Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

「ハムレット」を音読する

2016-06-02 23:00:00 | その他の映画・ドラマ・舞台

日比谷図書館のある公園から帝国ホテル(右のビル)を見るのが好き

先日「アガサ・クリスティ」の講座に参加した「日比谷カレッジ」で、今度は河合祥一郎先生の「『ハムレット』を音読する ー名作を正しく理解するために」を聴いてまいりました。おもしろかったです!



原文の、1行中にある音節の強弱のリズムを教えてもらいました。
このリズムのある台詞が、言葉の意味だけでなく音楽のように聞こえる演劇芸術だったんだなあ!とやっとわかりました。それがあるからこそ演劇らしい台詞回しというものに聞こえるのですね。

ちなみにハムレットはそのリズムのある韻文と、ない散文とが混じっています。

韻文の行数は決まってませんが、とにかく1行目の音節の強弱の位置が、2行目以降もずっと基本的に続くのです。続くのもシェイクスピアすごいですけど、例外的な崩しもところどころ出てきて、そこさえも俳句の「字あまり」のように余っちゃったというわけではありません。俳優がセリフをためる間として開けてあるとか、1行の途中でバルナードの台詞が終わったら間髪入れずに途中からホレイショーが続きを言って1行としては強弱リズムは崩さないとか。

ですからこのリズムがあるおかげで、ト書きがなくても俳優の出入りの流れはわかるのですって。そんな仕組みだったのですね~

行が弱で終わるか強で終わるかで、それを言う役の心情も決まっているのですって。弱だと不安・懐疑、強だと意思も強い・・・(だったかな?ちょっと記憶が怪しい^^;6/6追記:参加されたhedgehogさんのコメントにより、合っていたことが確認されました。先生の例としてTo be, or not to be, that is the questionだと最後の音節は弱で迷いを表しているが、もしこれがquestと言う単語だったとすると強となり断定となる、というように)

台詞は意味だけでなく、こうした型に沿って作られているため「最近のカンバーバッチのなんて切った張ったは滅茶苦茶な事してました。ケネス・ブラナーは舞台も映画もやりましたが、映画は原作通りに台詞を入れると芝居がかりすぎてしまうので変えてありせっかくの韻文が崩れてしまっています。」

なるほど~と思ったのが、オフィーリアの台詞で、ハムレットとの会話は散文で台詞も短いのですが、ハムレットが去り長い独白になると韻文になります。それは当時舞台では女性の役を少年が演じていたため、下手でも韻文は型なのでその通りに台詞を言えばなんとかなったからだそうです。女王様などえらい人の前で大変なことにならないための手段だったのか~~~!

などという知識とともに河合先生がハムレットの台詞を英語と日本語で読んでくださいました。強弱で読むと、ホントにシェイクスピアでした。多分先生は暗記しておられるでしょうけれども。

強弱リズムの入門編としてマザーグースのお歌もみんなで歌ったし、時間がオーバーしてるのに質疑応答もありましたし、講座後には出口で著書販売と先生のサインの机も用意されていて楽しかったです。NHKでやったハムレットのテキストも家から持っていけばよかったな~





*6/3追記

To be, or not to be, that is the question:
私にとって目から鱗だったのは、この文の解釈でした。
「この簡単な単語beの意味はいろいろに解釈される」と何かで読んだことがあって、確かに広くいろいろな意味にとられるよな~と私も鵜呑みにしてしまっていたんですね。しかし、その意味はその次の4行にちゃんと詳しく具体的に書いてあったのです。それは、2と3行目にbeの内容として「生きる」が、そしてOrで始まる4と5行目に「死ぬ」という内容のことが。
よく考えたら、「初めに言った謎めいた内容を後で簡単にわかるよう解説という手法はシェイクスピアはよく使います」と河合先生がおっしゃった通り、原文では意味ははっきりしているので、私が昔読んだ「いろいろに解釈される」というのは日本語訳ではということだったのかなあ。あ~もう、人生ってこうして思い込みの知識をどれだけ引きずっているんだろう。