<今年3月のことです>
( 「この不況は想定の範囲外か?」 2009.02.01を参照)
いま元気な企業には、時代の申し子のような新しい会社、歴史的な老舗企業、経営者が創業家の人で構成されている会社、そうではなく、サラリーマン経営者ばかりの会社と、会社の成り立ちも事業も区々で、“十把一絡げ”で語るのは難しいと思います。
でも、そんな混沌とした中で、一つのことに気が付くのではないでしょうか。『負となってしまったレバレッジ』を『正のレバレッジ』に素早く持ち替え、常に『正のレバレッジ』を働かせる、“事業に対する基本的な理念”を持ち、それを日常的に実践していると言うことにです。
「ぅ~ん 難しいかな?」
「なら、これではどうだろう?」
殆どの会社は一つの事業だけをやっているわけではなく、幾つかの事業をやっています。常に全ての事業が安定的で、景況や事業背景の変化に関わりなく、未来永劫、利益を生み出し続けるとは限りません。
一つ一つの事業をやり始めたときには、それぞれに社会的或いは組織的なニーズと役割があったのではないでしょうか。
例えばアウトソーシング受託サービスを事業としている会社があり、A、B、Cという3つの事業をやっているとします。
○ A事業は時代背景的、社会的にニーズの高さを感じて始めた会社創業の事業。
○ B事業はA事業の取引先各社にあった専門的な同一の業務、例えば情報システムの運用管理業務を移管・集約した事業。
○ C事業はA事業の取引先企業内に散在する庶務的な雑多な業務を、取引先各社から要請され引き受けた事業。
創業以来、これらの事業を順次追加し、経営を拡大して来たが、事ここに及んでA事業のニーズが殆ど存在しなくなり、取引先からの注文も“お付き合い”程度となっている。ここ数年はコストが嵩むだけで全社の収益を圧迫するようになって来た。C事業は収支トントンの状態で、決算で黒字を維持できているのは、B事業が生み出す収益があればこその状態になってきた。
このような場合、あなたがこの会社の経営者だったらどんな手を打ちますか?
これは一つの考え方で全てのパターンに当てはまるものではありませんが、イノベーションやリストラクチャリング(従業員の首切りではなく、「事業構造の再構築」という本来の意)を日常的な経営活動としている会社なら、A事業の役割が終わったことを真摯に受け止め、取引先と業務差し戻しの協議をして事業撤退の方向性を出し、その事業部門で働く従業員については自社の別部門への配置転換や取引先への出向・転籍など、従業員の職場確保を実施します。
良くないのは、創業事業だとか、永年継続してきた事業だからということに拘って、小手先の収益改善策としての投資をし続けることです。わが国の経営者の多くにこのケースが見受けられます。
「事業撤退とか廃業ということは、この事業を預かる者として言えない。」
という言葉をよく聞きます。如何にもパワフルで日本人の心情に響く言葉のように感じますが、玉砕的にも思えます。
一方、C事業のような“鳴かず飛ばず”の事業も、よく見るとロングテール事業である場合が少なからずあります。このような場合、収益性が低いとの理由で撤退・廃業すると、とんでもないマイナスの影響をもたらすことがあります。
ロングテール事業の顧客は会社のファンであり、大きな取引先企業からは発せられないような要求を出してきます。このニーズに丁寧に応えることによって、B事業へのシナジー効果や大きな取引先企業への新たな提案活動のヒントがもたらされる場合が多々あります。
ダラダラと取止めもなく喋ってしまいましたが、経営にとって重要なのは「変化のスピーディな見極め」です。「決断」と「タイミング」です。
○確たる根拠もない「したり顔」での拘りを排除し、自然体でスピーディに転身が図れる
○「やっていいこと」「やってはいけないこと」「何をしなければいけないか」を社会的、一般的な常識と良識に基づいて判断する
○何をやるにしても、『錦の御旗』は存在しないということを知っている
○取引先と従業員を大事にし、イノベーションとリストラクチャリングを日常的に考え、効果的に実施する。そうすることに特別な判断や勇気を必要としない考え方、企業風土が根付いている
そんな会社が景況の変化に強い会社だと言えるのではないでしょうか。
【参考】
ITproに日本マクドナルドCEO原田氏のインタビュー記事が掲載されています。参考になると思います。↓↓↓
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20090424/329128/