制作データや書籍、資料の増加に伴い、事務所のインテリアもキャパが大きくなっている。当初は家具店で購入したシェルフを使っていたが、強度がイマイチで重たいデザイン関連の書籍には耐えきれず、半年程度で底板が抜けた。
そこで、HCで「ウォールシェルフ」用の板を購入。高さ90cm、横幅180cmで、縦横各2段のブックシェルフをDIYで制作した。デザインはいたってシンプルにし、縦、横の板を組んでビス留めする構造とした。また、横板が本や資料の重さに耐えられるように、棚たぼ式ではなく、縦横の中板をカギ状に組んで補強した。
その後、時間の経過とともに本や書籍、資料、保存データのCDやDVDが増えたため、シェルフも縦スペースを利用するものに作り替えた。2005年には福岡西方沖地震が発生し、当事務所も被災。そこで、新たなシェルフは地震の揺れをうまく吸収させて、収納口からものがこぼれ出ないように奥行きの長さを変え、縦板をアーチ型にした。
家具の街、大川のメーカーに材料を供給する会社で木材を調達。illustratorで描いた図面に添って板をコンピュータカットしてもらい、縦180cm、横90cmの4段で収納口8のものを2つと、縦横180cmで同16つのものを1つを制作した。こちらも強度を優先し縦横の板はカギ状に組んだ。色は埃が目立たないように以前の黒から白に変え、自分でペンキを塗った。
ただ、この形では、収納口はそれぞれ縦横約42cm程度になる。大型本やA3ファイルは楽に収まるが、小さな本やA4ファイルを入れると、上部がどうしてもデッドスペースになる。そこで上げ底にする台を追加で作り、空きスペースには小物を収納して使っている。
数年前には、データファイル専用の小型シェルフも作ったが、これ以上書籍や資料を置く余裕はない。そこで読み終えた単行本はブックオフに買い取ってもらい、制作物や写真のデータはブルーレイに焼き直して枚数を減らした。新聞や雑誌の切り抜きは紙のまま残したいものを除き、スキャナーで読んでデジタル化、HDDに保存して項目別にデータベース化した。
筆者は断捨離という言葉は音感的にあまり好きじゃない。だから、あえて実践しようという意識はないが、この先それほど長く仕事をすることもないので、持ち物はなるべくセーブしておきたい。特に生活スペースが限られる都会暮らしでは、それが鉄則だ。
小型シェルフが用無しとなったが、いくら自然に還せる木材といっても、回収してもらうとゴミ扱いになる。豪雨災害で浸水した家具類ではないので、回収袋に入らない板切れは粗大ゴミになって有料になる。そこで、こちらも服と同じように再生&リメイクを考えた。事務所にはこれ以上スペースがないので、自宅用の棚に作り替えるものだ。板材を再利用できるように
ボンドを使わず、ビス留めにしていたので 容易にバラせる。
緊急事態宣言下にある福岡県のコロナ感染者数は九州で突出している。ワクチン接種が完了するまで、なるべく人との接触を避けリモートワーク主体にせざるを得ない。その分、空いた時間をDIYに割けるので、願ったりだ。
サイズが違う板材を有効活用するシェルフデザイン
小型シェルフはそのまま使えるが、せっかくならリ・デザインして新しいものにしたい。インテリアとしてファッション性を打ち出しながら、機能性と堅牢度も両立させる。もちろん、棚板は全て再利用して、新たなに購入する材料は少なくしないと、再生&リメイクの意味はなくなる。非常に難しいコンセプトだ。
そこで今回もillustratorで、設計図とカット手順の図面を作成した。形状は以下になる。1.長さを必要とする縦板は無くし、既存の板を全て再利用する。2.同じ幅の横板と短い縦板を積み重ねて、足りない縦板部分は太めの棒を組み合わせる。3.縦板の横幅が足りない部分は2つの板をタッカーで統合して利用する。
