HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

パキスタン製レザーが台頭してきた。

2012-11-03 10:11:16 | Weblog
 元来、メンズのレザーは米国代表されるハードなライダースやフライトジャケットが定番だった。今でも、アメカジファンの間では丈夫なカーフレザーで、いろいろ蘊蓄がこかれている。
 しかし、ファッションがよりカジュアル化し、メンズにもレディスのテイストが入ってきた昨今、セレクトショップのファイスを飾るのは、アメリカンレザーでは不釣り合いになった。
 大手NBショップのMDは、レザーについても中国製を採用しているが、2年ほど前からセレクトショップの店頭では、パキスタン製のレザージャケットが増えてきている。 柔らかいラムやシープを使ったもので、仕上がりも中々上質だ。

 パキスタンといえば、それほどアパレルのイメージはない。ただ、古くから製靴産業が盛んで、アッパーの裁断から縫製、靴の組み立てまで一貫して行われてきた。製靴メーカーに革や靴底などの付属品の製造業者も多い。
 大半が家内工業的な零細メーカーだが、ドレスシューズからカジュアルシューズまでこなしており、縫製の技術力もなかなかのもの。布帛のシャツ、デニムジーンズのような大量生産なら、中国アパレルが向くだろうが、レザーのようにそれほどロットが増えないアイテムには、中小メーカーの方が適している。そこに欧州や日本のアパレル企画会社や商社が目をつけたというわけだ。
 写真はフランスのメーカーに発注したシープスキンのレザーのジャケット。毎度の黒では能がないので、限りなく深いモスグリーンを選んでみた。革が柔らかく薄手のため中綿を入れてこしを出し、背中にはキルティング加工を施した。防寒にも十分対応する。

 結果的にユーロラインのライダースに仕上がったので、ヴェスパやトライアンフが似合いそうだ。背中にはアクションプリーツを施したわけではないから、バイクに乗るには少し窮屈だけど、タウンで着るには十分だと思う。
 それにしても、パキスタン製のレザーは良い。袖から背中にかけての切り替え、補強を施したパイピング、虫食いや毛玉の心配がないレザーリブ。革と同色の太い糸を使い、専用ミシンで仕上げた丁寧な縫製etc. デザイン仕様はかなり複雑なのだが、きめ細かく対応してくれた。
 すべてメーカーの注文仕様にも関わらず、完璧に仕上げてくれている。中国メーカーなら仕様書の段階で、嫌な顔をするだろう。NBクラスのロットがないと応じないかもしれない。しかし、パキスタンのメーカーは嫌な顔一つしなかったようだ。
 
 すでに中国アパレルも外注先に使い、無理難題を突きつけていると聞く。あいつらならやりかねない。ただ、彼らと長く付き合っていくには、ヨーロッパのOEMメーカーも、日本のセレクト系メーカーも、フェアトレードな精神で適正な工賃を支払い、ウィンウィンのビジネスをやって行くべきだと思う。
 彼らがわれわれクリエーターの感性を具現化してくれるのだし、クリエーターは何も価格やコストありきではないのだ。末端の消費者も良い商品なら、そこそこの価格になるって意識をもってほしい。同じアジアの中で、途上国が経済発展するのを嫌に思う日本人なんていないだろう。ヨーロッパと日本の中間に位置するパキスタン。一クリエーターとしては今後も大いに期待したい。
コメント
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