HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

過度に行政の恩恵を受ける学校もある。

2013-09-05 13:13:45 | Weblog
 先日、「有名専門スクール、パワハラ&強制退職の実態「つなぎ着て掃除しろ」他社へのスパイ行為も」というタイトルで、「株式会社バンタン」の社員が、退職強要で会社を辞めさせられた、と東京地裁に訴えたという記事がビジネスジャーナルに掲載されていた。
http://biz-journal.jp/2013/08/post_2796.html

 要約すれば、このファッション専門学校では裁判に訴えた社員が社長やマネージャーの指示で、他の学校を情報を収集。実態や特徴を調査し自社へ報告するものだった。

 ところが、酷暑の中“スパイ活動”を続けるうちに、この社員は体調不良に陥り、病院で診断された結果、熱中症、胃潰瘍の疑いありとなった。しかし、会社側は配置転換をした挙げ句、パワハラを受け、退職勧告まで受けていたのだ。

 真偽のほどは裁判で明らかになるだろうし、どちらに軍配が上がろうとさして興味はない。当コラムで言及したいのは、「ファッション専門学校」の営業活動に「公共事業」を利用している学校があるということだ。これは税の公平性からみても、追及しなければならない。
 
 ファッション専門学校にとっての営業とは、簡単に言えば、学生を集めることである。それがバンタンのように行き過ぎること、あるいはこれから論じる学校のように公金まで当てにするというのは、全国的にファッション専門学校への入学者が激減しているからである。
 ある学校の理事長に言わせると、「現在、全国のファッション専門学校に通う生徒の総数は1万2,000人ほどで、10数年前の半分に落ち込んでいる」とか。

 だから、とにかく学生を集めるために日頃からの紙媒体やインターネットによる学校案内、夏休みなどのオープンキャンパス、進路決定時期にさしかかるとCMの集中投下、そしてエントリーシートや問い合わせをうけての電話での入学勧誘である。

 それには相当の労力と資金がかかる。必然的にできる専門学校が限られてくる。ファッション業界人を対象としたセミナーを開講している友人が言っていたが、「何も知らない若者を集めるには多額の広告宣伝費をかけざるを得ない。こちらは対象が大人だし、そんな余裕はないからSNSを使うだけ」と言っていた。

 であれば、ファッション専門学校が次に当てにするのは何か。自らコストをかけなくても、気軽に乗っかることができる公共事業はもってこいだ。折しも、教育機関の思いとは裏腹に、若者の中で向学に積極的な者は、偏差値ピラミッドの頂点近くの少数派。でも、産業構造の変化で、実業系の高校を卒業しても以前のように100%就職とは行かなくなっている。

 こうした進路環境が若者を孤立させ、進学も就職も厳しい袋小路に追い込んでいる。ただ、大学や専門学校が到達点ではなく、その先には社会人として働くことが待っている。こうしたどっちつかず若者の状況をいちばん憂いているのが行政だ。働く意欲を持たない若者が増えるのは、そのまま税収の減少につながるからである。

 そのため、福岡市では2012年度から「中高生夢チャレンジ大学」なる公共事業を実施している。パンフレットには、高島宗一郎市長が学長として、「家庭、学校、塾、部活などでは学ぶことのできない体験を通し、感性を磨き、創造力を発掘し、自分の強みや個性を生かした職業を考えるとともに…」と能書きこいているが、要はフリーターやニートを増やさないという施策だ。

 行政サイドの説明によると、偏差値ピラミッドの頂点近くの層は目的意識も強いから、この事業の対象からは除外。むしろ、その下の進学も、就職も考えていない層がメーンになるのだそうだ。つまり、「ファッション専門学校」にとっては、格好のターゲットになるのである。しかも、中学生から行政が公費で集めてくれるのだから、自校は全くコストをかけずに青田買いができるかもしれない。

 2012年度の報告書、2013年度のリーフレットを見ると、ファッション専門学校では「大村美容ファッション専門学校」が参画している。このコラムで何度も取り上げている福岡アジアファッション拠点推進会議の企画運営委員長が「ファッション部長」というダサい役職名を務める専門学校である。

 一つの公共事業だけでは飽き足らず、この中高生夢チャレンジ大学でも、学生集めに利用しようとしているようだ。その営業活動、商魂たるや全く恐れ入る。ただ、一つ問題がある。なぜ、このファッション専門学校がこの事業に参画することが出来たかである。

 「何か、福岡市とかなりの利害のある学校が参画しているような気がしますが」と質問してみると、主催者サイドは「そんなことはない。学校の選定は間に入るコーディネーターに任せてある」「偏差値ピラミッドの頂点より下の層が対象でも、実際にチャレンジ大学に参加するのは、その層の600分の1」との答えだった。

 つまり、「ファッション専門学校にとって利害になるまでにはいかない」というニュアンスなのだろう。でも、コーディネーターという職業ほど、胡散臭いものはない。それらと学校がグルになれば何でも自由にできる。現に福岡市にはファッション専門学校は何校もあるのだから、2年連続で同じ学校というのは「何かあるのでは」と言われてもしかたないだろう。

 また、600分の1と言っても、もしその子を中学校から洗脳できれば、入学者にできる可能性は高い。それがたとえ1人であっても200万円程度の学納金が確保できると計算する。入学者が激減しているファッション専門学校にとってそう考えない方が希だし、まして商魂逞しいファッション専門学校なら当然のことだろう。

 もっとも、高島宗一郎+福岡アジアファッション拠点推進会議+企画運営委員長という蜜月は、地元ファッション業界の多くが知るところ。その裏側にあるものは、ミーハー+政策レス+事業失敗+無責任=自己利益という構図で一致する。

 もうおわかりだろう。ご想像の通りである。当コラムを読んでいただいているインテリジェンスの諸兄には、これ以上の多弁は必要ないと思う。
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