HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

銀座初の屋外ファッションショーは、百貨店復権のさきがけにならない。

2012-04-12 18:27:22 | Weblog
 4月12日付けのダイヤモンドオンラインに「銀座初の屋外ファッションショーの成功は、百貨店、情報発信力復権のさきがけになるか」が掲載された。
 このイベントについては、先だってFB友人諸兄も語っていたが、筆者も銀座=デニムという構図は不釣り合いだと思う。ファストファッションと一線を画し、高級イメージを取り戻したいなら、なおさらである。 
 だいたいアダルト対象にしてきた銀座の百貨店がそんなにデニムに詳しいわけでも、ジーンズを一生懸命売りたいわけでもないだろう。現場のスタッフ自身が「こんなイベントをやったところで、お客がどんどん売場にやってくるのか」と懐疑的なはずである。
 さらにモデルとして参加した米倉涼子は、事務所Oの方が百貨店とのキャラクター契約を取るために動いたのではと勘ぐりたくなるし、枝野幸男大臣の登場も原発問題で落ちたイメージ回復を狙う経産省の思惑が透けて見える。

 第一、枝野大臣のあのスタイリングは何だ。仮にデニムウエアを売りたいなら、せめて今のトレンドにフィットするデザインでないと意味がない。 それともフィッターに携わったスタッフのセンスの無さなのか。 秘書官は「分刻みのスケジュールで試着などできなかった」なんて言うかもしれないが、そんなのは言い訳に過ぎないだろう。
 銀座には老舗のテーラーも軒を並べるのだから、素早く採寸してスタイリッシュなウエアを作るくらいでないと、情報発信もクソもない。世界中どこにも無い商品が銀座から発信されるからこそ、お客は買い物に来るのだ。あんなダブダブの格好を銀座で買い物するご婦人方が、自分の旦那に着てほしいとは思わないはずだ。

 今回のイベントは銀座3、4丁目に店を構える三越伊勢丹や松屋銀座が中心となって主催し、松屋の売上げは10%程度アップしたという。ただ、百貨店全体を見ると、2001年に8兆5724億円あった売上げが、11年には6兆1525億円まで低下している。市場の縮小には歯止めが掛からない状況である。それはお客にとって百貨店そのものの存在も、情報発信力もそれほど意味を持たなくなっている証拠だろう。
 なのに女優や経産大臣がデニムを着て銀座を歩いたところで、お客の関心が百貨店の商品に向かうとは思えない。今回のショーくらいなら、せいぜいタレント事務所とイベント会社が得をするのが落ちである。
 
 ショーを企画した太田伸之・松屋常務執行役員MD戦略室長が語る開催理由も、「今の百貨店には、ドキドキすることがない。垂れ幕をたらしてセールするだけでいいのだろうか。百貨店は、日本のモノ作り、文化を残すこと、さらには東北の復興に貢献できるはず」と、大して心を打たない。
 「ドキドキすることがない」のは、メーカーや問屋任せの場所貸し委託販売に終始した結果ではないのか。商品でも販売でもリスクを取らず、売れ残ればメーカーに返品する。商品が売れなくて自分たちが胃が痛くなるような思いをしていないのに、お客がドキドキするはずがない。

 また「日本のモノ作り、文化を残すこと…はできるはず」というが、ならばどんなに売れなくても、どんなに赤字になろうとも、これと決めた商品やサービスをずっと提供しつづけるべきではないか。
 ラスクも、バームクーヘンも、ロールケーキも専門店が売っているを見て、幹部自ら足しげく通って交渉し、出店にこぎ着けただけ。ファッションになるともっと酷い。専門店が開拓し、地道に売って顧客をつかんだブランドをたちまち奪い取っていく。掛け率が6掛けだろうと、7掛けだろうとお構い無しだ。
 それでいて売れなくなると、平気で取引を反古にする。所詮、百貨店経営なんて効率追求でしかない。そんなところが日本のモノ作り、文化を残すなんてことができるのかって思ってしまう。

 百貨店が今より悪くなりたくないなら、イベントなんかに金をかける前に、顧客が買いたいと思うより魅力的な商品を有利な価格と欲しいタイミングで揃えるしかない。小回りの効くOEMアパレルや仕様開発の機能を持ったメーカーと組めば、百貨店でも商品開発は出来るはずだ。要は「オリジナル商品だけではバラエティさを欠くから、セレクト商品も加えた自主MD平場を自前で開発し、もっと荒利益が稼げるようになれ」ということ。
 経営音痴のメディアにわかりやすい能書きや空理空論を宣う前に、コスト高を吸収して利益が出せる体質を確立させる方が先決だろう。それができてこそ、情報発信のファッションショーも生きるのだ。
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