組み立ては、まず縦方向の重みには耐えられるように、横板上に縦板を組む。また、横方向にかかる力や地震の揺れによる歪みを抑えるため、背板にベニアを張って補強することにした。それでも弱いと感じたら、目立たない箇所を端材で補強すればいい。新規に購入したのは、100cmのバンキライデッキ材1本と、ベニヤ板1枚。
リ・デザインするシェルフは本のサイズと棚の安定性を考えて、収納口は下から高さ40cmを1段、同33cm3段、同30cm1段の計5段とした。これで横板を合わせても、高さ180cm内に収まる。埃除けの台座には端材を敷けばいい。問題は材料のカットをどうするかだった。
小型シェルフの板材は「シナランバーコア」で、福岡市郊外の大型HCで購入し、カットしてもらったものだ。そこで、リメイクの設計図面に「〇〇購入の板材を再利用したシェルフ」というタイトルを付け、サービスカウンターで「代金は支払いますから、再カットしていただけないでしょうか」と、交渉し快諾を得た。「SNSやinstagramでも情報発信しますから」との条件が効いたようだ。
詳細な図面を描いたのは、もう一つの理由がある。横板の幅と縦板、棒の高さはそれぞれ同じにしないと直角に組み上がらず歪になってしまう。また、HCのカッターマシンは刃が3mm程度の幅があるため、カット寸法をジャストサイズに設定すると、1.5mm程度短くなってしまう。
スタッフはその分を計算にいれてカットする人と、指定サイズのままカットする人がいる。同日に作業せず、別々のスタッフにカットしてもらうと、組み立て時に微妙なサイズ違いに気づくこともある。だから、同じサイズは重ねて同時にカットしてもらった方が効率がいいし、寸法も狂わない。あとは微調整とペンキ仕上げをして組み上げるだけ。何とか、捨てずに済んだ。
DIYブームを梃子に家具市場の活性化を
筆者は過去に何度か家具メーカーやインテリアショップの仕事をした。80年代までは進学や就職、婚礼などが家具需要が盛り上がるのポイントだった。バブル期には高級家具が売れ始め、イタリアのカッシーナや北欧家具が日本上陸を果たした。しかし、家具は一生ものという意味合いもあり、高めの価格帯が売れると買い替えは進まなかった。
バブル崩壊後は価格破壊の波が訪れ、仕入れ主体の小さな家具店は軒並み倒産した。また、ライフスタイルの変化で売れ筋は一人暮らし用のソファやベッドが主力になり、婚礼は高級家具が売れる契機とは言えなくなった。ここ数年はニトリの台頭と大塚家具の凋落。そして、現在はコロナ禍によるDIYブームの再来だ。
You-Tubeを見ると、世界中のDIYフリークが手作りの家具やインテリアを紹介している。中には本格的なものも多く、工具を揃えないと作るのが難しいものもある。ただ、大型HCには工作室があって工具が揃っているので、材料さえ購入すれば、利用可能だ。
せっかくDIYのブームが来ているのだから、HCも一歩進んで手作りインテリアの講習会などを開催してはどうか。さらに図面準備を条件にカーブやカギのカット、溝ほりなどのニーズに対応してくれれば、なおさらいい。もちろん、工具さえ貸し出してくれれば、セルフでも構わないが、初心者向けの指導も必要だ。
家具の街、福岡・大川も産地の家具が売れないと嘆く前に、手作りインテリアの良さを再発見するような仕掛けを考えてもいいような気がする。一方、ニトリは島忠の買収を達成し、規模ばかりを拡大しているが、HCの質をあげるつもりはあるのだろうか。その一つがDIYニーズの掘り起こしではないかと思う。
日本は毎年のように災害が発生しているので、もう生涯利用する家具が売れる土壌はないと思う。それが大塚家具の凋落、ニトリの台頭を生んでいる。だからと言って、何もしなければ、市場は活性化しない。ブームをニーズに変えていくところはどこか。シェルフのリメイクをしながら、ふとそんなことも考えた。
