なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

10年続く左下腹部痛

2020年04月26日 | Weblog

 金曜日の当直医は外部の病院からの応援医師(バイト)だった。土曜日の午前0時半に連絡がきた。午後11時に腹痛で受診した50歳男性を入院させたいという。

 何でも10年前から、同様の左下腹部痛が断続的に続いている。1週間前にも大学病院の救急を受診して、造影CTや血液検査を受けて、異常なしとされていた(鎮痛薬のみ処方)。当院でも救急外来で単純CTと血液検査を行ったが、異常はなかったそうだ。

 その日はたまたま当地(といっても隣の市)に来ていて、仕事が終わって自宅に戻ろうとした午後6時に腹痛が始まった。最寄りのコンビニの駐車場で持参の鎮痛薬(その時は歯科でもらったカロナール)を2回飲んで様子をみていたが、腹痛がひどくなって当院の救急外来を受診した(隣の市には小規模な私立病院しかない)。

 

 土曜日の日直で病院に来てから、病室に行って診察した。受診後は腹痛が自制可能となって、点滴だけをしていた。左下腹部が痛いというが、腹部は平坦・軟で圧痛はない。腹部の奥の方が痛いという。肛門痛ではない。

 朝方入院した肺炎の患者さんを診たりしているうちに、左下腹部痛が悪化して顔をしかめていた。腹痛時は1)アセリオ1000mg点滴静注、2)ソセゴン15㎎筋注(静注も可)の指示だが、ちょっと段階的に試してみたくなった。

 まず効かないとは思ったが(鎮痙剤の)ブスコパン1A静注をして、まったく効果なし。次にアタラックスP点滴静注をして、やはりまったく効果がなし。アセリオ1000㎎点滴静注も、カロナールを2回内服して効果がなかったことから効かないかもと思ったが、その後は軽減したようで、ソセゴンは使用しなかった。

 

 10年前に発症した時は、近くの病院から大学病院に紹介された。その後、労災病院に紹介されたり、医療センターに紹介されたりしていた。正確にはわからないが、腹部CT・大腸検査・血液検査が行われて、異常なしとされた。

 1週間のうち2日くらいは軽快している日があるが、それ以外はずっと断続的に痛い。夜間に痛くて横臥できず、座位になったり壁に寄りかかって寝るそうだ。痛いときはじっとうずくまるのではなく、動き回る。発熱は伴わず、胸痛や関節痛はない。便通異常はなく、粘血便はない。

 さまざまな大病院を受診しても原因不明なので、自分で市販のロキソニンを飲んで経過をみていたそうだ。1週間前は腹痛がひどく、別の大学病院を受診したのだった(これまで行ったことがない病院に行ってみたということ)。結果は同じく検査で異常なし。

 当院での血液検査で白血球が9000と増加していて好中球増加になっていた。CRPはまったくの陰性。生化学検査は正常域。白血球増加は意味があるのかもしれず、CRPは3日後に上昇するかもしれない。

 建築業の自営で、妻子もいて、社会生活はきちんとされている。診察した印象では心因性の問題ではないと思われた。こじれた過敏性腸症候群でも、炎症性腸疾患でもないようだ。

 好酸球性胃腸炎や自己炎症性疾患くらいしか思い浮かばず、さっぱりわからない。決まった病院を継続受診して、稀な病態も考慮してもらわなければ、検査して異常なしの繰り返しになる。

 患者さんの居住地から一番近い総合病院は、医療センターになる。消化器内科よりは総合診療科の方がいいかもしれない。遠方で実際の受診は無理だと思うが、千葉大総合診療科や獨協大総合診療科を受診したら、どのような診断がなされるのだろうか。

 

 

 

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