昨日の木曜日の午前中は救急当番をしていた。3つ隣の町の救急隊から、左下肢痛を訴える82歳女性の搬入依頼があった。
骨折があるかどうか、まず確認しなければならない。当院は今月で整形外科常勤医が不在となり、整形外科は実質閉科となる。大学病院からの外来診療応援は続くが、入院治療はできない。
2月に2人いる整形外科医のうち若い先生が別の病院に移動して、その後は整形外科の手術はなくなった。残った先生が開業医への紹介状書きをしていたが、今日まででいなくなる。
転倒した後ですかと訊くと、救急隊員はしていませんと返答した。大腿骨頸部骨折ではないかと訊くと、骨折ではないようだという。左足関節が腫れているというので、発赤・熱感の有無を訊くとあるそうだ。
住所からは地域の基幹病院の方が圧倒的に近いが、受け入れできないと断られていた。別の救急搬入が続いているのだろう。蜂窩織炎・関節炎(結晶誘発性)なら当院でも診られるが、直接来てみないとわからない。受けることにした。
搬入された患者さんの左下肢は外転して、右下肢と比べて明らかに短縮していた。大腿骨骨折だった。左手関節(橈骨遠位端)も腫脹して痛みがある。(左下腿から足関節部にかけて発赤・腫脹・熱感があり、蜂窩織炎もあった)
患者さんに訊くと、前日の夕方に自宅で転倒して、その後から左下肢の痛みで動けなくなったという。救急隊員に訊かれた時は、その日の転倒についての質問と思ったのだろうか。結局、普通に転倒・骨折の高齢者だった。
当院での入院治療はできない。まずX線検査を行って、骨折を確認して搬送になる。左大腿骨は頸部骨折・転子間骨折の近位部骨折ではなく、その下の転子下骨折だった。(即搬送ありきなので、点滴や採血はしなかった)
整形外科医に連絡して、最後の仕事?をしてもらった。左大腿骨骨折は明らかで、左橈骨遠位端もちょっとわかりにくいが骨折がある。大腿骨(転子下)骨折+橈骨遠位端骨折(+下腿蜂窩織炎)という、典型的な症例だった。
あとはやりますということで、基幹病院の整形外科に連絡して、搬送を受けてもらっていた。
もう少し救急隊員にうまく訊けば、骨折として手術のできる病院に直接搬入してもらえたはずだが、X線で確認してからでないと実際は難しいかもしれない。救急隊員が骨折かどうかの判断ができるように丁寧に訊いたつもりだったが、まだ修行が足りないということか。
整形外科の先生は、来月から県内の別の地域の基幹病院に勤務する予定だ。いったん整形外科医が不在になった後に、当院に赴任された。外傷による四肢骨折の手術が大好きな先生で、基幹病院よりも骨折手術の症例数が多かった。当地域の骨折診療(手術)は基幹病院でしかできなくなった。