そこで、HCで「ウォールシェルフ」用の板を購入。高さ90cm、横幅180cmで、縦横各2段のブックシェルフをDIYで制作した。デザインはいたってシンプルにし、縦、横の板を組んでビス留めする構造とした。また、横板が本や資料の重さに耐えられるように、棚たぼ式ではなく、縦横の中板をカギ状に組んで補強した。
その後、時間の経過とともに本や書籍、資料、保存データのCDやDVDが増えたため、シェルフも縦スペースを利用するものに作り替えた。2005年には福岡西方沖地震が発生し、当事務所も被災。そこで、新たなシェルフは地震の揺れをうまく吸収させて、収納口からものがこぼれ出ないように奥行きの長さを変え、縦板をアーチ型にした。
家具の街、大川のメーカーに材料を供給する会社で木材を調達。illustratorで描いた図面に添って板をコンピュータカットしてもらい、縦180cm、横90cmの4段で収納口8のものを2つと、縦横180cmで同16つのものを1つを制作した。こちらも強度を優先し縦横の板はカギ状に組んだ。色は埃が目立たないように以前の黒から白に変え、自分でペンキを塗った。
ただ、この形では、収納口はそれぞれ縦横約42cm程度になる。大型本やA3ファイルは楽に収まるが、小さな本やA4ファイルを入れると、上部がどうしてもデッドスペースになる。そこで上げ底にする台を追加で作り、空きスペースには小物を収納して使っている。
数年前には、データファイル専用の小型シェルフも作ったが、これ以上書籍や資料を置く余裕はない。そこで読み終えた単行本はブックオフに買い取ってもらい、制作物や写真のデータはブルーレイに焼き直して枚数を減らした。新聞や雑誌の切り抜きは紙のまま残したいものを除き、スキャナーで読んでデジタル化、HDDに保存して項目別にデータベース化した。
筆者は断捨離という言葉は音感的にあまり好きじゃない。だから、あえて実践しようという意識はないが、この先それほど長く仕事をすることもないので、持ち物はなるべくセーブしておきたい。特に生活スペースが限られる都会暮らしでは、それが鉄則だ。
小型シェルフが用無しとなったが、いくら自然に還せる木材といっても、回収してもらうとゴミ扱いになる。豪雨災害で浸水した家具類ではないので、回収袋に入らない板切れは粗大ゴミになって有料になる。そこで、こちらも服と同じように再生&リメイクを考えた。事務所にはこれ以上スペースがないので、自宅用の棚に作り替えるものだ。板材を再利用できるように
ボンドを使わず、ビス留めにしていたので 容易にバラせる。
緊急事態宣言下にある福岡県のコロナ感染者数は九州で突出している。ワクチン接種が完了するまで、なるべく人との接触を避けリモートワーク主体にせざるを得ない。その分、空いた時間をDIYに割けるので、願ったりだ。
サイズが違う板材を有効活用するシェルフデザイン
小型シェルフはそのまま使えるが、せっかくならリ・デザインして新しいものにしたい。インテリアとしてファッション性を打ち出しながら、機能性と堅牢度も両立させる。もちろん、棚板は全て再利用して、新たなに購入する材料は少なくしないと、再生&リメイクの意味はなくなる。非常に難しいコンセプトだ。
そこで今回もillustratorで、設計図とカット手順の図面を作成した。形状は以下になる。1.長さを必要とする縦板は無くし、既存の板を全て再利用する。2.同じ幅の横板と短い縦板を積み重ねて、足りない縦板部分は太めの棒を組み合わせる。3.縦板の横幅が足りない部分は2つの板をタッカーで統合して利用する。
