20年程前に購読した本です。
書名:相対性理論を楽しむ本〔A6判;文庫本〕
-よくわか るアインシュタインの不思議な世界-
監修者:佐藤 勝彦
発行所:PHP研究所
初版発行日:1998年12月15日
ジャ ンル:科学/理論物理学
「BOOK」データベースでは、次のように紹介しています。
本書は、一般的には難しいと思われがちな「相対性理論」を、数式や専門用語をできるだけ使わず、誰でもスラスラ理解できるように解説。「遅れる時間」「双子のパラドックス」「無から生まれた宇宙」など、謎と不思議に満ちあふれたアインシュタイン・ワールドへ、あなたを招待します。楽しいイラストとポイントが一目でわかる図解も満載で、10時間で理解できるように構成された画期的な入門書。
そして、ずいぶん前から宇宙について知りたいと思う気もあり、昭和50年(1975年)頃にはこんな本も購読していました。
書名:ブラック・ホール〔新書 ;BLUE BACKS〕
― 宇宙の終焉 ―
著者:ジョン・テイラー
訳者:渡辺正
発行所:株式会社 講談社
初版発 行日:1975年4月5日
ジャンル:科学/宇宙・天文学
書名:時空と連続〔新書;BLUE BACKS〕
― つぎはぎだらけ の世界像 ―
著者:小野勝次
発行所:株式会社 講談社
初版発行日:1974年4月25日
ジャンル:自然科学/宇宙・ 天文学
これらの本について、「BOOK」データベースはありませんが、ジャケット(カバー)裏に内容概略が記載されています。
<ブラック・ホール>
われわれは、実際にはかなり深刻な問題に直面しているのかもしれない。つまり、たいていの銀河はそれ自体がブラック・ホールと化しているというのだ。宇宙は刻一刻ブラック・ホールに占領され、終末に近づいているのだろうか。
ブラック・ホールを利用したタイム・マシン、ブラック・ホール工学など興味ある話題をまじえ、宇宙と人類の将来にまで思いを馳せた現代宇宙物理学の先端の書である。
※ ブラックホールについては、地球から約5500万光年離れた銀河「M87」にあるブラックホールの撮影に、国立天文台が所属する国際研究チームが世界6か所の望遠鏡を使って成功したと、2019年4月10日に発表された。
<時空と連続>
キリスト以前にもさかのぼるアキレスと亀の逆理(paradox)、新しくはカントルの連続体仮説など、「連続」の問題は古来多くの思索家や数学者を悩ませてきた。集合の濃度間の断絶を論じたカントルの連続体仮説などは未だ人智の挑戦を固くこばんで佇立している。ひるがえってわれわれをとりまく世界を見ても、きのうと今日をつなぐ時間の連続性、こことあそこをつなぐ空間の連続性等々、われわれの施策を投ずべき問題は至るところに埋もれている。
本書は、読者のそうした思索を更に先へ進めるための案内書である。
一人ほくそ笑んでしまうのは、「神様のパズル」に発動されて、「相対性理論を楽しむ本」、「ブラック・ホール」、「時空と連続」を読み返すということを始めたことです。
もう一つは、兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1-1にある「Spring-8」です。
光都チューリップ園にチューリップを見に行ったとき、内部については現役時代の仕事柄少しは知っていたので、内部の見学こそしなかったものの、正門前まで行きました。
女房の出身地もこの近く、上月城跡の近く、後山の山上付近です。 ほぼ岡山県ですね!
歴史資料館前の上月城跡遊歩道入 り口 & R373号より望む城山
SPring-8は、2005年(平成17年)10月から独立行政法人理化学研究所と財団法人高輝度光科学研究センターとの2者体制で運営されています。
この本の「RING-A」=「シンクロトロン+リニアコライダー」という構成は、「Spring-8」を彷彿とさせます。
「スプリング-8」は、「Spring-8(大型放射光施設)+SACLA(X線自由電子レーザー施設)」で構成されています。
そう思いながら読んでいると、やはり、巻末の解説で明かされているように、著者・機本伸司氏は著作のために、Spring-8を見学しに幾度も足を運んでいたようです。
尚、著者が本書を書くとき、日付と曜日が一致していることから、2006年のカレンダーを脇に置いていたのではないかと思います。
しかし、この原稿を書いたとき、2006年は未来であり、“台風19号”と明記したことには無理があったと思います。小説では9月下旬に台風19号が接近しているように記述されていますが、現実には、2006年の台風19号は10月27日から11月4日が発生期間となっています。 「近未来小説だから、まっ、いっか!」
本書のサイドストーリーとでもいうか、“僕”こと綿貫基一の恋愛・女性関係の成行きが気になります。密かに心を寄せるゼミメイトの保積蛍、時間の多くを共有する“天才少女”16才の穂瑞沙羅華。これらの女性との行く末はどうなるのかとドキドキしながら読んでいると、終盤で大どんでん返し! これには参った! やっぱり“ワトスン君”だったのかな?
この小説「神様のパズル」を底本として、内田征宏の作画で漫画化された単行本がFlex Comixレーベル(制作・販売会社)から全4巻(第1巻から第3巻まではソフトバンククリエイティブから、第4巻はほるぷ出版から)刊行されています。〔第1巻;2008年6月4日発売、第2巻;2009年4月9日発売、第3巻;2009年12月11日発売、第4巻;2012年9月12日発売〕
【関係先】
○ スプリング8 大型放射光施設
○ 文部科学省「HPSpring-8 ってなあに?」
○ 国立天文台「史上初、ブラックホールの撮影に成功」
【関連記事】
○ 光都チューリップ園
本 の優れたセレクションでオンラインショッピング。