気づいたら、「英国ロイヤル・オペラ・ハウス2016/17シネマシーズン」というタイトルで、英国ロイヤルオペラとバレエの録画を日本の映画館で見られることになっていました。
ナショナル・シアター・ライブのオペラ/バレエ版ですね。
イギリスに住んでいたなら、ロンドンのコベントガーデンでの演目をイギリス全国の映画館で同時上映するのを見るのも可能なプログラムで、それは映像とはいえ生中継ですから、さぞかしライヴ感あふれたものでしょう。NTライブではベネディクト・カンバーバッチの「ハムレット」もやりましたね。
日本では時差もありますし、録画されたものオンリーとなり臨場感は激減とはいえ、それでも見られるチャンスありというのは嬉しいです!文化的な環境!
良い点は、
例えば私がきのう行った「ウルフ・ワークス」は今年の2月に上演されたものでした。その時差2ヶ月以内!最新!
それに、ライブ時にも一部は流されているのかどうかは不明なのですが、今回は元ロイヤルバレエプリンシパルのダーシー・バッセルともう一人の美女による解説、振付師と音楽家のインタビュー、ヴァージニア・ウルフの紹介、ウルフ作品のマギー・スミスによる朗読もついていました。もちろん日本語字幕つき。
ちょっと嬉しくない点は、
料金が今回は3600enと、一般映画の倍の特別料金・・・それだけ日本で配給料金がかかるのかなあ・・・オペラハウスでも桟敷席ならそれくらいで見られるけど・・・とか、行けもしないのに比べちゃうからいけないのかな。せめて割引料金の日には、一般の割引額と同額割り引いてくれたらいいのになあ!
それと1日に上映は1回、夜のみ。オペラハウスでもマチネはあることですし、昼にもやってもらえたらお子さんが小さい親御さんや、映画館から自宅が遠い人でも都合がつくと思うんですよ。理想形としてね。
さて今回の「ウルフ・ワークス」は、作家ヴァージニア・ウルフの3作品にそれぞれインスパイアされた3分作です。舞台もシネマも2回休憩あり。私はちょっとオペラハウス気分で、休憩時間にアイスクリームを食べました。シャンパンは売ってなかったけど(笑)。
特筆は、元プリンシパルだったアレッサンドラ・フェリが50歳代で復帰・主演していることです。そこにスティーヴン・マクレーやサラ・ラムらの中心的プリンシパル、新プリンシパルの高田茜、ベテランのエドワード・ワトソンに加えてナショナルバレエ・スクールの可愛い生徒さん達と幅広いキャリアのキャストです。
これが、時間、回顧、永遠の命などの作品テーマと、ウルフ自身の50歳代での自殺という生涯をよく表現していました。
フェリは若い頃から人気でしたが、私は今回、初めて感動しました。若いダンサーに囲まれて、同じような肉体がデザインの一部のような衣装をつけてステージに立つ。それがこの演目に必要なこととはいえ、それを受けた精神性なのか、若くない肉体も美しかったです。
(一昨年引退公演を見たシルヴィー・ギエムも是非また見たい。)
フェリ以外は全員若いのかと思っていたら、ちょっとおじさま風の男性ダンサー(でも美しいおじさまですよ)もいて、後でデジタルキャスト表を見たら、エドワード・ワトソンだったのもだから驚きました。嬉しかった。
もう一つ嬉しかったのは、いえ、私が嬉しがるのは変なのですが、日本人プリンシパルの高田茜が、コンテンポラリーでも見劣りしなかったことです。
高田さんは脚も長いので、下半身の線も露出してスカートでごまかせないコンテも映えるのです。しかも振付がクラシックならポワントで脚がググッと長く見せられますが、コンテは足裏を床にピッタリつけるポーズも多いから体型がこれまたごまかせないです。
衣装といえば第二部「オーランドー」が良かった。やはり16世紀から物語が始まるということで、エリザベス朝のカラーやブルマーやコルセットをモチーフにしたモダンな衣装が、金とベージュと黒の抑えた色とともにかっこ良かったです!
脚の動きが見えないからスカートは取ってしまったのもあるだろうし、「主人公が性転換しても何も人格には変化はない」という物語と同じで、男女とも下半身はタイツ1枚的な衣装なので男女の見分けはつくのに、踊りに性別がなくもはや男だろうが女だろうが関係なくなるのです!
私はコンテでもどこかクラシックの要素がないと、好きと思えないのですが、ロイヤルの常任振付家であるウェイン・マグレガーの振付は、クラシックは薄いのに私が思う品や尊厳があって、でもエロチックなところもあって良かったです。
特に好きなのは、女性ダンサーが男性のサポート付きで、片方の足を高く上げてその空中の足の位置を変えずにポーズを変える動きでした!つまり両足の先は固定されていて股関節の中で角度が変わっていると思われます。なんかすごくバレエ!って感じがします!LOVE