HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

ファッション雑貨は単品か、コーディネートパーツか。

2013-09-25 17:57:01 | Weblog
 アパレルビジネス、いわゆる衣服の製造販売はすでに頭打ちだ。デベロッパーは器の新設でテナントリーシングに腐心し、既存の商店街や施設は空き店舗対策に四苦八苦。こうした中、とみにクローズアップされているのが「ファッション雑貨」である。従来は服を引き立てる脇役的な存在だったが、ここに来てメーンの商材にする業態が次々と生まれている。

 一口にファッション雑貨と言っても、実に幅広い。地金や石、布のアクセサリーからヘア&イア、巻物、革小物まで、服以外の小物も雑貨と言えば雑貨である。百貨店ではハンカチやストール、帽子や手袋、ネクタイなどの服飾小物は雑貨と呼ばず、洋品というカテゴリーで括られている。でも、量販チェーンではこちらも雑貨のジャンルに入っている。

 企画生産の手法も100%国産オリジナルから、ブランドのライセンス、サブライセンス、チープな海外量産品までと、実に多種多彩。老舗メーカー・ムーンバットのように企画力で勝負するところは、素材を吟味しデザインを練り上げたマントやポンチョまで作りあげている。一方、ヤング系のチェーンやSPA化するセレクトは、商社や企画会社に生産を委託しているので、素資材の調達がカギを握っている。

 ファッション雑貨が脚光を浴び始めたのは、10年ほど前からだろうか。業態開発力をもつ小売業が開発輸入とオリジナルでまとめ、3プライスなどの仕掛けを加えて一気に多店舗化していった。また、100円ショップといった生活雑貨店が少しずつファッション分野に触手を伸ばしたことが刺激となり、ファッション業界が仕掛ける雑貨がビジネスの表舞台に立つようになっていったのである。

 ファッション雑貨は古くはワイズフォーリビングやクロワッサンの店がアンアン世代の御用達だった。無印良品は西友のPBから派生してMDを拡大し、FOB COOPはグローバルな感性でアーリー層を開拓した。ヤングではパルグループのラティスがすでに22店舗にまでに成長し、ポイントのミィパーセントもポップでエッジの利いたアクセで多店舗化を狙う。

 タイムレスコンフォートやダブルデイはインテリアがメーンだが、そのセンスで一部のファッション雑貨にも切り込む。イオン系コックスのチキュートLBCは、SCを中心に店舗を拡大。小売りでは、昨年開業した渋谷ヒカリエが5階を雑貨フロアに仕立てたし、そこにリーシングされた「オクタホテル」はもともと福岡で誕生。他にも「アトリエ・ブルージュ」は卸と直営の2本立てで、全国展開を視野に入れている。

 ただ、業態によって取り扱われるアイテムは様々で、荒利益の確保を狙ってデイリーウエアまで取り扱うところも少なくない。どれがファッション雑貨店の標準型にふさわしく、どこまでのMDが効率がいいのか。各社とも熟慮に熟慮を重ねているようで、まさにファッション雑貨の業態は玉石混淆といった様相である。

 さらに昨年くらいからファッショングッズの売上げ回復が鮮明になってきたこともあり、アパレルメーカーやSPAも続々と開発に力を入れている。レディスアパレルのアスプリは、雑貨セレクト「リーフリーフ・クヌッフェル」の出店を加速。クロスプラスも製造卸部門では「雑貨を強化する」と表明した。ライセンス管理会社のビリーフは、マウジーと雑貨のマスターライセンス契約を結び、サブライセンシーを結ぶ各専業メーカーの力を借りてバッグや財布、帽子など販売に乗り出した。

 遊心クリエイションは、今年3月に地元大阪に「アソコ」をオープンしたが、美術館のような展示とスタイリッシュな空間が奏功し、売り切れ続出の人気ぶりだ。メソッドを展開するシーズメンは、女性をターゲットにした和柄雑貨の販売をスタート。百貨店の松屋は同社が編集した「ミエルプラス」を東京駅や銀座インズ内に出店。このほどクロスカンパニーが「セブンデイズサンデイ」で、アメカジテイストのオリジナル雑貨の販売に参入した。

 ざっと見ただけでこれだけの企業がファッション雑貨の販売に乗り出していて、こうした動きは当分続くと思われる。背景にはウエア市場が飽和状態で、企画がマンネリ化していることもあるだろう。そこでアパレルや小売り各社は、専業メーカーの独壇場だったにウエア製造やセレクトのノウハウで切り込めば活路はあると踏んだようだ。

 ただ、雑貨はウエアに比べ単価も低いし、荒利益も薄い。既存店を数多く抱えるSPAなら収益を上げられる可能性は高いが、仕入れのノウハウしかない小売業がやっていくのは、厳しいと言わざるを得ない。渋谷ヒカリエも百貨店流の場所貸し、委託販売だから成り立つわけで、テナントではSPA化して利益率を高めないとペイしないと思われる。

 バブル時代、東京・御徒町で商売をするジュエリー問屋の部長がこんなことを言っていた。「好景気を背景にアパレルメーカーがオリジナルジュエリーの販売に参入するようだ。洋服の企画生産のノウハウを生かし、自社の服に合うジュエリーをデザインするという。でも、我々宝飾業界がジュエリーが引き立つ洋服をデザインするなんて、まず無理だ」と。

 じっとしていても宝飾品が売れていた時代。先を見通す経営者はちゃんと自らの業界の課題を察知していると、ずいぶん感心した。商品単体で存在感をもつジュエリーでさえ、ファッションとは切っても切れないと考える人がいるのである。ならば、チープなファッション雑貨ほどウエア全体を見通せるアパレルの方が、単体メーカーより一歩リードするのかもしれない。やはり売れるには服との着こなしやコーディネートを考えた企画がカギになるからだ。

 少なくとも、市販の布や革を使ったヘアアクセやネックレス、ブレスレットなど、カルチャー教室の延長線上のようなファッション雑貨がどこまで競争力をもち、ビジネス商材として通用するのかは、懐疑的である。雑貨のデザイナーやクリエーターを自称する諸氏は、アパレルファッション全体のトレンドをつかみ、それに沿った企画力やデザイン性、完成度で臨まないと、激戦のファッション雑貨マーケットで生き残るのは難しいと思われる。
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