Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

イヴォ・ヴァン・ホーヴェのオセロー

2017-11-03 21:30:00 | その他の映画・ドラマ・舞台


東京芸術劇場にて今日から3日間公演のある「オセロー」です。

監督は、去年ブロードウェイで「るつぼ」を発表したイヴォ・ヴァン・ホーヴェ、美術・照明デザインも「るつぼ」のヤン・ヴァースウェイヴェルド。

同じビル地下にあるシアターイースト/ウエストの小劇場は、オックスフォード大学演劇協会のシェイクスピア作品を見に行ったことがありましたが、

メイン劇場の2階にあるプレイハウスに初めて入りました。

内部は広すぎず、客席がとても舞台を見やすく配置された印象ながら、壁面がレンガとスチームパンク感ある機械パーツ風のデコレーションがされていて、風変わりな劇場です。

席に着こうとチケットに書かれた「C」列を目指し3列目に足を踏み入れて席を読むと、「E」列とあるではないですか・・・そこでやっと気づいたのは、私は最前列の席だったのです。

赤いベルベットの幕が開くと、ブルーの幕に囲まれた舞台が現れ、イヴォ監督&ヤン美術らしいシャープでクリーンな「線」の印象のイスにもたれた俳優さんたちが現れました。

やはり、近いです最前列!ステージとの距離は、C列ということから想像するに、AとBも無理やり作ろうと思えば作れるギリギリの空間しか空いてません。

ロンドンのアルメイダなどは、いわゆる小劇場のつくりなので近いのも自然だったのですが、本格的な2階席もある劇場だと、俳優さんが演じている空間内に自分が座っているような気がして「スミマセン」って感じでした。

でも顔の表情が普通に見えるのは私は大好きです。バレエと違って「字幕」を読まなくてはいけないので(オランダ語上演)俳優さんたちの顔と字幕と交互に見るのが忙しかったですが、やはり顔は大切です。

そして今回の内容で期待していたのはオセロー(黒人、ムーア人、アラブ人とされている)役が白人の俳優なこと。

人種差別に敏感な昨今にとてもタイムリーな配役ですよね。

オセローは白人社会で有色人種ながら成功した理性的な軍人というキャラクターですが、それが白の中にひとりだけ黒の存在だと内面の特質よりも肌の色の違いの方がインパクトが強く、人間性が色で誤魔化されるような気がしていたからです。

それで今回の配役だと、人種だけは白人ながら特質は原作通りなので、オセローが中年であることや、軍人らしい身のこなしや冷静な振る舞い、妻が裏切ったと思い込んだ時の暴力的な表現が目に飛び込んで、彼の感情が理解しやすかったです。

反対に、最近感じつつあった、シャイクスピア時代の女性の理想像がまた鼻についたところがあり、女性差別撤廃の今日この頃に、西洋諸国でその辺に誰も違和感を感じないのかと不思議です。

「父に従い、結婚したら夫に従う」などのセリフの事です。


あと、演出で面白いな〜と思ったのは、やたらと役者さんたちが服を脱ぐ事です。まず最初からして裸で、セリフを喋りながらみんなが着衣していくんですね、オセローはたるんだお腹も隠せない下着姿のおっさんで、軍の制服を着た途端にピリリとカッコよくなりますので、観客にはオセローは中年、という印象が強くスタートするんです。

オセローだけではなく若いキャシオーやロドリーゴも脱いでいるので対比になります。

そして女優さんたちも同じで、一番豊満な体型のエミリアは脱がないんですが、デズデモーナとビアンカはもうギリギリまで脱いでます。私の両脇に中高年の男性が座っていたので、その二人にも見せるのはもったいない、と勝手に思ってました。と言ってもデズデモーナはとても華奢な役者さんで全然おっさん受けはしない少年のような体つきで、髪はショートでクルクルだし本当に天使のようでした。


今回、美術がとても気に入ってまして、オープニングの青い幕が、舞台が変わると嵐のように流れて床に落ち、舞台が奥の壁と袖の左右にとても広がるんです。特に奥行きの距離感がすごいです。その壁は劇場そのものの壁で、通常は描き割りなどの美術セットで見えない壁のはずなんですが、床、壁と黒いので剥き出しでも全く問題ないのがカッコよかった。

俳優さんにとっては、なかなか袖に引っ込めないので後ろ姿の演技の時間が長くなって大変かもしれません。

そうそう、始まってから割とすぐ、舞台の客席に近い方で、ワインのボトルが倒れて液体が結構こぼれたんです。半分くらいは床に広がってしまい、私の眼の前だったので、そこで役者さんが転んだりしないか気が気ではありませんでした^^;

でも俳優さんもなかなかうまくそこを避けて演技はしているものの、イアーゴがその上に転がることがついに起きてしまい、それでもそこは割と修羅場だったので、髪乱れてぐちゃぐちゃになったイアーゴの制服についたワインの染みはストーリーにあってはいました。

それにしてもイアーゴ役の俳優さんがうまかった。私が過去に見たオセローでは、ローリー・キニアのイアーゴだったので清潔感がありすぎて、今回のいかにも悪が顔に出てる風体のイアーゴを見て、やっとこの役のことが理解できました。本当に不潔感まで漂うような男だったのに、カーテンコールでは紳士になってましたから。

カーテンコールといえば、なんとイヴォ監督も出てきてくれたんです!これには嬉しいびっくり!!一緒に来日されているとは知りませんでしたので。すらりと背の高い、ベルギーの人らしい控えめで知的な方ですが、スターに出会えた高揚感に包まれ盛り上がっちゃいました!