Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

博士と彼女のセオリー

2015-03-13 22:31:00 | その他の映画・ドラマ・舞台

このロケはバッキンガム宮殿ではなくて実はハンプトン・コートの庭です。私も行ったことある、ロンドン郊外のヘンリー8世で有名な宮殿。


よりにもよって「イミテーション・ゲーム」を見た午後に、こちらも見たのです。普段はひとつひとつの余韻を楽しめないからしないんです。が、20世紀中頃のイギリスが舞台、実話、天才が主人公、と似た要素があったためか(?)、続けて見た弊害はあまりありませんでした(ほっ)。

でも結果としてこの2作を比べて色々考えました。

なぜ「博士と彼女のセオリー」がBAFTA、アカデミー賞で強く、「イミテーション・ゲーム」はノミネートされたけど思ったよりも受賞がなかったか。特に主演男優賞。

エディの演技は、ホーキング博士の姿勢、動き、表情、感情をリアルに、実は普通の人にはできないであろう職人技で自然に見えるように演じてた。

しかしベネディクトも、やはり普通と違うチューリング博士を、観客が愛せるように創造していたと思います。亡くなった人だから、本人の立ち振る舞いなどわからないのに、暴力に対する身体の縮め具合とか、他人との関係を結べない分、存在の空間が狭いところとか、説得力がありました。

違いは、ホーキング博士は余命2年の宣告後、もう50年くらい生きて研究して人生の成功者になっているのに対し、チューリング博士は、国家への功績も極秘にされ、犯罪者とされ、薬物治療を強いられ、自殺に追い込まれた。犠牲者もいいところ。

前者のメッセージは「生きてる限り人生には希望がある」で、
後者は「天才の業績も、セクシャルマイノリティも、国家と法の犠牲となった」。

もう自分で書いてて、広く一般に人々が好みそうなのは決まってるわ?!と思えます・・・・(涙)



それと、どうしても比べてしまうのはBBCテレビ映画の方の「ホーキング」でした。10年以上も若いベネディクトが演じたのは、エディ版よりもホーキング博士の若い時代にスポットをあて、研究功績を中心に描いていました。

「博士と彼女のセオリー」は発症前(17歳で大学入学、ボートに乗ったのは2,3年目/wiki)から、ナイト辞退が1990年代後半(本人が2008年にその時点で10年以上前に辞退したことを明かしたので、2006か07年)なので、エディは20~65歳くらいまでを演じたのですね。同じことは奥さんのジェーン役のフェリシティ・ジョーンズにも言えます。

ベネディクト版はノンフィクションながらも、若い時代だけのおとぎ話のようでもあったのに対して、エディ版は主に夫婦の関係の変化を見せたので、博士の学業以外の人間性を初めて見せてもらったような気がします。

博士が2度結婚したことを初めて知りました。それでこのブログ書くのにウィキを見て、2度目の奥さんとも2006年に離婚していたことを知りました。脳から筋肉に全ての命令が届く人間でも1度も結婚しない人も多い昨今、そんな忙しい生活もあったのですね?!体調の悪化で声を奪われてから、1分1語から4語を表現できるようになったのを喜んでいたようなテンポだったのに!仕事の功績を残しているだけでなく、プライベートでもなんて色々と?!

エディの演技よりも博士の生活の方に心を奪われてしまいましたが、きっとエディの演技がうますぎてリアルに感じることができたせいなんでしょう。



しかし、博士の病気はリアルながらも、美しい映像なんです。女王に招待されたバッキンガム宮殿の庭園で始まり終わるこの映画、奇麗すぎる!私には珍しく、この映画に関してはそこが気になります。いつもは映画を美男美女と美しい風景を楽しみに見るような私なんですけれど、宮殿も女王様も大好きなんですけれど、エディにもフェリシティにも何の文句もないんですけれど。

たぶん賞をたくさんもらった作品なので、期待が大きかったせいでしょうか。



イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

2015-03-13 18:27:00 | ベネディクト・カンバーバッチ
今日から日本の一部の劇場で公開が始まり、全国で順次公開なのでネタばれほぼなし。

プロデューサーのテディ・シュウォーツマンはグレアム・ムーアの脚本を読んで「実に面白かった。歴史的に重要な事実がたっぷり盛り込まれ、魅惑的だが正当に理解されていない人物が主人公だ。(略)セリフは高度に様式化されていた」「これは世界が知るべき物語だ」と、製作に乗り出した。/公式ページのプロダクションノートより

彼の思いは、これを読む前に映画を見た私にとてもよく伝わってきました。

敵国ドイツに知られては裏をかけないため、その存在そのものが極秘だったエニグマ解読作戦。その解読に成功し第二次世界大戦でイギリスの勝利を導きながらも、人間関係を築くことが苦手だったために敵をつくり葬られたアラン・チューリング。彼のことと当時の戦争作戦のことが、外国の一般人である私にも、よ~~くわかりました(チューリング・マシーンの仕組みを除く)!

軍事歴史や数学のことは難しそうで取っ付きにくい題材なのに、こんなわかりやすい話を書いてくれた脚本家グレアム・ムーア。(彼は「The Sherlockian」というミステリー小説を書いてて親しみが持てる)さすがのアカデミー脚色賞です。

そしてやっぱりベネディクトのチューリングがいいキャラだった。殴られればワッツ先輩、自信のほどはシャーロック、ツイードの服はピーター・ギラム。

シャーロックを初めて見た時、まずキャラとしてのシャーロックと作品としてのシャーロックを好きになって、それから中の人へと興味が動いていったのを思い出しました。チューリングもそれくらいかわいい。

だから彼の功績を世の明るみに出して後世に伝えなくてはと思えてしまう。まんまとプロデューサーの意図どおりに感情が動きましたです。

台詞はそんなに多くないと思うんです。だからと言って覚えてるわけでもないんだけど、現代で言うアスペルガーらしき、人の言葉を文字通りにしか理解できないチューリングが、仕事チームに自分の気持ちを伝えようとする行動、理解できないジョークを丸暗記、ジョーンを守ろうとつく嘘、などなど、彼の言葉がとても深く響く。

話は戦時下の国家機密活動だし、スパイ絡むし、チューリングはコマンダーのプライド逆なでして恨み買うし、ゲイなのにジョーンと婚約するしで、相当ドラマチックなんだけど、感動的に盛り上げる魂胆が見えない上品なつくりだったのが、かなり気に入ってます。


先日アカデミー賞にてグレアム・ムーアの「人と違っててもいいんです」というスピーチがとても好評でしたが、やはりこの映画を見てから聞けたら、もっと感動してただろうなあ。




ところで、この「イミテーション・ゲーム」が製作決定した頃に、脚本のグレアム・ムーアを検索しました。彼のウェブサイトを見つけて、彼の著作がシャーロック関係だったことに「お!」と思い、有名な仕事はなかったけど、「軍事機密に葬られた数学の天才」という難しそうなテーマを、彼のような若くてサイトを見る限りポップカルチャーのセンスのあるアメリカ人が書く、ということを知り安心したのを覚えています。ところが、あのサイトをまた見たいと思って探したんですが、彼がアカデミー賞をとって有名になって情報が増えたせいなのか、見つからないんです・・・むう・・・。