ラルフ・ローレン社はこのほど、「ラグビー」事業から撤退すると発表した。ラグビーは2004年にボストンで誕生した同社のスピンオフブランド。ラルフ・ローレンのテイストを生かしながら、若者向けに振った典型的なキャンパスカジュアルだ。
イメージは米国アイビースクールのトラッドファッションで、ヴァン世代、メンズクラブの読者にとって青春そのもの。流行に左右されないアイテムということで、団塊ジュニアにも受け入れられやすかったようだ。
まあ、セレクトショップのビームスは、こうしたアメリカンカジュアルのアイテムを素材やカラーを変えて独自のMDを作り出していった。言わば、ビームスの底流を成すベーシックアイテムと言えるだろう。
ところが、わずか10年もたたないのにブランド事業を閉鎖したのはなぜか。考えられる理由は二つある。一つはこうしたアメカジライクなキャンパスファッションは、デザインが不変でアイテムも出尽くしており、すでにSPAなどの絶好の模倣ターゲットとなっていたということだ。
例えば、鹿の子のポロシャツや裏毛のトレーナー。キャンパスファッションの基本アイテムだが、素材は出来合いのものがあり、デザインも定番だから、同じようなアイテムを作り出すのはいとも簡単である。
ダウンベストやスタジアムジャンパー、パーカー類も同じだろう。パターンは決まっているし、素材さえ手配できれば、韓国はもとより、中国のアパレルでも作れる。完全な偽造コピーではなくても、ロゴマークやラインを変えたものがラグビーの5分の1~10分の1の価格で市場に出回っている。
ラルフ・ローレンが好きな人々なら、ラグビーのブランド価値も理解できるかもしれない。しかし、単なるアメカジテイストで良い層は、高い金を払ってわざわざラグビーを購入するとは思えない。
つまり、いくらラルフ・ローレン社が資金と人材を投資して、ブランドとして育てようとしても、見てくれが同じようなものはすでに多く存在していたということだ。結果的にロゴマークを付けたくらいの付加価値では競争力にはつながらず、一定のマーケットシェアを確保するとまではいかなったのだろう。
同社側はラルフ・ローレンより多少価格を下げれば、ヤングマーケットを攻略できると踏んだのだろうが、それほど今のカジュアルマーケットは甘くなかったってことである。
もっとも、ラルフ・ロレーンファンにとっては、カジュアルでもラルフ・ローレンそのもののデザインを好むのではないだろうか。あまりに定番すぎるラグビーでは物足りなかったのかもしれない。
また、ラルフ・ローレンにはメンズではブラックレーベル、レディスではコレクションラインがある。ブラックラインはアメリカントラディッショナルが源流のラルフ・ローレンにあって、シャープで都会的なテイストをもつファッションだ。シーズントレンドがハッキリ打ち出されているので、モダンなテイストを好む層はこちらを選ぶ。
コレクションラインはメンズのパープルレーベルと同様に素材、縫製のすべてのおいて最高級品で、イタリアで生産されている。こちらはロゴマークなどは一切入っていないし、アイテムはオンタイムからフォーマルがドレス主体になる。これらを好む層は、おそらくラグビーなんか全く眼中にはないだろう。
ラルフ・ローレン社が日本で主力に狙いたいのは、収入が一定レベル以上の富裕層だから、ラグビーは異質なものになったのではないだろうか。それが世界的にも競争力を持てず、ブランドとしてのポジショニングを確立できなかったということになる。
これはドルチェ&ガッバーナが日本市場ではD&Gの販売から手を引いたのと似ている。それだけカジュアルマーケットは価格競争が激しく、ブランドのポジションを確立するのは容易ではないのである。
有名ブランドがディフュージョンラインやバジェットラインを打ち出すのはビジネスとして理解できる。「お金が貯まったら、もっと良いものを買いたい」って思うのは消費者の素朴な願望だし、ブランド企業側のボトムアップ戦略としても当然のことだ。
しかし、バジェットラインは量産が基本だし、アウトレット消化まで計算しなければ収益は上がらない。結果的に並行ものが出回ったり、コピー商品の格好のターゲットになる。ブランド管理は難しく、ポジショニングもあやふやになるリスクをはらむのだ。
ラグビーもポジション設定は行っていたはずであるが、何せ競合が多かっただけに独自のポジションをつかみづらかったということだ。撤退はこうした有名ブランド特有の市場構造にも起因している。 これが2つめの理由だ。
ラルフ・ロレーンは米国では確固としたブランドであるし、世界戦略を進める上でブランドのプレステージ性を保つことが不可欠だ。トップダウンでディフュージョンラインを増やすのビジネス戦略上は必要だろう。
