Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

白鯨との闘い 感想

2016-01-19 00:00:00 | ベン・ウィショー


こ・・・怖かったです。
私は閉所恐怖症なのに、船って一種の閉所だったんです・・・。
見てから3日が経過し、やっと冷静になれました。

あらすじ

捕鯨の港町として栄えたアメリカのナンタケット島(ブラック・スキャンダルの土地ボストンがあるマサチューセッツ州にあります。最近縁があるな)に新進作家のハーマン・メルヴィル(ベン・ウィショー)が尋ねて来る。伝説の白鯨と闘った捕鯨船エセックス号の乗組員の最後の生き残りの男トマスに真実を聞くために。
トマスは語りたがらないが、彼の妻の意向もあり、メルヴィルは偉大な小説を書くため熱心に話を乞い、聞き出す・・・


感想 ネタバレありですのでご注意

一等航海士オーウェン役のクリス・ヘムワーズって、かっこいいですね!捕鯨の話では主役なのですが、雷神ソーよりも頭も良さそうだし、当時14歳だったトマスが憧れる気持ちがよくわかります。

彼と船内で覇権争いするのが船長ポラード。親の七光りのぼんぼんです。ウィキによればベンジャミン・ウォーカーに決まる前に、ベネディクト・カンバーバッチ、トム・ヒドルストン、ヘンリー・カヴィルも候補だったそうです。ベネさんだったらまるっきりTo the Ends of the Worldのタルボット坊ちゃんになってしまいますし、クリへムとトムヒが揃ってしまってはソーとロキの兄弟喧嘩で船が沈没しますから、それもダメですね、残念!

あと気になってしかたなかったのは、エセックス号が白鯨と出会った航海に出たのは1819年、メルヴィルが「白鯨」を出版したのは1850年とのことですが、トマスは14歳で船に乗ったということは、メルヴィルに話をした時40歳代のはず。それがなぜ最後の生き残りで老人になっているのか?私の計算のどこが間違っているのでしょう?

西洋諸国から捕鯨を責められる日本人としては、捕鯨そのものを興味津々に見る事ができました。

まず、びっくりしたのは、鯨を見つけたら、帆船からボートでこぎ出して、銛を手に持って投げて鯨に打ち込むということです。ほとんど原始時代の狩り?!あんな小さな銛で必ず致命傷を与えることができたのか・・・?ロープがどんどん鯨に引っ張られて残りがなくなりそうになった時に、乗組員が切ろうとするんですが、あれは鯨が死ななかった場合ボートが引きずられて海に飲み込まれるのを防ぐためでしょうから、やはり逃す場合もあったのでしょうね。

まあそんな感じで鯨との一騎打ちと言う感じですので、「捕鯨とは戦争」と言って、奥さんに「必ず帰って来る」と誓って旅立つし、男のロマンとしてメルヴィルの小説「白鯨」もベストセラーになり映画化も何度もされたのだな、と納得しました。実はなんでクジラの話がアメリカの名著なのかずっと不思議に思っていましたから。

鯨が力つきたらロープを引っ張って、油をくみ出します。そう、西洋の捕鯨とは、ランプを灯す油のためだったのですよね!この油ビジネスで船のオーナーとか保健会社とかナンタケット島の産業が成り立っていたとのこと。この時代は石油に鯨油が取って代わられる直前だったようで、映画の中でも「地中から油が出るんだと!」という会話がありました。

そして、白鯨です。

経験あるオーウェンも見たことのない巨大鯨は、怖いけど、かわいかったです。だから上の鯨の目の画像が好きです。眉毛みたいなのもあるw大きな二重まぶたなのかな?この意思ある巨大な海の守り神みたいな白鯨を見せられたら、確かに「クジラは知性のあるかわいい生き物だから殺してはかわいそう」とも思います。

・・・だけどね、ネタバレいきますよ?

トマスが誰にも言えなかった心の闇となった真実とは、「白鯨に帆船を壊され漂流の果てに、生存者達は生き延びるため仲間の肉を食べた」ということでした。そして「死んだ仲間の身体を食べられる部分以外をきれいに縫い合わせて海に葬った」とも。

私はそれを聞いて、「日本の捕鯨で捕れたクジラは余す所なく利用」というのに似てるな、と思ったんです。日本の漁師はクジラにありがとう、と言って生きるために命をいただいている。やっぱり地球上は食物連鎖。ベジタリアン以外は、何かしらの動物を食べている人間は、「クジラをとってはイカン」と言う資格はないと思うのですよね。

メルヴィルの時代には西洋では人間はまだ万物の頂点、大自然との闘いは人間としての正義、アメリカ人のフロンティア精神に深く訴えるものがあったのでしょう。一晩かかってトマスから捕鯨船の難破の果ての漂流と白鯨との闘いを聞き終えたメルヴィルは、新作小説のためのネタをノートにびっしりと仕入れ、ノートを大切にカバンにしまってトマスの宿を徹夜明けというのに軽い足取りで後にします。そのカバンを脇に下げて去って行くベン・ウィショーの後ろ姿がパディントンに見えてしまった私をお許しください・・・!!




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