JR博多シティの開業は、天神の百貨店、ファッションビルにも大きな打撃を与えた。しかし、それ以前から苦戦が続き、今回の影響でダブルパンチを見舞われたのが、「VIORO」だ。
博多シティ対策については、同館も昨年から岩田屋三越が音頭をとったポイント連携に参加。ところが、そんなもので抜本的な対策にはなり得るはずもなく、苦戦はさらに鮮明となっている。
策の無さ、手詰まり感はプロモーションにも見られる。同館は9月に入り、5th Anniversaryを冠にした秋商戦第一弾として販促チラシ(タブロイド版8P)を打った。メーンターゲットである25歳から35歳の働く女性向けに、ワンルームマンションなどへのポスティングと、女性アルバイトによるきらめき通り周辺での手配りだ。
しかし、掲載された商品は、どれも今秋のトレンドを感じさせるようなアイテムではなく、デザインやカラリングも地味。テナントがセレクトショップ中心ということもあるだろうが、それでもとてもパッと見てお客を買う気にさせるとは思えない。しかも、タブロイド版のわりに商品編集が雑で、単なる置撮り写真の羅列に甘んじ、ページ数の割に情報量が少なすぎる。
企画制作はおそらく出入りの代理店か印刷会社が主導し、デベロッパーの販促担当者経由で各ショップに依頼して「秋物のイチ押し商品で在庫が確保できるもの」を揃えたと思われる。
しかし、でき上がったものは、ファッション性も情報発信力もないツールに堕ちてしまった。これではとても販促効果は上がらないだろう。
原因はいったいどこにあるのか。それはデベロッパー、出入り業者、下請け会社の三社ともにあるようだ。デベロッパーの東京建物グループは、ファッションデベロッパーではない。そのため、ファッション業態をインキュベートするノウハウや企画力が乏しい。
それを証明する事例として、かつての店長会議で堂々と「レディスだけでは売上げが厳しいから、5階をメンズフロアにしたい」と宣ったという。メンズのブランドメーカーやテナントからすれば、「バッティング」の問題があって、そんなことが簡単にできるはずがないのに。会議に参加したあるショップの代表は「正直、呆れた」と、語っていた。
出入り業者も所詮、クライアントとのアカウント確保が狙いで、売上げがつけばそれでいいのだ。とても天神のファッションウォーズの状況など理解できているはずもない。チラシや他の媒体を支配して、適当に販促企画を提出し、通しているに過ぎない。
出入りの代理店は同館のオープン前にティザー戦略を打ち出し、ビルボードに巨大なQRコードを掲載したり、飲食業態のADコースター、Webサイトによるテナント予告やアーチストブログなどを行なった。しかし、それはマスターベーション的企画に安住したもので、各ショップの売上げ効果につながらなかったのは、同館の苦戦が如実に示す。
こうした出入り業者からルーチンで仕事をもらう下請けの制作会社も今回、図らずもファッションに対するディレクション能力の無さを露呈した。おそらくチラシ制作のフローは、出入り業者の担当者と打ち合わせ、方向性を決めてカンプを制作。それをデベロッパーに見せて内容を詰め、前出のように各ショップから商品を提出してもらった形だろう。
ただ、ここでファッションを少しでも理解していたなら、「商品にトレンドがないから、デザインや色にメリハリがない」と担当者に注文できたはず。結果からみれば、ビジュアル的にもインパクトがないのだから、ファッション以前の問題もあるが。
もっとも、メーンビジュアルに利用したフラワーアレンジの髪飾りを施したモデル写真や、シーリング(蝋封)のアニバーサリーマークは、明らかに他社の二番煎じ。写真は2002年に雑誌「エレガント ブライド」の表紙で、ディレクターのデボラ・モス&ダニエル・チェンのコンビが採用した手法であり、シーリングもメーフィス&ファン・デュールセンによる「ヴィクター&ロルフ」のアイコンで、あまりに有名な処理。ファッションに敏感な消費者なら、すぐに見透かしてしまう。
これらにストックフォトの額縁素材を利用して、体裁を整えた程度のビジュアル表現で、館の独自性が高まると考えたとすれば、グラフィックデザイナーのクリエイティブセンスが計り知れる。それ以上に、このようなおざなりの販促戦略では、激烈な天神のファッションウォーズを勝ち抜けるはずがない。あまりに地元ファッション業界をバカにした話しだ。
デベロッパーは館の売上げが伸びなければ、すぐにテナント入れ替えの話しを口にする。しかし、無策な販促戦略や見え透いたクリエイティブワークの点でも、見直す部分は多々ありそうである。