しかし、テイストやデザインを変えずクオリティを下げるだけで、簡単にカジュアル市場を攻略できると考えるのは浅はかというもの。ラグビー事業の撤退はそれを如実に表す結果となった。
イメージは米国アイビースクールのトラッドファッションで、ヴァン世代、メンズクラブの読者にとって青春そのもの。流行に左右されないアイテムということで、団塊ジュニアにも受け入れられやすかったようだ。
まあ、セレクトショップのビームスは、こうしたアメリカンカジュアルのアイテムを素材やカラーを変えて独自のMDを作り出していった。言わば、ビームスの底流を成すベーシックアイテムと言えるだろう。
ところが、わずか10年もたたないのにブランド事業を閉鎖したのはなぜか。考えられる理由は二つある。一つはこうしたアメカジライクなキャンパスファッションは、デザインが不変でアイテムも出尽くしており、すでにSPAなどの絶好の模倣ターゲットとなっていたということだ。
例えば、鹿の子のポロシャツや裏毛のトレーナー。キャンパスファッションの基本アイテムだが、素材は出来合いのものがあり、デザインも定番だから、同じようなアイテムを作り出すのはいとも簡単である。
ダウンベストやスタジアムジャンパー、パーカー類も同じだろう。パターンは決まっているし、素材さえ手配できれば、韓国はもとより、中国のアパレルでも作れる。完全な偽造コピーではなくても、ロゴマークやラインを変えたものがラグビーの5分の1~10分の1の価格で市場に出回っている。
ラルフ・ローレンが好きな人々なら、ラグビーのブランド価値も理解できるかもしれない。しかし、単なるアメカジテイストで良い層は、高い金を払ってわざわざラグビーを購入するとは思えない。
つまり、いくらラルフ・ローレン社が資金と人材を投資して、ブランドとして育てようとしても、見てくれが同じようなものはすでに多く存在していたということだ。結果的にロゴマークを付けたくらいの付加価値では競争力にはつながらず、一定のマーケットシェアを確保するとまではいかなったのだろう。
同社側はラルフ・ローレンより多少価格を下げれば、ヤングマーケットを攻略できると踏んだのだろうが、それほど今のカジュアルマーケットは甘くなかったってことである。
もっとも、ラルフ・ロレーンファンにとっては、カジュアルでもラルフ・ローレンそのもののデザインを好むのではないだろうか。あまりに定番すぎるラグビーでは物足りなかったのかもしれない。
また、ラルフ・ローレンにはメンズではブラックレーベル、レディスではコレクションラインがある。ブラックラインはアメリカントラディッショナルが源流のラルフ・ローレンにあって、シャープで都会的なテイストをもつファッションだ。シーズントレンドがハッキリ打ち出されているので、モダンなテイストを好む層はこちらを選ぶ。
コレクションラインはメンズのパープルレーベルと同様に素材、縫製のすべてのおいて最高級品で、イタリアで生産されている。こちらはロゴマークなどは一切入っていないし、アイテムはオンタイムからフォーマルがドレス主体になる。これらを好む層は、おそらくラグビーなんか全く眼中にはないだろう。
ラルフ・ローレン社が日本で主力に狙いたいのは、収入が一定レベル以上の富裕層だから、ラグビーは異質なものになったのではないだろうか。それが世界的にも競争力を持てず、ブランドとしてのポジショニングを確立できなかったということになる。
これはドルチェ&ガッバーナが日本市場ではD&Gの販売から手を引いたのと似ている。それだけカジュアルマーケットは価格競争が激しく、ブランドのポジションを確立するのは容易ではないのである。
有名ブランドがディフュージョンラインやバジェットラインを打ち出すのはビジネスとして理解できる。「お金が貯まったら、もっと良いものを買いたい」って思うのは消費者の素朴な願望だし、ブランド企業側のボトムアップ戦略としても当然のことだ。
しかし、バジェットラインは量産が基本だし、アウトレット消化まで計算しなければ収益は上がらない。結果的に並行ものが出回ったり、コピー商品の格好のターゲットになる。ブランド管理は難しく、ポジショニングもあやふやになるリスクをはらむのだ。
ラグビーもポジション設定は行っていたはずであるが、何せ競合が多かっただけに独自のポジションをつかみづらかったということだ。撤退はこうした有名ブランド特有の市場構造にも起因している。 これが2つめの理由だ。
ラルフ・ロレーンは米国では確固としたブランドであるし、世界戦略を進める上でブランドのプレステージ性を保つことが不可欠だ。トップダウンでディフュージョンラインを増やすのビジネス戦略上は必要だろう。
しかし、テイストやデザインを変えずクオリティを下げるだけで、簡単にカジュアル市場を攻略できると考えるのは浅はかというもの。ラグビー事業の撤退はそれを如実に表す結果となった。