Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

アレルヤ!

2019-07-16 19:45:00 | その他の映画・ドラマ・舞台


去年、ベン・ウィショーの「ジュリアス・シーザー」などで話題になったロンドンの新しい劇場ブリッジシアターにて、サミュエル・ベネット君が出ているお年寄りのミュージカルぽい「アレルヤ!」という舞台をやっているとツイッターで知った時から見たかったのをついに、東京でナショナルシアター・ライブで見れました。

老人ホームが舞台なんだなと思い込んでいたら、まんまと罠にかかっていて、実はホームではなく病院なのに、行く所がないため退院できない老人病棟の話でした。

日本でお年寄りというと茶色とか灰色のイメージなんですが、イギリスの老人たちってカラフルなのでそれでミュージカルと思ったくらいです。

しかも元気。特に数少ない男子はガンコジジイで、これはハイトナーの願望もあるのでしょうか。イギリスは老女の方が無敵に強いイメージがあったのですが。

しかしカラフルで元気な病棟の話だけれど、捻りは来るだろうとは思ってたけど、
ダークなストーリーとは予想以上でした。

サミュエル君といえばどうしても「ヒストリー・ボーイズの〜」と言いたくなりますが(「ダーク・ジェントリー」も忘れてないけど!)、そのヒストリー・ボーイズからもう一人のキャストがいたんです。

インド人の医師役サシャ・ダワン。

この二人の語りが増える終盤近く、「ああ、これは老人たちの『ヒストリー・ボーイズ』だったか」と独り言が出てしまいました。

それぞれの登場人物の事情がわかってくるとそれぞれに感情移入してしまう。

特にインド人医師、不法滞在がバレて国外退去になるんですね。その時に彼はイギリスの国としてのダメな部分やイギリス白人の根拠なき優越感を嫌という程知っているのに、「それでも僕はイギリスに帰化したいのか」と自問自答するんです。ここに、同じ外国人として切ないほど共感します。

私もイギリスいいところばかりじゃないのを知っているけど、なぜか日本よりも精度が整っているんじゃないか、と夢を見てしまうのですね。現に、この劇の老人たちは自宅を子供にとられても病院には無料で住んでいるわけですから。

でもインド人医師、良心的で決して医師として無免許でもなんでもなく資格があるのに、なぜ病院で謎の老衰が多発したのか見抜けないのだけは疑問に思ったけど、さすがに80歳以上で寝てるうちに死んでたらやはり老衰となるのがどこの病院でも普通なのかな。

と重い話ながら、重く見せずにメッセージだけが伝わるのはイギリス的なユーモアと、歌と踊りと、それからサミュエル君たちキャストのせいでしょうね!みんな頼りなさげな人物を演じてるのに台詞がうまい。

サミュエル君って、いるだけで、見てるだけで幸せな気持ちになるんです、私。

ところでパンフレットにはリハーサルの写真が出ていて、老人役の人たちもジーンズにTシャツにスニーカーで全然若々しいんです。あのお芝居の衣装は入院患者だからというのもあるけど、お年寄りらしいお年寄りの衣装として考え抜かれたのかな。