「マイティ・ソー3」を見て「おもしろいことはいいことだ!」と思ったばかりです。
ジェイムズ・コーデン主演のコメディだからおもしろいに違いないとは期待してましたが、
演出が「ヒストリー・ボーイズ」「ミス・シェパードをお手本に」のニコラス・ハイトナーですから、知的な捻りや面白さの陰に深いものがあるに違いない、
とも期待したら、面白い捻りと面白さの陰に面白いもので終わってしまいました!
原作はなんと18世紀イタリアの喜劇とのことで、舞台を1963年のイギリス、ブライトンに移したバージョンが2011年ナショナルシアターが初演とのことです。
その後ウェスト・エンドやブロードウェイを始め、香港、オーストラリア、ニュージーランドでも上演された大人気作・・・・でも、オーストラリアって、劇を見た方は、反応するのではないでしょうか、いいの?オーストラリア?(笑)
だって、イングランドが舞台で、主役フランシス(ジェイムズ・コーデン)はひもじいあまりに、ふたつの仕事を掛け持ちするんですけど、今ならフリーランサーということで問題ないでしょうけど、彼は2人の雇い主に兼業を隠して働くんですね。
それで、ネタバレしますけど、
雇い主ふたりは、実は婚約者同士で、結婚してオーストラリアへ行く計画を立てていました。でも、ふたりとも実はオーストラリアには自然とオペラハウスしかないと思っていて、行きたくなかったんです(笑)。
そう言えばカナダも「つまらない国」の代表格で名指しされていたのも笑位のツボで、ロンドンやNYでは絶対オーストラリアやカナダの人も見に来ているだろうなあ、いいのかなあ、と思いながら笑ってしまいました。
とにかく大笑いのコメディですが、登場人物の一人に役者志望の優男が出てきて、これがまたシェイクスピアもどきのセリフをやたらと言いたがるので、劇中で演劇文化を笑ってるところがあって自虐ぽくてそこはイギリス的です。
シェイクスピアはハムレットもろともこき下ろされているんですが、雇い主のひとりは双子の兄を男装して演じる妹という設定で、ほとんど「十二夜」です。
それと、もうひとりの雇い主はパブリックスクール時代の習慣で笑いを取る、ポッシュな男で、これもポッシュさと変人さが同居していてとてもイギリス的。
舞台となる食事つきの宿も、クリケットがモチーフとなった、インテリアもクリケットにちなんだ非常にイギリス的な場所。
しかしメインのコーデンの笑いの演技はほとんどドリフと変わらぬ肉体労働なのでとってもインターナショナルという、腰が砕けそうな喜劇でした。
ナショナルシアター・ライブならではの面白さがあったのは、
休憩の時に舞台裏を見せてくれるのですが、
控え室のジェイムズ・コーデンと、ポッシュ男と役者志望男が、まだそこでしれ〜っと司会者に向かって役のキャラで演技してるんです。
「16時間も食べてないんだから」って。
それと最後までわからなかったのは、客席の女性がコーデンに引っ張られて舞台に上がり、顔や服にクリームをかけられるんですけれども、カーテンコールにまで出てきてたので、あの女性はやはり本当は観客ではなく女優さんだったということでいいのでしょうか。おそらくそうでなければ挨拶しませんものね。