HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

デザイナーと学歴。

2008-07-07 11:42:43 | Weblog
 さる5月17日、デザイナーの松田光弘氏が亡くなった。松田氏といえば、ブランド「ニコル」を
創出したことで有名だ。DCブランド世代の私もデザインは好きで、千鳥格子のソフトジャケット
やレザーウエアを着ていたことがある。
 パリの伊達男を彷彿させるようなジャケットやパンツ。一見、誰でも着られそうなブランドだけ
ど、試着してみると着る人間を選ぶ服。そんなデザイナーとしての思想が好きだった。
 でも、才能はビジネスの面でも発揮されたように思う。見せる服と着れる服と売れる服とのバラ
ンスがうまく、「マダムニコル」や「ゼルダ」などスピンオフのブランド戦略もうまい具合に結果
を出した。本来両立しないデザインとビジネスを匠に組み合わせた一人で、マーケティングという
言葉が聞き慣れない時代に、それをいち早く実践した経営者でもある。
 松田氏は早稲田大学を卒業して、文化服装学院に入学。在学中に装苑賞を2度も受賞している。
受験勉強をしても簡単に入れない大学と、多くの課題をこなし認められなければ卒業できない学校。
2つの才能があったからこそ、TD6の旗揚げや多ブランド化にも成功したと言える。
 翻ってデザイナーを目指す多くの若者は、まず専門学校に入学する。そして口々に「大学に行っ
ても学ぶことはなく時間がもったいない」みたいなことを言う。また、ファッションデザインに
必要なクリエイティビティは感性の産物で、それは若さによってもたらされると信じて疑わない。
 はたしてそうだろうか。そもそもクリエイティビティは経験の積み重ねの中で発揮されるもので
あって、最初から備わっているわけではない。当然、それを生み出す感性も日頃の地道な努力によ
って磨かれるのだ。英単語をコツコツ憶えて長文を理解したり、数々の数式を頭に入れながら閃き
で、一つの答えを解き明かす受験勉強にも似ている。
 デザイナーとしてクリエイティビティを発揮するには、若さに関係なく高度な能力が必要なのだ。
それはいかに若いうちに頭を鍛えているかということになる。思えばコムデ・ギャルソンの川久保
玲も、ヨウジヤマモトの山本耀司も慶応義塾大学卒。60歳を過ぎて衰えることのないクリエイティ
ブ力は、大学受験の過程で培われたというのも、あながち否定できないのではないか。
 形ばかり追いかけ知識も理論も乏しい若手や、目先の解答にしか目がいかない業界人が多い中、
松田氏が残した足跡には「デザイナーこそ、高学歴であるべし」との答えがにじむような気がする。
合掌。
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