今は「フォトスタジオ」というのだろうか?私の子どものころは「写真館」といった。
まだ家庭用カメラの価格が高く、扱いも難しかったころの話だ。写真はプロに撮ってもらうものだった。
何か機会があると写真館に行って“家族写真”のようなものを撮ってもらったように思う。
写真館は少し埃っぽいにおいがして、家には決してない猫足の椅子やテーブルがあった。
立ち位置や座る位置、手や足、顔の位置、丁寧に丁寧にポーズや表情をつけられて、
さあ皆さんレンズを向いて…とシャッターを押されたものだった。
焼きあがった写真は、薄暗い印象の写真館で撮ったものとは思えないほど明るく、時に温かく感じるものだった。
デジカメ全盛時代に逆行するかもしれないが、私はフイルムで撮った写真が好きだ。
撮り手の考え方によるのかなとこの頃は思うようなったが、
どうもデジカメで撮った写真は薄っぺらく奥行きが感じられないものが多い。
それぞれに長所短所があり、好き嫌いがあるから一概にどうのとは言えないが、
このたび、成人式のために晴れ着を着た娘の記念写真をお願いしたのは、
東側に大きく窓がとられ、とても明るくて今風で気持ちのいい雰囲気の近所のお店にお願いした。
ここは、ママ友に話してもあまり知られていない言ってみれば“穴場”
予約の電話をしたら「美容院が終わったらいらしてください」と実にゆったりとした返事だった。
自然光にこだわっているので、撮影はお日様が上がっている時間だけという注意書きがある。
冬場は午後2時ごろまでなんだそうだ。着付けをやってくれた美容院でもセットで写してくれたが、娘に話したら、
「自然光で撮ってもらいたい」といった。
当日はあいにくの吹雪。足元の悪い中、慣れない着物に悪戦苦闘の娘を運んだが、
出来上がりの写真を見て、大変だったけれどここにしてよかったと思った。
娘の緊張をほぐすことも含めてデジカメで何回か試し撮りをし、露出をきちんと確かめて、
一眼レフで撮られたその一枚は、娘のはにかんだ笑顔をばっちり写し取っていた。
着物の優しい色合い、奥行きもあり、晴れ着を着たという印象を感じさせてくれるものになっている。
思わず出た一言が 「うわあああ、可愛い」
その手ごたえは、子どものころ写真館で写したものを初めて見たときのあの感じに似ていた。
デジカメでスナップ撮りしたものもサービスでと手焼きに焼いてくれた。
「写真は記念ですから」
あまりあれこれ宣伝しない若いご主人の、これだけの腕をもっているのに普通の住宅地に店を構えてやっていこうという気概。
そして、プロの仕事を感じた。
すごいなあ、これはお金をはらってもいいと思う、いやそれ以上の価値のある写真だ。
着物の手入れの時にお世話になった姉のお友達に、スナップを送ればいいと考えていたが、
この一枚でお届けしたいと思い、焼き増しをお願いした。
ああ、いい写真だ。またいつか機会があったら撮ってもらいたいなあ・・・。