博多シティ対策については、同館も昨年から岩田屋三越が音頭をとったポイント連携に参加。ところが、そんなもので抜本的な対策にはなり得るはずもなく、苦戦はさらに鮮明となっている。
策の無さ、手詰まり感はプロモーションにも見られる。同館は9月に入り、5th Anniversaryを冠にした秋商戦第一弾として販促チラシ(タブロイド版8P)を打った。メーンターゲットである25歳から35歳の働く女性向けに、ワンルームマンションなどへのポスティングと、女性アルバイトによるきらめき通り周辺での手配りだ。
しかし、掲載された商品は、どれも今秋のトレンドを感じさせるようなアイテムではなく、デザインやカラリングも地味。テナントがセレクトショップ中心ということもあるだろうが、それでもとてもパッと見てお客を買う気にさせるとは思えない。しかも、タブロイド版のわりに商品編集が雑で、単なる置撮り写真の羅列に甘んじ、ページ数の割に情報量が少なすぎる。
企画制作はおそらく出入りの代理店か印刷会社が主導し、デベロッパーの販促担当者経由で各ショップに依頼して「秋物のイチ押し商品で在庫が確保できるもの」を揃えたと思われる。
しかし、でき上がったものは、ファッション性も情報発信力もないツールに堕ちてしまった。これではとても販促効果は上がらないだろう。
原因はいったいどこにあるのか。それはデベロッパー、出入り業者、下請け会社の三社ともにあるようだ。デベロッパーの東京建物グループは、ファッションデベロッパーではない。そのため、ファッション業態をインキュベートするノウハウや企画力が乏しい。
それを証明する事例として、かつての店長会議で堂々と「レディスだけでは売上げが厳しいから、5階をメンズフロアにしたい」と宣ったという。メンズのブランドメーカーやテナントからすれば、「バッティング」の問題があって、そんなことが簡単にできるはずがないのに。会議に参加したあるショップの代表は「正直、呆れた」と、語っていた。
出入り業者も所詮、クライアントとのアカウント確保が狙いで、売上げがつけばそれでいいのだ。とても天神のファッションウォーズの状況など理解できているはずもない。チラシや他の媒体を支配して、適当に販促企画を提出し、通しているに過ぎない。
出入りの代理店は同館のオープン前にティザー戦略を打ち出し、ビルボードに巨大なQRコードを掲載したり、飲食業態のADコースター、Webサイトによるテナント予告やアーチストブログなどを行なった。しかし、それはマスターベーション的企画に安住したもので、各ショップの売上げ効果につながらなかったのは、同館の苦戦が如実に示す。
こうした出入り業者からルーチンで仕事をもらう下請けの制作会社も今回、図らずもファッションに対するディレクション能力の無さを露呈した。おそらくチラシ制作のフローは、出入り業者の担当者と打ち合わせ、方向性を決めてカンプを制作。それをデベロッパーに見せて内容を詰め、前出のように各ショップから商品を提出してもらった形だろう。
ただ、ここでファッションを少しでも理解していたなら、「商品にトレンドがないから、デザインや色にメリハリがない」と担当者に注文できたはず。結果からみれば、ビジュアル的にもインパクトがないのだから、ファッション以前の問題もあるが。
もっとも、メーンビジュアルに利用したフラワーアレンジの髪飾りを施したモデル写真や、シーリング(蝋封)のアニバーサリーマークは、明らかに他社の二番煎じ。写真は2002年に雑誌「エレガント ブライド」の表紙で、ディレクターのデボラ・モス&ダニエル・チェンのコンビが採用した手法であり、シーリングもメーフィス&ファン・デュールセンによる「ヴィクター&ロルフ」のアイコンで、あまりに有名な処理。ファッションに敏感な消費者なら、すぐに見透かしてしまう。
これらにストックフォトの額縁素材を利用して、体裁を整えた程度のビジュアル表現で、館の独自性が高まると考えたとすれば、グラフィックデザイナーのクリエイティブセンスが計り知れる。それ以上に、このようなおざなりの販促戦略では、激烈な天神のファッションウォーズを勝ち抜けるはずがない。あまりに地元ファッション業界をバカにした話しだ。
デベロッパーは館の売上げが伸びなければ、すぐにテナント入れ替えの話しを口にする。しかし、無策な販促戦略や見え透いたクリエイティブワークの点でも、見直す部分は多々ありそうである。