HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

今さらストリートをテーマにする無能さ。

2012-02-06 17:49:55 | Weblog
 先日、福岡アジアファッション拠点推進会議から一通のメルマガが届いた。3月に開催するファッションビジネス最前線のセミナーの告知だが、内容を見て正直、疑問に思った。テーマは「ストリートから見るジャパンファッション大解剖」で、講演者はフォトグラファー兼ブロガーのシトウ・レイ氏になっている。
 イントロには、「現在の日本では、パリやミラノなどのワールド・コレクション出自のクリエイターやブランドから発信されるファッションよりも、一般消費者である街中の若者たちの中から生まれてくる「ストリートファッション」が大きな力を持っており、今やトレンドを動かすまでになっています…」と、どこかで聞いたような能書きが書いてあった。 www.fa-fashion.jp/index.php?action_detail_index=true&doc_id=200

 疑問は「何で、今さらストリートファッションなのか」である。東京の原宿や中目黒などを発信源にストリートに集まるショップと若者が増え、いろんなブランドメーカーが地方の卸先を開拓し、一大ファッションムーブメントとして全国区化したのは2002年。もう10年以上も前の話しだ。すでにヤングテイストとして根付き一定のマーケットシェアを獲得しているのは、多くのファッション関係者が認識している。
 それゆえ、現在のファッションビジネスで、ストリートがそれほどファーカスされるものではない。今日、専門学校生でも気の利いた子なら、「もっと、他にテーマはないの。ユニクロ以外の企業とか、ブランドとか」なんて言いそうだ。こんなテーマで、いったい誰に、何を伝えたいのか、である。
 今、多くの業界関係者が知りたいのは、「どこにビジネスの可能性を見い出すか」である。アパレルでは「ファストファッションの終焉で考えるべき新たな商品開発のモデル」。小売りでは「SPA、セレクトのどちらを進化させるべきか」。また両方に共通するのは、「これ以上原価率は下げられない中、インフレ基調でとるべき戦略」等々。せっかく講演を聴くなら、こうしたビジネスのトレンドや理論をわかりやすく解説してくれることである。

 過去、推進会議が開催したファッションビジネスセミナーは、WWDの編集長を呼んでの欧米のコレクショントレンド報告かと思えば、webに活路を見出そうとするアパレルメーカーの戦略についての体験談と、すでに多くのビジネス媒体で特集されつくされたありふれた内容ばかりだ。“最前線”というにはあまりにはばかれる陳腐なテーマに終始している。
 誤解なきように断っておくが、筆者は講演者のシトウ氏と同時期に業界誌に執筆していたので、同氏の足跡や力量は十分承知している。しかし、同氏がいくら優秀だからといって、ストリートについてあれこれ語ったところで、地元ファッション業界にとって最先端のビジネヒントなるとは思えない。
 むしろ、問題があるのは講演を企画した推進会議側であろう。これまでも含め、テーマ設定があまりに場当たり的で、ビジネスセミナーとして一貫性を欠く。ファッション産業の活性化やビジネス振興にはほど遠い内容である。それは企画立案者のファッション業界に対する認識の甘さ、企画力の無さを露呈する。
 
 ただ、こうした状況は何も福岡に限ったことではない。全国の商工会議所で行なわれているビジネスセミナーについても、多かれ少なかれ言えることだ。会議所にとっては会員から会費を集めている以上、それを中小企業振興のために使わなければならない。しかし、どんな企画内容にすれば、中小の企業経営者にとってプラスになるか、それを創造できるものが内部にいないのである。
 霞ヶ関の中央官庁が携わる事務事業も同様で、単年度に予算を使い切らなければならないから、「取りあえず、何かやっとけばいい」ってことになる。その先には必ずと言っていいほど、利権が生まれていく。
 たとえファッションビジネス最前線であっても、地元ファッション業界が求めているのは「半歩先」のビジネスノウハウ。木を見て、森を見ずではダメなのである。もう一度、事業の方向性を見つめ直して、企画内容を精査するのはもちろん、立案者の脳みそ(首)を付け替えることも必要かもしれない。
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