組み立ては、まず縦方向の重みには耐えられるように、横板上に縦板を組む。また、横方向にかかる力や地震の揺れによる歪みを抑えるため、背板にベニアを張って補強することにした。それでも弱いと感じたら、目立たない箇所を端材で補強すればいい。新規に購入したのは、100cmのバンキライデッキ材1本と、ベニヤ板1枚。
リ・デザインするシェルフは本のサイズと棚の安定性を考えて、収納口は下から高さ40cmを1段、同33cm3段、同30cm1段の計5段とした。これで横板を合わせても、高さ180cm内に収まる。埃除けの台座には端材を敷けばいい。問題は材料のカットをどうするかだった。
小型シェルフの板材は「シナランバーコア」で、福岡市郊外の大型HCで購入し、カットしてもらったものだ。そこで、リメイクの設計図面に「〇〇購入の板材を再利用したシェルフ」というタイトルを付け、サービスカウンターで「代金は支払いますから、再カットしていただけないでしょうか」と、交渉し快諾を得た。「SNSやinstagramでも情報発信しますから」との条件が効いたようだ。
詳細な図面を描いたのは、もう一つの理由がある。横板の幅と縦板、棒の高さはそれぞれ同じにしないと直角に組み上がらず歪になってしまう。また、HCのカッターマシンは刃が3mm程度の幅があるため、カット寸法をジャストサイズに設定すると、1.5mm程度短くなってしまう。
スタッフはその分を計算にいれてカットする人と、指定サイズのままカットする人がいる。同日に作業せず、別々のスタッフにカットしてもらうと、組み立て時に微妙なサイズ違いに気づくこともある。だから、同じサイズは重ねて同時にカットしてもらった方が効率がいいし、寸法も狂わない。あとは微調整とペンキ仕上げをして組み上げるだけ。何とか、捨てずに済んだ。
DIYブームを梃子に家具市場の活性化を
筆者は過去に何度か家具メーカーやインテリアショップの仕事をした。80年代までは進学や就職、婚礼などが家具需要が盛り上がるのポイントだった。バブル期には高級家具が売れ始め、イタリアのカッシーナや北欧家具が日本上陸を果たした。しかし、家具は一生ものという意味合いもあり、高めの価格帯が売れると買い替えは進まなかった。
バブル崩壊後は価格破壊の波が訪れ、仕入れ主体の小さな家具店は軒並み倒産した。また、ライフスタイルの変化で売れ筋は一人暮らし用のソファやベッドが主力になり、婚礼は高級家具が売れる契機とは言えなくなった。ここ数年はニトリの台頭と大塚家具の凋落。そして、現在はコロナ禍によるDIYブームの再来だ。
You-Tubeを見ると、世界中のDIYフリークが手作りの家具やインテリアを紹介している。中には本格的なものも多く、工具を揃えないと作るのが難しいものもある。ただ、大型HCには工作室があって工具が揃っているので、材料さえ購入すれば、利用可能だ。
せっかくDIYのブームが来ているのだから、HCも一歩進んで手作りインテリアの講習会などを開催してはどうか。さらに図面準備を条件にカーブやカギのカット、溝ほりなどのニーズに対応してくれれば、なおさらいい。もちろん、工具さえ貸し出してくれれば、セルフでも構わないが、初心者向けの指導も必要だ。
家具の街、福岡・大川も産地の家具が売れないと嘆く前に、手作りインテリアの良さを再発見するような仕掛けを考えてもいいような気がする。一方、ニトリは島忠の買収を達成し、規模ばかりを拡大しているが、HCの質をあげるつもりはあるのだろうか。その一つがDIYニーズの掘り起こしではないかと思う。
日本は毎年のように災害が発生しているので、もう生涯利用する家具が売れる土壌はないと思う。それが大塚家具の凋落、ニトリの台頭を生んでいる。だからと言って、何もしなければ、市場は活性化しない。ブームをニーズに変えていくところはどこか。シェルフのリメイクをしながら、ふとそんなことも考えた。