なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

PMRのビデオ

2020年04月02日 | Weblog

 久しぶりにCareNeTVの「Dr.須藤のビジュアル診断学」を見返している。10年以上前の放送になるが、PMRの患者さんの治療前後のビデオが挿入されているのでわかりやすい。

CareNeTV

Dr.須藤のビジュアル診断学
第8回PMRと類似症例

80歳男性 発熱・右肩痛
現病歴:
・8日前より発熱37.8℃あり
・3日前近医を受診。LVFXが処方された。当日採血施行。
・症状改善なく、検査にてCRP15.1、WBC10000。尿一般検査:潜血・蛋白・糖は陰性。
「発熱、咳嗽、関節痛」の原因精査のため紹介された。
身体所見:
・BP180/98、P78/分、体温38.0℃
・眼瞼結膜 貧血・黄疸なし
・浅側頭動脈は両側触知し圧痛なし
・咽頭発赤なし、頸部リンパ節腫脹なし
・心音:清、呼吸音:右下肺野にわずかにwheezeのみ
・四肢:右上肢挙上困難、下肢浮腫なし、関節腫脹なし
(ビデオ供覧)
・半年前まではテニスを楽しむほど活動的で、妻とよく散歩に出かけていた。
・3か月くらい前に両足のつけ根あたりに痛みを自覚するようになり、妻との散歩を休むようになった。また歩行時に代替の疲れを自覚するおうになっていた。
・3週間くらい前から右肩の痛み、挙上困難あり、トイレで立ち上がる時に手で支えなければならない。寝返りが不自由になっていた。
・1週間前より右肩・上肢痛に津和得て発熱を伴うようになった。
検査所見:
・WBC9590、Hb12.7、Ht39.8、血小板37.3万
・CRP13.25mg/dl、ESR109mm/時
・血液生化学・尿検査異常なし
・血液培養2セット陰性
・抗核抗体陰性、RAテスト陰性
・甲状腺機能正常域、筋原性酵素正常域
・心エコー疣贅なし、TR中等度、EF66%
・腹部エコー異常なし
・上部消化管内視鏡:胃亜全摘出後
・便潜血陰性

臨床経過
・各種検査より感染症、悪性腫瘍は否定的と考え、リウマチ性多発筋痛症の診断でPSL15㎎/日を開始。開始当日夕方より劇的に筋痛の軽減を認め、翌日よりすみやかに発熱は焼失。
・PSL15㎎開始翌日
「先生はあんなこといってたけど、半信半疑だった。でも朝飲んで夕方にはウソみたいに痛みがはなくなって驚いた。痛みは10から2くらいまでよくなった。」
・PSL15mg開始3日目
「首を回すのが楽になった。良くなって初めてわかった。(以前は首を動かさず状態全体を回旋していた)

 

赤沈>100mm/時となる疾患
・悪性腫瘍(多発性骨髄腫)
・結核
・亜急性甲状腺炎
・感染性心内膜炎
・骨髄炎
・リウマチ性多発筋痛症・側頭動脈炎
・血管炎症候群

リウマチ性多発筋痛症(PMR)の臨床像
高齢者に多く、50歳以下はまれ
頸部・肩・腰部・股関節・大腿・時に体幹に筋痛
典型的には突然の発症
筋痛は対称性で肩から始まる
夜間痛のため起き上がり、着衣困難
体重減少、食欲不振、うつ病
他覚的には関節炎の所見は認めない
著明な赤沈亢進
少量ステロイド(PSL10-20mg/日)が著効する

PMRの診断・治療上の注意
Key word
高齢者が「全身が痛い」と訴えてきた(頸部・肩・腰・大腿)
・貧血、体重減少
・赤沈の著明亢進(50mm/時以上)
・抗核抗体・RA陰性
側頭動脈炎の合併
・眼症状の出現に注意する
・失明は不可逆的で治療は反対側の失明予防
悪性腫瘍、感染症の否定が重要
PSL15㎎であっても免疫抑制による合併症がありうる
・帯状疱疹などのウイルス感染、結核

一見PMR症例
 思い込みは危険!
 どこか違う、何かが変!

