HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

客寄せ興行で、服は売れない現実。

2012-09-20 13:24:51 | Weblog
 アパレル業界はテレビなどマス媒体による販促手段はずっととってこなかった。それほどコストをかけられないこともあるが、服そのものにスポットを当てる必要があったからだ。そこでとった販促策がプロモーションビデオである。商品はまずショップで顧客の目にとまるから、売場で流せるPVの方が有効な販促手段になったからだ。

 筆者もプレス会社時代にはよくブランドメーカーのプロモーションビデオを制作した。モデル1~2名を使い回し、シーズン商品を30着程度着せてスタジオで何度もキャットウォークさせ、撮影した。全身のシーンは引きで、アップは服のみで撮り、カット割りを増やしたり、照明のテクニックを駆使して、いかにも多くのモデルが着ているように工夫した。
 音入れではムーディなBGMのみにして臭いナレーションはカット。当方が服にマッチするコピーか、ワンフレーズのスクリプトを書いてインサートした。もちろん、スタジオにこもって 編集、ミキシングに立ち会い、“完パケ”を作り上げた。今でも実に有意義な仕事だったと思う。

 ブランドメーカーのPVは何より“服の本質”をクローズアップさせることが重要だ。カラー、素材、質感、 カッティング、 ディテール、全体のフォルム、着心地イメージが流れるように伝わらないと、目の肥えたお客には売れない。ファッション音痴のテレビ関係者なんかより、服を熟知したわれわれがディレクションに当たった方がよほど洗練された映像ができ上がり、取引先のショップにも好評だった。こうしたマス媒体によらない販促手段を取るのは、ビギなどの大手ブランドメーカーも同じだった。

 ただ、アパレル業界でプロモーション携わった人間からすれば、10年ほど前からのメディアが関わるファッショイベントはとても販促とは言い難い。安っぽい商品を二流のタレントに着せて、ランウェイを歩かせることが“コレクション”だと勘違いしているのも、目に余る。 
 ショーの演出も度派手な音響と品がない照明でごまかしているだけで、クリエーションの発信力やプロモーションの意図は少しも感じさせない。さらに地方で展開される事業になると、ローカルテレビのプロデューサーが平気で、「リアルクローズだの、NBだの」と抜かす始末。糸へんはもちろん小売り、ましてクリエーションなんて判りもしねえ門外漢が全く寝ぼけた話だ。

 先日もファッションライターの南充浩さんが「使命を終えた東京ガールズコレクション」のタイトルで記されていたが、まさに筆者が指摘していた通りである。http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120914/236812/?P=1
 「神戸コレクションに端を発するリアルクローズファッションイベントも、やや閉塞感が出てきているのも事実である。まず、集客数が飽和点に達している。つまり大きくは伸びておらず、むしろ少し減り気味でさえある。次に、出展ブランドにとって、実際の店頭での売上高増につながっているとは言いにくくなってきたこともある」と。
 さらに「 何より、観客のほとんどは、「タレント」を見に来ているのであって、決して「服」を見に来ているのではないという点が最大の問題である」とも。筆者が神戸コレクションの亜流である福岡アジアコレクション(FACo)(企画制作は大阪毎日放送と系列のRKB毎日放送、イベント協力は双方ともアイグリッツ)について「客寄せ興行」「タレント物見遊山」と評価してきたことと全く同じである。

 ファッションと言ってもカネを稼ぐ以上、商売の鉄則は免れない。マーケットを睨みコツコツと商品開発(調達)とショップ運営を続けて、顧客の支持を得ないと発展しないのである。一時の派手な仕掛けで人気を盛り上げるイベント商法は、やはり続かないということだ。
 ましてローカルテレビが関わるイベント企画なんて、外部の専門会社に丸投げして上前をはねるのが関の山。地元ファッション産業の振興なんかを真剣に考えているはずはない。
 とにかく福岡のメディアはどうもタレント起用がお好きなようだ。福岡市が手がける「かわいい区」も同様の傾向。おまけに無理矢理FACoと絡め中国・大連にまで進出し、イベントを行う始末。期日が反日暴動より数日前だったから事なきを得たが、日本でとっくに使命を終えた客寄せ興行の行きつく先が中国の地方都市ってところに、企画の先細りが垣間見える。

 第一、今度は学芸会を思わせるAKB的興行で、地元ファッション業界が潤うわけでも、福岡市の税収が増えるわけでもない。どうせ利害関係者の思惑が有り有りだろうが、所詮、事業を仕切るローカルテレビとクギを刺せない行政の凡庸な脳ミソではしょうがない。
 企画担当者は事あるごとに、一連の事業をファッション振興のための「手段」だと声高に叫ぶが、一体いつになったらまやかしのデータではなく、真の目的が達成している根拠を示してくれるのだろうか。
コメント
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