Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

ガール

2019-07-08 21:21:00 | その他の映画・ドラマ・舞台


ネタバレなしで頑張ります。

トランジェスターの少女がバレリーナを目指すという・・・ハードルの高い夢を追う青春ドラマです。

ベルギーの王立バレエ学校に女子学生としての入学を認めてもらうためにレッスンを頑張るララ。

日本人の目から見たらもっと大人に見えるけど、ララは15歳。青春真っ只中・・・のはずなのに、トランスジェンダーで治療中のララには、

青春=生まれ持った体のままだとどんどん心とかけ離れた体になってしまう

体の自然な変化を止め、精神サポート治療と並行して女性ホルモン投与を開始する。

ララは見た目は可憐だが芯の強い子。トランスジェンダーには迷いがない。

ベルギーの性同一性障害に対する理解や治療法がかなり進んでいることは、

ララの父親の理解と協力、新しい学校での受け入れ(完璧ではないけれど)でとてもよくわかった。

しかし、バレエスクールにいる身にとっては、その進んだ治療方法でも解決しきれない日常の精神的な苦しみがあまりにも大きいのがよくわかる映画です。

服を着ていればどこから見ても美少女のララも、レオタード姿ではね。

ララ役のヴィクトールは(作中でも本名がヴィクトールだった)シス・ジェンダーの男子なので、華奢で少年体型とはいえ周りのけっこう成熟してきている女子とは当然違います。

クラスは数人が一緒にレッスンするので、どうしてもララの一番人に見られたくないところに視線は行ってしまうでしょ。

それを避けたのか、私はバレエシーンをとても楽しみにしていて、俳優のヴィクトール自身バレエスクール在学中のダンサーというのでララの踊りをもっと見たかったのに、上半身アップがほとんどなんですよ!

やはりバレエは全身で踊るとはいえステップが見たい。しかもララはポワント(トウシューズ)は他の女子よりも遅くに練習を始めたのでダンスは上手だけどポワントがまだまだ、などというくだりを実際に見たかったわけです。

ストーリーから外れるけど単純に美少年俳優のポワントが見たいという気持ちもあった。

きっとそんな私のゲスな欲望を見抜かれテーマに必要性のないシーンはカットしたな監督め。


映画の見せ方は、淡々とララの表情を追い、静かだけれどものすごい緊張感がありました。ララの長い首、首筋の綺麗な肌、白い肩、細い背中から浮き出る肩甲骨、細い胴に筋肉のよくついたなめらかなヒップとカメラがなぞるんです。ララ美しいでしょ、と。

カウンセラーとの会話も生適合手術などの具体的説明がきちんとされる。

リアリティはあるのだけどイマイチ展開へのララの気持ち&行動に乗り切れなかったので、少々ネットで調べて随分理解が深まりました。

<それをシェアしますね>

現在の性適合治療は、まず思春期が始まってから、その第二次性徴が進行するのを止める薬を飲むことが可能です。ララはその薬を飲んでました。

それが11歳くらいからとして、生まれてきた性別に対する違和感などカウンセリングで様子を見ます。その薬はやめれば二次性徴の成長がまた始まるので、自分の性への違和感が続かなくなれば、もともとの体の性に戻れるわけです。

15歳を過ぎたくらいでも自分の体への違和感が続くとなると、ホルモン療法で本来とは別の性別の体型や特徴に変化する治療を開始できます。

ララも映画でちょうどこのカウンセリングを受け、女性の身体へと変化を望みホルモンを投与し始めます。

医療のペースとしては、このように数年かけて身体への負担がないように、身体への違和感が一時的なものではないかと見極めながら(ホルモン療法をして変化したからだはもう元には戻らないので)変化させるのですが、

毎日学校ではレオタードで汗をかくのに、シャワーもみんなと浴びるのは避け、トイレの個室(?)で水で汗を流してペニスを抑えていたテーピングを剥がす・・・屈辱を味わっているのですよ。

特別な下着をパパに買ってもらったけど、それはやはりレオタード用ではないと思うんですよね、トランスジェンダーでダンサー用の商品というのはさすがのベルギーでも・・・

医者もテーピングは皮膚に良くないから止めるように、っていうんですけど、じゃあ一体どうすれば? レオタードの上からずっとニットパンツを履く許可をもらうのもまた屈辱だったのでは。

ということで医療チーム、家族、学校と理解がある周囲でも、日常味わう本当の精神的苦しみ(+バレエのレッスンでの肉体の苦しみ)は人には言えないデリケートなことなんですね。


映画は胸が痛くなるテーマなのですが、ララのヴィクトールくんがレオタードじゃなくても可愛くておしゃれなのがこの映画での嬉しい発見です。

監督とのツーショットもやけにいい感じなんですが・・・。



ルーカス・ドン監督もまだお若い。これが長編デビュー。



ひよこ色のセーターがお似合い。ビョルン・アンデレセンみたいなアンニュイ。



モデルさん並みにファッションが似合う