HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

NYコレクションが中国製。

2008-04-08 13:44:38 | Weblog
 東京コレを最後に08~09年の秋冬コレクションも終了した。東コレの問題点は先にこのコラムでも書いたが、今年のコレクションではもう一つ気づいたことがあるので、書くことにする。
 それはニューヨークコレクションの新鋭デザイナーの服が「Made in China」だったことだ。このデザイナーはアジア系で、注目を集めている一人。先日、テレビ東京の「ガイアの夜明け」でも、銀座三越のバイヤーが目を付け、自店のセレクトコーナーで販売すると紹介されていた。
 ニューヨークらしくスタイリッシュでミニマルなデザイン。都心で働くビジネスウーマン受けしそうなアイテムは、いかにもニューヨークや東京の百貨店がほしがりそうだ。中国製にも関わらず、ジャケット1着が10万円以上。銀座三越では予約ですでに完売し、キャンセル待ちの状態という。雑誌メディアも巻頭のトップで扱っていた。
 中国製といえば、チープ&コストダウンの象徴で、このイメージは今も変わらない。いくら人件費が高騰したとはいえ、縫製工賃は日本の5分の1以下だ。そんな中国製がニューヨークコレクションのファーストラインに採用され、ランウエイに登場した。これは価格以外の理由がある。
 前に世界のコレクションを特徴づけるキーワードとして、パリは「着たい服」、ミラノは「着れる服」、ニューヨークは「売れる服」と言っていたことがある。パリがクリエーション主体なら、ニューヨークはビジネスに軸足を置いているという意味だ。それは売れるものを探している百貨店バイヤーのお目にもかなう。日本人バイヤーを引き付けたのは、同じアジア系ということで感性やバストサイズが近いこともあるだろう。それが理由のひとつだ。
 でも、真の理由は中国のアパレルが高級ブランド生産にも攻勢をかけているということ。そのとっかかりがニューヨークのアジア系デザイナーとのコントラクトだったわけだ。裏を返せば、中国のファクトリーの技術力はデザイナー側から見て、コレクションブランドのプロダクツを十分担えるレベルということになる。恐るべしというか、強かというか。
 こうした世界の趨勢を日本のファッション関係者はどう見ているのか。未だに「生産コストが上がってたいへん」「増値税の還付率が下がって荒利がダウン」なんて中国生産を評しているようでは。世界で勝負するなんてスローガンが、完全にお題目で終わってしまうような気がする。…続く。
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CdGとH&M。

2008-04-08 10:08:54 | Weblog
 2008年4月4日付けの繊研新聞の1面はまさにサプライズだった。この秋、満を持して日本上陸を果たすスウェーデンのSPA(製造直売小売り業)ブランド「H&M(へニーズ&マーリッツ)」が、ゲストデザイナーとしてコムデ・ギャルソンの川久保玲を迎い入れ、コラボ商品を発売するというのだ。
 H&Mはこれまでにもステラ・マッカートニー(ポール・マッカートニーの娘)やカール・ラガーフェルドなどとコラボしてきた。ヨーロッパが本拠地だから、パリコレの常連と組むのは不思議なことではない。
 ただ、アジアのファッション先進国、日本でコムデ・ギャルソンと組むのは何とも心憎いし、簡単には攻略できない市場との読みから判断した同社なりの巧みな戦略。さずが、世界第二位の売上げを誇るSPAだけある。
 H&Mは9月に銀座、11月に原宿にオープンするが、コラボ商品は11月7日にオープンする原宿店のみで販売。商品はメンズ、レディス、子供服約20ルックとアクセサリー、フレグランスなどを予定。その後、世界28カ国で販売するという。日本進出でこれほどの話題はないし、インターネットのオークションに出品されれば、元値の数倍になるのは間違いないだろう。
 コムデ・ギャルソンはデビューから30年以上を経過し、往年のファンは50歳代に突入。派生ブランドで若返りを図ってはいるが、価格的に高く今の若者を捉えきれていない。値頃なH&Mでコラボ商品が手に入るとなると、若者の目をコムデ・ギャルソンに向けさせるきっかけになる。
 川久保玲自身は「クリエーション・ミーツ・ビジネスとして、今までとは異なるバランスに挑むことになる」と語っているが、一方で低迷が続く日本のDCブランドがH&Mの世界戦略を新たなビジネスチャンスと考えたとすれば、コラボを実現させた説明もつく。「CdGは会社をデザインする企業」と言いながら、銀行員の実弟を入社させるほど強かな川久保だけに、それは十分考えられることだ。
 H&Mも日本の若者の間ではまだ知名度が低いので、コムデ・ギャルソンの力を借りてクリエーティブな商品を販売し一気にバリューを上げれば、彼らを取り込めるかもしれない。双方にとってメリットは大きいということだ。
 もっとも、一昨年にはユニクロが「デザイナーズ・インビテーション・プロジェクト」をうち立て、フランスや日本の若手デザイナーと組んでコラボ商品を販売した。しかし、結果は強力なバリュー創造とまではいかず、ビジネス的にも新たな市場を開拓するに至らなかった。私が見る限り、やはりユニクロのインダストリアル的プロダクツの領域=デザインの元になる生地がクリエイティビティではない、を脱しきれなかったことが販売不振の最大の要因と言える。
 では、H&Mの場合はどうか。同社はこれまでデザイナーとのコラボ実績があり、世界中で素材を調達して商品を企画生産するノウハウをもつ。ユニクロのような中国生産一辺倒ではない。二の前?の心配はなさそうだ。…続く。
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