79歳女性 後頸部痛
・3週間前より発熱、咳嗽
・1週間前より足の筋肉が痛い
・3日前より後頸部痛があり、痛みのため首が回せない
・起床時には首から頭にかけて硬くなり自分では起き上がれず
・体温37.8℃、痛みで頸部回旋ができず。頸部圧痛軽度。
・WBC8280、赤沈83mm/時、CRP11.54
・頸椎単純X線:C5/6の軽度の椎間板炎?ヘルニア?
・MRI:軽度脊柱管狭窄
・入院4日目に左浅側頭動脈の軽度圧痛
・入院6日目より左足関節炎ありNSAIDs開始
・入院8日目側頭動脈生検施行
・入院12日目病理では側頭動脈炎の所見なし
・NSAIDsにて症状改善

環軸関節偽痛風Crowned dens syndrome
・頸椎CTにてC1/2関節(環軸横靭帯)に石灰化
・両膝関節半月板、手関節などで石灰化あり偽痛風と診断

68歳女性 全身が痛い
・2日か月前から体幹からはうぶの痛みを自覚し、寝返りや起き上がりに困難を自覚
・38℃の発熱あり、5kgの体重減少
・来院時には頸部、廃部、両肩の痛み
・診察上は関節炎の所見なし、筋肉の圧痛なし
・WBC4700、Hb8.5、Ht26.1、赤沈147mm/時、CRP4.16
・当初はリウマチ性多発筋痛症の可能性を考えた

臨床経過
・胸部単純X線 転移性骨腫瘍疑い
・腹部US・CT・上部消化管内視、鏡異常なし
・便潜血陰性
・乳腺・甲状腺エコー異常なし
・骨スキャン 全身骨の転移性腫瘍疑い
・乳腺外科医にコンサルト
詳細な触診にて腋窩に小リンパ節腫脹あり

Occult breast cancer
・単純X線にて全身骨の転移性腫瘍
・原発巣検索では乳腺に腫瘤を認めなかったが、腋窩リンパ節より乳癌と診断

73歳男性 肩痛、頸部痛、嚥下痛
・4日前の起床時より両肩の痛み
・3日前から首筋、嚥下痛、背部痛
・前夜には両肩痛、頸部痛が安静時にもあり動かせないほどとなった
・激痛のため安静が困難で顔をしかめる
・嚥下痛も自覚
・両肩、背部に圧痛なし
・WBC10800、ESR65mm/時、CRP10.61
・胸部X線異常なし

咽後膿瘍Retropharyngeal abscess
・詳細な診察にて頸部右側に圧痛
・耳鼻咽喉科入院にて切開排膿

PMR類似症例
・79歳女性 後頸部痛
→環軸関節偽痛風Crowned dens syndrome
・68歳女性 全身痛、赤沈亢進
→乳癌(occult breast cancer)の多発骨転移
・80歳男性 全身痛
→腸球菌菌血症 ペースメーカーリード感染
・70歳男性 不明熱、近位筋痛、筋力低下
→前立腺炎
・70歳男性 右肩痛、頸部痛
→咽後膿瘍Retropharyngeal abscess
・45歳男性 不明熱、赤沈>100
→亜急性甲状腺炎

・いずれの症例も「全身痛、focus不明の発熱、赤沈著明亢進」などから当初PMRを疑ったがのちに否定された
感染症、悪性腫瘍を否定することは非常に重要である

51歳女性 発熱
・入院10日前より発熱、左頸部リンパ節腫脹あり2か所の医療機関で抗生剤が投与されたが高熱が持続
・咽頭炎の診断で耳鼻科に入院となり抗生剤が投与されていたが無効のあめ総合内科に依頼
・39-40℃以上の発熱。両側頸部、腋窩、鼠経リンパ節腫脹。心音清。肝脾腫なし。
・白血球9000、CRP7.11、ESR35mm/時、ANA・RAは陰性、HIV・EBV・CMVは陰性。
・各種培養、画像検査で異常を認めず、ツ反陰性。
経過
・病歴から仔猫の飼育歴あり、猫ひっかき病が疑われたためAZMを投与した→無効
・組織急性壊死性リンパ節炎(菊池病)を疑い左顎したリンパ節生検を志向→反応性炎症のみ
・トキソプラズマ抗体陰性
・菊池病に準じてPSL60㎎より漸減を開始したところすみやかに解熱したが、10㎎まで減量したところで再度発熱
Double Quotidian Fever
 マラリア?
 粟粒結核?
 皮疹に気づいた(サーモンピンク疹)
診断:成人Still病
(血清フェリチン正常域だった)

 

コメント
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